【岩本輝雄の英雄列伝|岡野雅行】プロで大成するには? “野人”が示したひとつの正解

【岩本輝雄の英雄列伝|岡野雅行】プロで大成するには? “野人”が示したひとつの正解

94年にプロデビューして、13年に引退。現役生活20年という長いキャリアを築けたのも、“スピード”という突出した武器があったから。写真:滝川敏之



 岡野とは同級生で、小学校の時は横浜市選抜で一緒だった。神奈川県内の大会で優勝したりした一方、それぞれの所属クラブで対戦した時は、けっこう負けていたかな。岡野がいた駒林SCは強くてね。

 その後は、まったくと言っていいほど対戦経験はなし。高校では、僕は横浜商科大高だったけど、岡野は島根の松江日大高に進学して、卒業後は日大へ。その日大を中退して浦和に加入した94年シーズンに、ピッチ上で久々の“再会”を果たすことができた。

 ほぼ小学校の時のイメージしかないからね。まず思ったのは「髪の毛、伸びたなぁ」って(笑)。まさに“野人”という感じで、長い髪を振り乱して、自慢の俊足でぶっちぎっていた。

 岡野のスピードは、文字通り、最大のストロングポイント。FWの選手が裏に抜けようとする時、プルアウェイの動きを入れたりとか、いろいろ工夫すると思うんだけど、岡野の場合は、ある意味、そうした駆け引きがいらない。後ろからパスが出る。それを合図に、ヨーイドン。それで勝てちゃうんだから。これは脅威だよ。

 改めて、岡野というフットボーラーを考えると、やっぱりプロというのは絶対的な武器が必要だってことかな。“得意”とか“自信がある”というレベルでは厳しいかも。スピードにせよ、キックにせよ、シュートにせよ、ヘディングにせよ、誰にも負けないぐらいに“突出”していれば、厳しい競争を勝ち抜けるだろうし、現役も長く続けられると思う。
 
 だって、足もとの技術はお世辞にも……と、これは本人の名誉のためにも、あまり触れないでおこう(笑)。まあ、シュートがもう少し上手ければ、海外でも活躍できたんじゃないかとは思う。とにかく、岡野はスピードという突出した武器を最大限に活かして、ワールドカップにも出たんだから、凄いよ。

 さらに、パサーにも恵まれたと思う。代表では、中田英寿という“キラーパス”の使い手がいた。敵陣の空いたスペースにビシッと通す。狙ったところは完璧だとして、前線の選手が追いつけないほどの鋭いパスでも、岡野なら追いつける。ふたりの相性は良かったと思うよ。それこそ、中田のシュートを相手GKが弾いて、そのこぼれ球を岡野が押し込んでフランス行きを決めた“ジョホールバルの歓喜”は象徴的だよね。
 

 浦和では、ウーベ・バインという名手がいたのが大きかったはず。岡野本人も「走り出すと、浮いたボールではなくて、ゴロで足もとにピタッとパスが来るんだよね」と言っていたから。

 中田とかウーベ・バインのような優れた出し手がいたことで、岡野の良さがより引き出されたのは間違いない。他の選手のパスでも、多少ズレたとしても、それがミスパスにならない。なぜなら、尋常じゃない速さで岡野がマイボールにしちゃうから。

 岡野は今、ガイナーレ鳥取の代表取締役GMという肩書を持ち、多忙な日々を送っている。そんななかでも、以前、久しぶりに会って食事をしたけど、相変わらず人間的にも素晴らしい人だよね。見た目の派手さとは裏腹に、謙虚だし、性格も良い。責任ある立場で、大変な仕事をこなしているだけに、話していても、いろんなところに目を向けて、考えているのが分かる。

 新型コロナウイルスの影響で、サッカークラブは苦しい状況かもしれない。だからこそ、岡野のようなバイタリティ溢れる人間がどんな踏ん張りを見せてくれるか。期待しているよ。

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