【番記者コラム】「琉球=超攻撃」のブランドを作り上げた“琉球のノイアー”と名伯楽の絆

【番記者コラム】「琉球=超攻撃」のブランドを作り上げた“琉球のノイアー”と名伯楽の絆

18年シーズン、GKの朴らを擁しJ3を初制覇。クラブ初のJ2昇格を決めた。(C)J.LEAGUE PHOTOS



 2018年シーズン。2位・鹿児島との勝点差9ポイントの66。総得点はリーグ最多70で、1試合平均2.2得点と他を圧倒する強さを見せ、J3初優勝とJ2初昇格を果たしたFC琉球。その確立された攻撃スタイルは、金鍾成監督(現・鹿児島監督)の3年間の集大成として実を結んだ。

『3−1で勝つサッカー』を明確に打ち出し、J2昇格を目標にスタートラインに立った2016年シーズン。当時琉球に就任したばかりの金監督は未来を切り開く第一歩として愛弟子であるGK朴一圭に連絡を入れた。

 朴は藤枝MYFCでプロ生活をスタートさせ、現在は横浜F・マリノスでプレー。昨季のJ1優勝、そして優秀選手賞にも輝いた。そんなGKは東京朝鮮高の3年間、金監督の師事を仰ぎ、進学した朝鮮大学校でも師弟コンビを築き上げていった。ちょうどその頃に、朴の現在のプレースタイルは確立されたという。
 
「GKは守りだけに専念すればいいって言われながらも正直『なんで?』って思っていました。エリアを飛び出してバックパスを受けてビルドアップする。リスキーかもしれないけれどもそういうGKがいてもいい。そういう世間との葛藤の中でプレーしていた時にノイアーのようなスタイルの選手が目立って認められるようになってからジョンソン(鍾成)さんから『パギ(朴一圭)、お前みたいな選手が出てきてよかったな』って言われ、ふたりで笑っていました」と、朴は琉球に所属していた当時、回顧していた。無論、金監督もその挑戦を一切否定しなかった。

 朴のスタイルでは、GKらしからぬ足もとの技術や高いポジショニングがよくピックアップされるが、守備範囲の広さ、シュートストップにおいて高水準の技術を備えているからこそ冒険的なプレーが披露できる。藤枝に所属していた時も大石篤人監督に「その個性は大切だから続けていこう」と背中を押され、琉球に移籍する前年の2015年シーズンは33試合の出場で143本のシュートストップを記録し、存在感を示し自信を深めた。
 

 その変わらぬプレースタイル、そしてプロ選手としての姿を顕示していたからこそ琉球を指揮することになった金監督は真っ先に朴に直接連絡を入れ、その呼びかけに二つ返事で応答。まもなく沖縄の地に足を踏み入れることとなる。

 朴は言う。

「ジョンソンさんは本当に人をよく見ていますし、いろいろ分かっている。だから長い目で見守って選手のことを信頼してくれているんです。僕のプレースタイルをよく知ってくれていたからこそ、一番の活かし方を見つけてくれたと思います」

 ディフェンスラインを高く押し上るハイライン戦術は朴の特性を活かすには打ってつけで、いわばこのふたりの存在によって「琉球=超攻撃サッカー」のブランドを作り上げたといっても過言ではない。今琉球に所属する選手たちもそのイメージに魅力を感じて加入したのがほとんどである。道筋をつけたところで昨年、金監督のバトンを受けた樋口靖洋監督は「『3−1で勝つサッカー』の継承、そして攻め勝つサッカーの徹底」を目指し今に受け継がれている。
 
 琉球で3シーズン目を迎えた2018年、金監督は朴をキャプテンに任命。これまで築き上げた琉球スタイルを遠慮せず自分の手でまとめろと背中を押した。生ぬるさを感じていたからこそ、あえて憎まれ役を演じ切って締める姿もチームのマインドをひとつにさせる要因となり、11月3日の30節・ザスパクサツ群馬戦において4−2で勝利し、J3リーグ史上最速での優勝を決めた。

 その瞬間、控えめに両腕を挙げて喜びを表現する朴だったが、ピッチサイドで待ち構える金監督の姿が見えると足早に駆け寄って抱擁を交わし、16年から築き上げてきたひとつの集大成に喜びを分かち合った。

 かつて「琉球のノイアー」とも称された朴の型破りなプレーと、GKとしての型が備わっているからこそ、そのスタイルを容認した金監督との強い絆により琉球はJ2の舞台へと上った。主体的な攻撃サッカーがクラブのアイデンティティとなっている現状を思うと、それを根付かせたふたりの功績は大きい。

取材・文●仲本兼進(フリーライター)
 

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