進展しないメッシの契約延長問題。発言力が増したエースにバルサは不安を募らせる…【現地発】

進展しないメッシの契約延長問題。発言力が増したエースにバルサは不安を募らせる…【現地発】

給与削減の声明は選手を代表してキャプテンのメッシが発表した。(C) Getty Images



 リオネル・メッシは昨夏のコパ・アメリカを境にどこか変わった節がある。シャイで、人前で話すことが苦手だった彼が、ブラジルで開催された同大会ではチームメイトに自ら積極的に声をかけるなどしてキャプテンシーを発揮。またメディアの前でもいつになく饒舌で、準決勝でそのホスト国に敗れる(0-2)と、南米サッカー連盟とレフェリーの汚職を激しい口調で非難した。

 2018年にハビエル・マスチェラーノ、アンドレス・イニエスタが立て続けに退団し、同年夏からキャプテンに就任したバルセロナにおいても、そこまで急激ではないが、かなり前から影響力を発揮するようになっていた。

 それが顕著に表れたのが給与削減を巡る一連のクラブとの話し合いだ。キャプテンのとしてフロントとの交渉の窓口となり、当初から削減を受け入れる姿勢を示す一方で、まずはチームメイトの意見を聞く必要があると提言。同時に高額のサラリーを隠れ蓑に稚拙なマネジメントをごまかそうとするフロントの姿勢に苦言を呈することも忘れなかった。

 全員の同意を取り付け自身のインスタグラムを介して発表した声明においても、給料削減の受け入れ、クラブスタッフへの金銭的な支援に加えて、フロントへの疑念を声高に訴えている。
 
 ジョゼップ・マリア・バルトメウ会長は2015年夏に3冠という絶好のアシストをチームから得て再選を果たして以来、メッシをはじめとする選手たちを満足させることに躍起になってきた。問題なのはそれでも彼らのフロントへの不信感が拭えないことで、役員6人の辞任を起因とした理事会の再編も、そうした状況にさらに拍車をかけている。

 実際、昨年11月にもメッシ自身が「クラブにとっても僕たちにとっても、安定があったほうがいい。こうも変化ばかりしていては、それは望めない」と警鐘を鳴らしたばかりだった。

 メッシとバルサの現行契約は2021年夏に満了するが、この4月と5月の間に退団の意思をクラブ側に伝えれば、一方的に契約を解除できる条項が存在するのは周知のとおり。逆に言えば、メッシが何もアクションを起こさなければそのまま自動的に残留となるが、新型コロナウィルスの感染拡大の影響でシーズンの終了日が定かでないことがさらに問題を複雑にしている。
 
 メッシは「バルサを出ていく考えはない」と繰り返し強調するが、“10番”の野望はあくまで勝ち続けること。とりわけチャンピオンズ・リーグの王座奪還に強い執念を燃やしており、そのためにチームの競争力の向上が不可欠であることを誰よりも痛感している。クラブの安定を切望しているのも自らの、そしてチームの野望を完遂するために他ならない。

 バルトメウ会長とエリック・アビダルSDは、2021年夏以降の契約延長を目指しているが、いま現在父親で代理人を務めるホルヘと公式に接触を図る段階にも至っていない。メッシ本人が昨今顕著になっているピッチ内での孤立を負担に感じ始めるようだと、再度の長期契約を結ぶことが難しくなるのは避けられない。

 もはやメッシにとって金銭面は二の次であり、重要なのはクラブのバックアップ体制、そしてこのチームで勝ち続けることができるという手応えだ。13歳で入団して以来、バルサ一筋だが、2014年春に病床にあったティト・ビラノバに説得されるまで去就に悩んでいたように、常に安泰と言える状況ではなかった。

 奇しくもキケ・セティエン監督は、先日、メッシの進退について問われると「わたしが望んでいるのは、メッシに監督として認めてもらうことだ」と意味深な発言をしている。

 メッシはこの数年で影響力、発言力が増したことは間違いない。ただそれがまたバルサがエースの決断待ちという今の状況に不安を募らせる一因にもなっている。

文●ファン・I・イリゴジェン(エル・パイス紙)
翻訳●下村正幸

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙の記事を翻訳配信しています。
 

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