永遠の都で永遠に語り継がれるチームになったバルサ。当時38歳の青年監督も伝説に

永遠の都で永遠に語り継がれるチームになったバルサ。当時38歳の青年監督も伝説に

バルサ監督就任1年目で偉業を成し遂げたグアルディオラ。その表情からは喜びが伝わってくる。写真:サッカーダイジェスト



 今なお記憶に強く刻まれているのが、2009年5月27日にローマのオリンピコで行なわれたチャンピオンズ・リーグ(以下CL)決勝、バルセロナとマンチェスター・ユナイテッドの一戦だ。

 魅惑のトータルフットボールで3大会ぶりにファイナルの舞台に駒を進めたバルサと、手堅いサッカーでCL連覇の偉業に王手をかけたマンチェスター・U。最強の攻撃力を有するスペイン王者か、それとも最強の守備力を誇るプレミア王者か。当時、「いま欧州でもっとも魅力的なクラブ同士の対戦と謳う記事もあったと記憶している。

 ちなみに両チームの先発メンバーは、バルサ(システムは4−3−3)が以下の11人。GKがV・バルデス、4バックは右からプジョール、トゥーレ・ヤヤ、ピケ、シルビーニョ、中盤の底がブスケッツで、その前方にシャビとイニエスタが構える。3トップは右からメッシ、エトー、アンリという並びだった。

 対するマンチェスター・U(システムは4−4−1−1)は以下の11人。GKがファン・デルサル、4バックは右からオシェイ、ファーディナンド、ヴィディッチ、エブラ、中盤は右からパク・チソン、キャリック、アンデルソン、ルーニー。トップ下気味にギグスが構えて、1トップがC・ロナウドだった。
 
 豪華な顔ぶれである。それだけ注目度の高いファイナルだったが、意外にも試合は一方的な展開となった。
 
 マンチェスター・Uの失敗のひとつは、絶対に取られてはいけない先制点を、しかも10分という早い時間帯に与えたことだ。がっちり守りを固めてバルサの焦りを誘う。そんなプランがエトーの先制弾で崩れ去ったのだ。この時点で赤い悪魔が甚大なダメージを負ったことは、「先制されたショックから、最後まで立ち直れなかった」というコメントが物語っている。

 GKのファン・デルサルも「予想していなかった」失点で、マンチェスター・Uは浮足立ち、パスミスを連発。頼みのC・ロナウドもバルサの素早いプレッシングの餌食になった。パスの出しどころをほぼ完璧に封じられ、前半は攻め手が見つからなかった。

 そして、2つ目の失敗が後半の頭からオープンな戦いを挑んだこと。テべスを投入して、右からルーニー、テべス、C・ロナウド、パク・チソンと4トップに近い攻撃的な布陣で反撃を試みたのだが、むしろ押し込まれる展開になってしまったのだ。
 

 オフェンス力が売りのバルサに真っ向勝負を挑めばどうなるか。それを、マンチェスター・Uの選手たちは痛恨することになった。

 前半から最終ラインを高めに設定し、コンパクトな3ラインの中に敵を押し込めたバルサは、前線からの激しいプレッシングで奪ったボールを、前傾姿勢となったマンチェスター・Uの背後へと巧みに運び、次々とチャンスを生み出していく。その迫力は、記者席にも伝わってくるほど圧倒的なものだった。

 当時のバルサは「華麗なパスワーク」「抜群の攻撃力」を絶賛される傾向にあった。ただ、それを可能にしていたのは“組織的なハイプレス”ではなかったか。豊富な運動量で前線からプレッシャーをかけ続けたエトーはもちろん、ボールを失った直後に凄まじいチェイシングを実践するイニエスタの献身的なプレーがこの決勝ではとりわけ感動的だった。ポジショニング素晴らしかったブスケッツを含め、「良い攻撃は良い守備から始まる」をチャンピオンズ・リーグ決勝の舞台で飄々とやってのけた彼らのパフォーマンスは圧巻だった。

 チャンスというジャブを小気味よく繰り出し、マンチェスター・Uをリングサイドに追い込んだバルサは、70分、決定的なパンチをクリーンヒットさせる。右サイドをフリーで上がってきたシャビの正確無比のクロスをエースのメッシが頭で合わせて勝利を決定づける追加点を奪ったのだ。
 
 最後まで集中力を切らさず、隙を与えなかったバルサがスコア以上の内容でマンチェスター・Uを圧倒。スペイン史上初の3冠(CL、ラ・リーガ、コパ・デル・レイ)を達成した彼らは、永遠の都ローマで、永遠に語り継がれる伝説のチームになった。

 そして、バルサの監督就任1年目でこの偉業をやってのけたグアルディオラも──。91−92シーズンにバルサの一員として欧州制覇をした彼は、選手と指揮官の両方でビッグイヤー(CLのトロフィーの呼称)を掲げた6人目のレジェンドとなったのだ。

「我々はバルサ史上最強のチームではないが、最高のシーズンを送ったことだけは確かだ」

 試合後の会見で、記者団に大きな拍手で迎えられたグアルディオラが清々しい表情でそう言ったのが、とても印象的だった。

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)

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