「市船サッカー部は大きな名刺」OBペナルティが名門の真髄を語る! 後輩部員を熱血トークで激励

「市船サッカー部は大きな名刺」OBペナルティが名門の真髄を語る! 後輩部員を熱血トークで激励

千葉の名門校、市立船橋。インターハイ優勝9回、選手権優勝5回を誇る。写真奥の横断幕にある「和以征技」がチームの身上だ。写真:徳原隆元



 5月19日に行なわれた市立船橋高校サッカー部リモートミーティング。ペナルティの2人が参加したこの回、前編ではヒデさんとワッキーさんが自身の高校時代と大学時代の思い出、エピソードをテンポの良い掛け合いで進めていく様子を紹介したが、そんななかヒデさんは選手たちにこう問いかけた。

「今この時期は僕ら大人も自分を見つめ直す機会になっているんです。部員の皆さんもいろいろ考える時期になっていると思うし、決して無駄な時間にならないかと思います。逆に自分の夢や目標が明確になる時期にするか、しないかは自分自身。でも、市船に入ってきた時期だけで、それができるだけの力を持っていますよ。2、3年は続けているわけですし、入ってきたばかりの1年生も相当な決意のもとでここにいると思います。ここでやっていたことって、大人になった時に凄い力になると感じることが多いですから。僕らもそうで、僕らのことを知らない人でも『市船』という名前は知っている人が多くて、それだけで話がスムーズに行くことが多いんです」

 名門の看板は今も自分にとって重要な存在であることを卒業してから何年経っても思い知らされている。ヒデさんがそれを痛切に感じたのは、三浦知良選手がシドニーFCでプレーしていた2005年に、取材でオーストラリアを訪れた時だった。

「当時、カズさんは僕らペナルティの顔なども知らなかったのですが、会うなり『あ、市船サッカー部出身なんだよね』と、市船サッカー部を知っていて、そこの出身の芸人として認識をしてもらえていたんです。それもあって、練習後の貴重な時間を僕らのために割いてくれた。それが本当に感動というか、カズさんの心遣いを感じるとともに、市船の看板の大きさを感じました」

 こうヒデさんは語ると、すぐに画面の向こうにいる89人の選手たちに向けて、こう口にした。

「皆さんはそのチームの一員だという誇りは胸にずっと刻んで、これから市船を出たその先も、この『大きな名刺』というのは絶対に役に立つから、この名刺をウチの相方みたいに※夜逃げで汚さないように(笑)」(※前編参照:大学時代にワッキーさんが寮を夜逃げして去ったというエピソード)

 市船サッカー部という『大きな名刺』。これは覚悟を持って市船の門を叩き、仲間と切磋琢磨してこそ得られる大きな財産である。ヒデさんのメッセージはさらに熱を帯びた。

「今だよ、今やっていることは、この先どんな道に行っても『市船サッカー部』という大きな名刺が自分を助けてくれる日が必ず来ますから」
 

 そう投げかけると、深く頷きながら聞いていたワッキーさんも後に続いた。
「素晴らしい伝統が受け継がれているんだなと感じるんです。僕らが30年前に布啓一郎監督(現・松本山雅FC監督)に教わっている時には、常に『俺たちにはまだ伝統がない。帝京さん、国見さんには伝統があるけど、俺たちにはないからまだ弱いんだ』と言われていた。その時の僕は『何だよ、伝統なんていらないじゃん。これだけ一生懸命サッカーをやってきているんだから、俺らでも勝てるよ!』と思っていて、『伝統』の意味が分からなかった。

 でも今から7、8年前に市船に取材に行った時に、当時のキャプテンにインタビューをしたのですが、その時に一番心に残っているのが、『僕らはこの青いユニホームを着ている限り、絶対に負けられないんです』と言ったんです。『先輩たちから受け継がれているこの青いユニホームを着る責任があります』という言葉を聞いた時に、『あ、これが伝統なんだな』と」

 あの時の布監督の言葉の意味が卒業して時が過ぎてから痛いほど分かった。同時に市船が積み上げ続けている伝統の重さも再認識をした。

ワッキー:確かに僕らの時はこの青いユニホームにそこまでの重みはなかったよね、ヒデさん?

