【横浜|回顧録】初めて首位に立ったあの日、喜田拓也は何を語ったか

【横浜|回顧録】初めて首位に立ったあの日、喜田拓也は何を語ったか

扇原とともに、キャプテンとしてチームを牽引した喜田。腕章を託された今季も強い決意で、リーグ連覇&アジア初制覇を目標に戦う。写真:徳原隆元



 15年ぶり4度目のリーグ制覇を果たした昨季、横浜F・マリノスは32節のアウェー松本戦で1-0の勝利を収め、そのシーズンで初めてスタンディングのトップに立った。開始2分、右サイドからカットインした仲川輝人は、寄せてくる敵を軽やかにかわし、左足を振り抜いてゴールネットを揺らす。この虎の子の1点を守り切り、貴重な勝点3を積み上げた。

「厳しい、タフな試合になったけど、そこでしっかり1-0で勝ち切れたことは、またチームの強さにつながっていくと思う。みんなのハードワークだったり、(試合に向けた)準備段階の姿勢だったりとかが、勝つことで報われたのは良かった」

 シーズンを通して、もっと言えば、さらに昔から、喜田はチームが一丸となって戦うことの重要性を強調してきた。ピッチに立つ者、ベンチに控える者、メンバーに選ばれない者。それぞれの立場は異なるが、全員が同じ方向を向いて邁進する。そんな集団を理想とし、そんな集団こそが何かを勝ち得ると信じていた。

 だからこそ、ピッチに立てば、仲間のために身を粉にして戦う。ベンチメンバーもタッチライン際で声援を送る。指示を出す。「あれほど頼もしい仲間はいない。一緒になって戦ってくれて、そういう姿を見るだけでもモチベーションになる。今日、横浜に残っている選手たちも、練習から本当にハードワークしてくれて、それがチームの強さにつながっていると思う」と、喜田は言葉を噛みしめる。

 松本戦後、喜田は勝利の喜びやタイトルに近づいた高揚感とは別に、チームとしての強固な団結力を感じていたのではないだろうか。

「心の底からみんなを信じている。信頼して、支え合ってここまできた。それがチームスポーツだし、そんなの当たり前じゃん、ってなるかもしれないけど、その当たり前のことを、どれだけ当たり前にできるか。

 たとえば、試合に出られない選手がいて、『なんで出られないんだよ』っていう態度を見せれば、すぐに伝染してしまう。でも、そういうのがない。もしかしたら一選手として思っているかもしれないけど、その気持ちを押し殺してでもチームのために行動できる。

 本当に、強い人間の集まりだと思う。遠征のメンバーに入れなかった選手たちは、『絶対に勝って来いよ』と送り出してくれる。そういうのって、当たり前にできることじゃない。でも、やってくれる。だから、ピッチに立つ者としては、みんなの姿勢が一番の力になる」
 
 そして、喜田はきっぱりと言い切る。自分のスタンスを。

「チームのために尽くしてくれる仲間がいるなら、その人たちのためにピッチに立つべき」

 なぜ、横浜は一枚岩になって戦えていたのか。きっと喜田のように誰かのために戦い続けるチームメイトの姿を見ているからだろう。

――戦術うんぬんもあるけど、“ひとつになって戦うこと”ができているのが強みに?

「根本、土台はそこだと思うので。そこに対するみんなの思いは絶対に無駄にはしたくないし、報われるべきもの。それは……」

 声のトーンが少しだけ変わる。表情がグッと引き締まる。

「それは自分たちの手で、なにがなんでも掴み取っていきたい」

 首位の座を奪還した松本戦から14日後、喜田の両手には銀色に輝くシャーレがあった。揺るぎない結束で得た成功体験は、タイトルよりも価値があるかもしれない。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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