【安永聡太郎】ソシエダの躍進を支える“2人の逸材”は何が凄いのか?

【安永聡太郎】ソシエダの躍進を支える“2人の逸材”は何が凄いのか?

ソシエダの躍進を支える代表格がウーデゴー(左)とメリーノ(右)だ。 (C)Getty Images



 僕が今シーズンのラ・リーガで最も注目しているチームは、コロナウイルスによる中断前まで、リーグ4位と大躍進を見せているレアル・ソシエダです。戦術的に醸成されたリーガの中でも、かなり目立つ存在と言えます。チャンピオンズ・リーグ(CL)出場圏内(4位以内)につけていて、サッカーの質と結果が伴った好チームです。

 監督のイマノル・アルグアシルが若手の能力を引き出し、まるで2010-2011シーズンのペップ(グアルディオラ)が指揮した時代のバルセロナのように、個と戦術を融合させたサッカーを作り上げました。

 僕としては、マドリーやバルサより質が高かった「サリーダ・デ・バロン」(直訳は「ボールの出口」。ビルドアップに似た言葉で、攻撃の始まりを表わすスペイン特有の表現)が、CLの舞台で他国の強豪相手にどこまで通用するか見てみたいですね。ただ、リーガの中堅クラブなので、数人の選手はビッグクラブに引き抜かれてしまうかもしれません。
 
 マドリーからレンタル中のノルウェー代表MFマルティン・ウーデゴー(21歳)をはじめ、アンダー世代でスペイン代表経歴があるMFミケル・メリーノ(23歳)とMFイゴール・スベルディア(23歳)、スペインのフル代表にも選ばれるFWミケル・オジャルサバル(23)など、質が高い選手が揃っていますからね。正直、今シーズンのチームは「解体される可能性が高いのかな」というのが本音です。

 でも、CL出場権を確保できれば、それを武器に、クラブが頑張って選手たちの引き止め交渉を行なうかもしれません。いまの中心選手たちは、もちろん来シーズンも主力として試合に出場できる可能性が高いので、チームに残ってくれるかもしれないという淡い期待も持っています。それほど、シーズンを追うごとに完成度を高めていった好チームでした。

 そこで、今回はそんなソシエダの若手に注目し、彼らが「どのように良かったのか」を解説していきます。ぜひ、これを機会にソシエダの選手たちもチェックしてみてください。
 

 今シーズンのソシエダは戦術的に整備されたすばらしいチームです。

 4-3-3を基本フォーメーションとする彼らは、GKを含めて2センターバック(CB)から「サリーダ・デ・バロン」を丁寧に行ないます。きちんとプレーに意図が存在し、後方からの「サリーダ・デ・バロン」には、2つの狙いがあります。一つは、相手の守備を引っ張り出すこと。もう一つは共通確認のもと意図的にボールが走ることになるので、その移動の間にチーム全体が正しい立ち位置を取ることができるという点です。シーズンを通してこれをぶらさずにやり続け、共通イメージの解像度を高めてきました。

 ただ一方で、相手の体力に余裕があるうちは守備がスライドなどで対応してくるため、数的優位を作れず、なかなかボールを前進させることが難しい状態もありました。そこでチームに違いをもたらしていたのが「ウーデゴー」でした。
 
 彼は他の選手に比べるとボール扱いに長けているので、なかなかボールを奪われることがありません。どんな違いが作り出せるかといえば、「前進」と「時間」です。ウーデゴーは僕が定義する質の高いフットボーラーの条件である「ドリブルができる」ことを満たしている選手の一人です。

 一般的にドリブルといえば、日本の人たちは突破をイメージされますが、ドリブルにも種類があります。例えば、運んでライン間を突破したり、動かして守備ブロックをズラしたり、チームに必要な間を作ったりすることです。いくらチーム全体で素早くボールを動かしても、相手がそれに対応すれば、自分たちの優位性を生み出せず、均衡は保たれたままです。

 しかし、一人の選手が1対2の状況でもボールを奪われずにプレーできれば、その均衡を破り、チームに優位性を作ることができます。その優位性が個人のドリブルによるボールの前進と、味方がそれを意識した立ち位置を取り直す時間です。この違いを生む能力は、誰もができるプレーではないと考えています。ウーデゴーは、バルサでいう中盤でのリオネル・メッシの役割を担っているのです。

 ソシエダは後方から丁寧にボールを保持しながら、「どこに侵入していくか」「誰が時間を作るのか」「相手の目線をどう引き寄せるのか」などチームとしてさまざまな狙いを持ちながら、個の能力の高さを上手く活用している。その中心にいたのがウーデゴーをはじめ、メリーノやオジャルサバルといった若手選手でした。

 なかでもドリブルが巧みにできるウーデゴーのような選手がいるから、違いを作り出せるのです。
 

 ソシエダの後方からの丁寧な「サリーダ・デ・バロン」の中枢を担っていた一人が、「メリーノ」でした。

 ソシエダはGKまでボールが下がった時、2CBがポジションを下げてワイドに開くことが徹底されています。その時、両CBは進行方向に身体が向けられる立ち位置を取るのですが、その様子をさらにSBが読み取り、ピッチ幅を使って正しく広がります。

 その中で、相手の守備のファーストラインやセカンドラインがどこに設定されているかを観察しながら中盤の3枚も巧みに立ち位置を取り、相手陣内に侵入するためのプレーを実践します。

 そのやり方が2010-2011シーズンのバルサに似ているんですよね。

 ポジショナルな立ち位置を取るんですが、2CBの間に1ボランチが下りるか否かは相手の守備の構築次第です。でも、後ろが3枚になったときにはメリーノが適切に下りてきてダイヤモンドの底に入り、ゲームをうまく組み立てます。システムでいえば「3-1-4-2」に変化するわけですが、彼を含めて中盤の3枚は前半だけで平均で6kmを超える走行距離があり、チーム状況によって頻繁に立ち位置を変えられる賢さを持ち合わせているんです。

 その中でメリーノはウーデゴーやオジャルサバルらが仕掛けるやや後方で必ず適切な立ち位置を取り、彼らが手詰まりになった場合に高い確率でボールを引き上げて相手の目線を変えるように逆サイドに展開したり、斜めのパスを入れたりして、相手を揺さぶるような効果的な仕掛けを行ないます。

 そういうクレバーなプレーで味方に考える時間と立ち位置を修正する時間を与え、ゲームを作り直すキッカケを作ったり、攻撃にアクセントをもたらしたりできるチームに欠かせない選手の一人です。

 メリーノが見せるチーム全体の攻撃の指針となるようなボールの扱い方は、相手のライン間を突破するウーデゴーのドリブルとはまた違ったフットボーラーとしての資質の高さだと感心しました。

 近い将来、強豪クラブに引き抜かれてもおかしくない逸材だと思います。

分析●安永聡太郎
取材・文●木之下潤

【分析者プロフィール】
安永聡太郎(やすながそうたろう)
1976年生まれ。山口県出身。清水商業高校(現静岡市立清水桜が丘高校)で全国高校サッカー選手権大会など6度の日本一を経験し、FIFAワールドユース(現U-20W杯)にも出場。高校卒業後、横浜マリノス(現横浜F・マリノス)に加入し、1年目から主力として活躍して優勝に貢献。スペインのレリダ、清水エスパルス、横浜F・マリノス、スペインのラシン・デ・フェロール、横浜F・マリノス、柏レイソルでプレーする。2016年シーズン途中からJ3のSC相模原の監督に就任。現在はサッカー解説者として様々なメディアで活躍中。
 

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