【ルヴァンカップ決勝|回顧録】これがプロなのか…札幌担当1年目で見せつけられたふたりの選手の“有言実行”

【ルヴァンカップ決勝|回顧録】これがプロなのか…札幌担当1年目で見せつけられたふたりの選手の“有言実行”

昨年、クラブ初のルヴァンカップ決勝に進出した札幌。大舞台ではふたりの選手の活躍が光った。写真:田中研治



「プロってすごい……」

『サッカーダイジェスト』編集部に入った2019年、筆者が最も強くそう感じたのは、忘れもしない10月26日、ルヴァンカップ決勝の札幌対川崎でのことだ。
 まるで台風のような暴風雨に見舞われた決勝戦の前日。天候と選手の体調を考慮して、練習後の囲み取材は、話を訊ける選手が限られた。そのなかで話を訊けたひとりが、札幌の菅大輝だ。

 21歳ながら札幌の左ウイングバックを担い、出番こそ得られなかったものの、同年8月のコパ・アメリカでA代表入りを果たすなど、期待の東京五輪世代だ。決勝に向けての気持ちを問われると「やっと(ここまで)来たという感じはありますけど、いつも以上に緊張していますね」とひと言。

「もともと緊張しやすいんですけど、それ以上にもっと。いつもの試合の10倍くらいっす」

 勝手ながら、サッカー選手は自信家が多いイメージがあったので、少し意外だったというか、親近感を覚える回答だった。

「これくらいのビッグマッチはこれまでに経験したことがないので、思い切りの良さを出して、ただひたすらガムシャラにやれればいいのかなと思います」

 同じ東京五輪に出場するチームで、左サイドのポジションを争っている湘南の杉岡大暉(現・鹿島)が、2018年のルヴァンカップ決勝で決勝点を挙げ、MVPとなったことを記者から引き合いに出されると「去年もその試合を観て、いつか自分もスギちゃん(杉岡)のような“いいとこどり”と言ったらよくないですけど、MVPを獲って、そういう風になれたらと思っていたので。明日そういう(決勝の舞台という)チャンスが来たので(ゴールを)狙っていきたいです」

 力強く、コメントを残した。

 そしてもうひとり、前日コメントが印象的だったのが福森晃斗だ。強烈で精度の高い“黄金の左足”で、直接FKでゴールを狙い、ロングフィードでは一瞬にして決定機を作り出すDFである。プロキャリアをスタートさせた古巣・川崎との一戦ということもあり、「すごく楽しみですね。点を取るしかない。フリーキックがあれば、狙っていきたい」と、口数少なく意気込んだ。
 

 そして迎えた翌日の決勝戦。前日の悪天候が嘘のような晴天のもと、開始10分、最初にゴールネットを揺らしたのは札幌だった。それも前日に話を訊いていた菅だ。相手DFのクリアボールに反応し、利き足とは逆の右足を一閃。シュートはクロスバーを直撃するも、相手GKに当たってそのままゴールへ吸い込まれた。

「ビックリしました」

 自身の得点について率直に振り返った菅は、これが同シーズン初のゴールでもあった。そして、この日のピッチに立った時、実は前日以上に緊張していたという。

「昨日のさらに10倍です。それ以上に緊張してヤバかったですけど、あの一発が入ってくれて、緊張もだいぶほぐれてくれて、あれが入っていなかったらヤバかったかもしれないです。入ってくれて良かった」

 その後、川崎に逆転を許して窮地に立たされるも、後半アディショナルタイムに深井一希が劇的同点弾を挙げ、2-2で試合は延長戦へ。そして99分、もうひとりの男に“その時”は訪れた。
 
 ドリブルで相手陣内へ仕掛けたチャナティップが倒され、ペナルティアークの外、右側でFKを獲得。キッカーはもちろん、福森だ。

 対面するGKはゴールやや左に構えていたが、左ポスト際を狙ったシュートは弧を描きながらも鋭くゴールネットに突き刺さった。

 福森は「自分が狙いたいところに山村(和也)選手(186センチ)だったり背の高い選手がいたので、ファーサイドに蹴ろうかなと思った。(そのコースの)延長線上に立っていたのが長谷川(竜也)選手(164センチ)と大島(僚太)選手(168センチ)だったので、スピードのあるボールで(長谷川と大島の)壁を越せばいけるかなと思って、狙いました」と振り返る。

「素直に嬉しかったです」

 楽しみにしていたこの舞台でFKを決められたことに、喜びを表現した。

 試合はその後、川崎に追い付かれPK戦へ突入。3(4PK5)3で敗れてしまった。しかし、前日の意気込みを有言実行したふたりの姿には、これが“プロ”選手なのかと、担当1年目の筆者は驚かされた。

取材・文●佐藤香菜(サッカーダイジェスト編集部)

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