英国の熟練記者が選ぶJ歴代ベスト11「小野とピクシーは絶対に外せない。ただ日本のジョージ・ベストは…」

英国の熟練記者がJ歴代ベスト11を選出 小野伸二、中田英寿氏、井原正巳氏ら

記事まとめ

  • 英国の記者がJ歴代ベスト11を選出し「なんと難しいチャレンジだったか」と振り返った
  • 長友佑都、小野伸二、中田英寿氏、井原正巳氏、ストイコビッチ氏らが選ばれている
  • 三浦知良、中村俊輔、ラモス瑠偉氏、イニエスタらは悩んだ末に断念したという

英国の熟練記者が選ぶJ歴代ベスト11「小野とピクシーは絶対に外せない。ただ日本のジョージ・ベストは…」

英国の熟練記者が選ぶJ歴代ベスト11「小野とピクシーは絶対に外せない。ただ日本のジョージ・ベストは…」

赤く囲っているのが「MY BEST PLAYER」。プラストウ記者は迷わず“妖精”をセレクトした。



 なんと難しいチャレンジだったか。

 正直言って、一番悩んだのは外国籍選手3人だった。レオナルド、ジョルジーニョ、マルキーニョス、ビスマルク、ラモン・ディアス、ピエール・リトバルスキ、サルバトーレ・スキラッチ、アンドレアス・イニエスタなどなど、錚々たる面々から誰を選べばいいのか頭を抱えた。日本人選手も同様である。カズ(三浦知良)、柱谷哲二、ラモス瑠偉、前園真聖、藤田俊哉、中澤佑二、楢崎正剛、中村俊輔、中村憲剛、遠藤保仁、阿部勇樹らを入れるかどうかで最後まで悩んだが、断念するに至ったのだ。

 こうした難易度の高いセレクションに臨むにあたっては、まずお詫びからスタートしなければならない! ご容赦願いたい。

 今回の選考で私がこだわったのは、娯楽性に富んだチームを完成させること。フットボールにはやはり、観ていてドキドキするような感覚が欠かせないからだ。ファンを確実に楽しませることのできるJリーグ・ベスト11が理想形。一方でそのエンターテインメントを実現させるために、チームを安定させ、前線のインスピレーションを促進するような存在も必要だろう。いわば監督になった気分で、そうしたところに留意してみた。

 
 まずは2トップから行ってみよう。阻止不可能だったパトリック・エムボマは選ばれて然り。サイズがあり、しなやかで、鋭く、なおかつテクニックもずば抜けていた。1997年はエムボマのベストシーズン。Jクラブの守備陣は彼の前になす術なしで、どんな対策を練っても無駄だった。人としても温かくフレンドリーで陽気な人気者。フットボールへの愛情に溢れ、そうしたスタンスがプレーのすべてを輝かせていた。

 パートナーは日本のトップムードメーカー、中山雅史とした。生粋のストライカーであり、可能性が低くとも走ることを止めず、ボールを決して見失わない男だ。エムボマのような身体能力は有していなかったが(誰も持ち合わせていないが)、最終的には確実にゴールを射抜いてみせた。この2トップを止めるのは至難の業だろう。

 まさに日本のジョージ・ベストだったのが若き日の前園。彼をここに入れられなかったのは悔やまれるが、今回はサブに収まってもらうほかない。


 エムボマと中山の得点力を引き出す攻撃的MFは誰か。私は彼らに、敵守備陣を広げるためのスキルとスリル、ビジョンを求めた。そしてもちろんゴールセンスもだ。

 1998年のデビュー以降、小野伸二は驚異的なプレーを続けた。十代にしてまるでベテラン選手のような振る舞いで、尋常ではない技巧で周囲の選手たちを自在に操った。純粋なテクニックだけで言えば、彼に並び立つ日本人選手を私は知らない(久保建英には可能性があるかもしれない)。全盛時はまさにマジシャンだった。