ヒデ:僕が中3の時に初めて市船が全国大会に出て、選手権初戦で国見に0−5という大敗を喫して、そこから『打倒・国見』、『目指せ全国制覇』が始まった。伝統は1日1日の積み重ねで、気づいて振り返ったら出来ているものだよね。

ワッキー:当時はどこに行っても、パッと帝京さんの黄色いユニホームを見たら『わ!帝京だ!』ってなっていました。でも今はみんなが青いユニホームでどこかに行ったら、相手が『わ!市船だ!』となるわけでしょ。それは素晴らしい伝統が受け継がれているなと思うんです。それが全てワッキーから始まったんだということですね。

ヒデ:は!? いやいや、最後おかしい!それまで凄くいい話だったのに、着地が思い切りグネってる!(笑)

ワッキー:波多監督、やっぱりこの青いユニホームの誇り、伝統はありますよね。

波多監督:そうですね、まさにおっしゃっていただいた通りで、市船はいつの時代も勝ち続けないといけない。それは今の選手たちも感じているところ。歴史や伝統を感じながら、プレッシャーのかかる中で責任を持って戦えるのは市船ゆえだと思います。それが成長につながると思いますし、そのために日々努力し続けることが我々の伝統だと思います。
 
 ペナルティの二人と波多監督、石田主将を交えた語らいは1時間近く続いた。最後に後輩のために多くの話をしてくれたペナルティの二人に対し、石田主将は「今日はこのようにズーム講演会を開いていただき、本当にありがとうございます。昔の市船の話や凄く楽しい話でした。今日の経験を一人ひとりが意識をしてプラスのものにしていきたいと思います。次は選手権の決勝の舞台に呼べるように頑張りたいと思います」と語ると、波多監督も「ヒデさん、ワッキーさんありがとうございました。本当に貴重な時間をいただきまして、選手たちの心に響いたんじゃないかなと思います。我々が恩返しするには結果で返すことが大事だと思いますので、今をしっかり乗り切って、この先の大会、人生を過ごして、OBとしてこれからお世話になることもあると思うので、市船ファミリーとしてこれからもよろしくお願いします」とお礼の言葉を述べた。

 波多監督は最後に「ワッキーさんはこれから芝刈りのシーズンで忙しいと思いますが、よろしくお願いします」と振ると、すかさずワッキーさんは自身のギャグである芝刈り機を披露。真剣かつ笑いありの講演会は、大きな笑いで幕を閉じた。

 選手たちにとっては有意義な時間だっただろう。どの言葉も後輩たちであり、市船の大きな名刺を背負った『同士』たちに対しての、熱量のこもったものだった。今、選手たちは未曾有の危機の中で、難しい状況に置かれているのには変わりはない。だが、そこでただ毎日を過ごすのではなく、刺激を得ながら自分自身を見つめ直し、そこから新たな自己と未来への活力を見出していかなければいけない。ペナルティの二人が送ったメッセージは随所にそれが盛り込まれていた。

 最後に二人が選手たちに送った言葉を記したい。

「今はチームを見直す時間だったり、自分に足りないものを補う時間だったりするよね。そういう時間って本来ならなかったわけですから、ここで『ただでは起き上がらない』とポケットにいろんなものを詰め込んで、再開に臨んでほしい。本当に微力ですが、僕らがやれることはやりたい。僕らが今回は代表のようになっていますが、みんな本当にそう思っています」(ヒデさん)

「市船の『和以征技』(和を以って技を征す)。未だに横断幕がありますよね。その『和』というのは、今年の代だけではなく、ずっと脈々と引き継がれていて、俺たちもその『和』の中に入っているんです。前を向いて頑張っていきましょう!」(ワッキーさん)

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)

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