 ドラガン・ストイコビッチの選出に異論はないはずだ。ピッチ上のすべてを見透かし、両手を縛られて目隠しされても、平然とプレーしてみせただろう。私が観たなかでもっとも情熱的でエクサイティングな選手のひとりである。“ピクシー”のニックネームで親しまれたが、その由来はさておき、まさに神話的で、ときに悪魔的で、キュートで、機敏で、いたずら好きな妖精だった。

 ファンタジー溢れる2列目のコンビは絶対に外せない。そんな彼らをバックアップするのが、ドゥンガと中田英寿だ。どちらも完璧主義者で、粘り強く、常に頭の中がクール。ゲームを見極める目に優れ、彼らのフィジカル、ビジョン、スキルは攻守両面で威力を発揮し、とりわけ波状攻撃を巧みに促進する。ミスはほぼ犯さない。いわゆる万能型で、ワールドカップでも実績を残したコンビは高次元の補完性を披露してくれるだろう。

 
 ポジション別で言えば、サイドバックが最大の難関だった。レオナルドとジョルジーニョを入れたかったのだ! 小野とレオナルドの左サイド、ストイコビッチとジョルジーニョの右サイドなんて、想像するだけでワクワクしないか? だが、編集部からのオーダーは「外国籍枠は3人まで」。こればかりはしょうがない。泣く泣く選外とした。

 もうひとつの鹿島アントラーズの名セットである、右の名良橋晃と左の相馬直樹にしても良かったが、ここは現日本代表の長友佑都と酒井宏樹を選ばせてもらった。

 長友は弛まぬ努力で身体能力を飛躍的に進化させ、現在の日本フットボールにおいてもっとも“ズル賢さ”を備えた選手のひとり。酒井は日本人サイドバックのなかで最上級のフィジカルを有し、攻撃面での魅力に溢れる。彼らふたりが攻守で絶妙に連動し、チームの娯楽性をよりいっそう高めるだろう。

 世代の異なる選手同士を比較するのは得てして困難だが、守備センターに関しては、迷わず井原正巳の名を挙げたい。Jリーグ史上最高のDFだと考えている。図抜けたフィジカルと集中力、そして対人プレーの圧倒的な強さ。絶対的な信頼を寄せられる名手だ。

 一方で、センターバックの相棒には破天荒な田中マルクス闘莉王をチョイスしたい。予測不能な攻め上がりで観衆の度肝を抜き、まるでフォワードのように相手DFを戦慄させる彼は、常に私のお気に入りだった。ピッチ外では愛嬌たっぷりに、ピッチ内ではまさに鬼神のごとく仲間を叱咤激励する。実にユニークな存在だったと思う。

 最後にゴールキーパーだが、こちらもエンターテインメイト性を重視した。となれば、川口能活しかいないだろう。パンサーのように飛び跳ね、守備陣を絶えず大声を張り上げて鼓舞し、そして異常なほどのポジティブマインドでチームを奮い立たせる。川口は、もっとも安定感がある日本人GKではなかったかもしれない。だが彼はフットボールという“ショー”にいつも、ベストでスペシャルななにかをもたらしてくれた。

 
 マイベストプレーヤーはピクシーとしておこう。度重なる怪我から完全復活を遂げた真のワールドクラスを、日本のファンは間近で見ることができた。なんという幸運だろうか!

 アーセン・ヴェンゲルとで悩んだが、監督はオズワルド・オリヴェイラに決めた。鹿島の栄光を盤石のものとした、Jリーグ史に燦然と輝く指揮官である。

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著者プロフィール
マイケル・プラストウ/1959年、英国のサセックス州出身。80年に初来日。91年に英国の老舗サッカー専門誌『ワールドサッカー』の日本担当となり、現在に至る。日本代表やJリーグのみならず、アジアカップやACLも精力的に取材し、アジアを幅広くカバー。常に第一線で活躍してきた名物記者だ。ケンブリッジ大学卒。

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