酒井宏樹所属の名門マルセイユに買収予告? 625億円投入のウワサに、フランス中が騒然【現地発】

酒井宏樹所属の名門マルセイユに買収予告? 625億円投入のウワサに、フランス中が騒然【現地発】

名門マルセイユの身売りとなれば、ビッグニュースだが…。(C)Getty Images



 話題が絶えないフランス人気ナンバー1クラブのオランピック・ド・マルセイユに買収予告が飛び込み、物議を醸している。

 買収を予告したのは、ラグビークラブ・トゥーロンの元会長として有名なムラド・ブジェラル氏だ。ラジオに出演し、「マルセイユはパリ・サンジェルマンより重要なクラブ。マルセイユにはアイデンティティーがある」と語ったうえで、「名前はまだ明かせないが、ある実業家と4時間にわたって会談した」と明かした。

 相手は「複数の投資グループを代表」としており、「(ブジェラル氏が)このプロジェクトの旗手になって、週明け(6月29日から始まる週)にも(マルセイユのオーナーの)フランク・マッコートに提示される予定の買収オファーを、世間に予告発表してほしいと頼まれた」のだという。

 ブジェラル氏はエマニュエル・マクロン大統領と親しく、大統領もマルセイユの大ファンとして知られているため、メディアも一気に加熱した。氏によれば、「大統領には投資家の身元を伝えた。エマニュエル・マクロンはマルセイユのプロジェクトにかなり注意を払っている」、「共和国大統領室も詳細を把握すべく自分に電話をかけてきた」そうだ。

 この予告でフランスは、大騒ぎになった。

 AFP通信によれば問題の実業家は、フランスとチュニジアの二重国籍をもつモハメド・アヤシ・アジルディ氏(68歳)。北フランスのリールにあるエリート校を卒業後、1980年代からサウジアラビアに居住、水道、造船、石油などの多岐にわたる産業で成功してきた国際的人物で、フランソワ・オランド前大統領やマクロン大統領とも親しいと言われている。

 また『L’EQUIPE』本紙は、「アジルディ氏は現在サウジアラビアに在住しており、(サウジ)国家がこのマルセイユ買収プロジェクトの背後にいて、資金もそこから出るらしい」と分析している。

 さらに驚きなのはその投資額で、「少なくとも5憶ユーロ(約625億円)がテーブルに積まれるかもしれず、必要なら合計8憶ユーロ近くまで上昇する可能性もある」(『L’EQUIPE』)というからたまらない。現オーナーのマッコートに損をさせず、現在のクラブ赤字も精算し、そのうえ選手リクルーティングにも大金を投じる、という夢のような話になっているのだ。

 このため、ファンの一部は「宿敵パリSGに対抗できるうえ、超ビッグネームだって獲得できるかもしれない!」と歓喜した。ブジェラル氏はトゥーロンの会長として世界的に有名なラガーマンを次々に獲得、成功をもたらした経歴の持ち主でもある。

 だが「ハッタリではないか」「中身のない滑稽話だ」との懐疑論も根強い。ブジェラル氏はセンセーショナルにメディアに登場するのが好きな人物でもあり、何とかフットボール界に食い込もうと躍起になっていた経緯があるためだ。

 彼自身も「自分でも信じられない」「怖いとも思ったが、同時に惹きつけられた」と語っている。「今のところ自分がマルセイユ会長になるという想像はしていない」「マルセイユはまだSFみたいなもの」などと漏らしてもいる。

 ただ、ラグビーではなくフットボールで、しかも天下のマルセイユを相手に下手な芝居を打って失敗すれば、ブジェラル氏の信用は決定的に失墜するだろう。そのため、ハッタリと決めつけるのも難しい。

 今回の驚愕予告と報道を受け、マルセイユのジャック=アンリ・エロー現会長は現地時間6月27日に「マルセイユは売りに出されてはいない」ときっぱり反論。一方エリゼ宮(大統領府)は、ブジェラル氏に電話したことを認めたものの、「ボルドーなどを含め、クラブ買収時には常に、買収意図を確認するため電話している」と説明している模様だ。

 果たして、この買収予告劇の結末はどうなるのか。一部報道によれば他にもマルセイユ買収計画がふたつあり、今回のブジェラル氏の電撃予告も、それら競争相手を牽制して先手を打つ目的があったのではないかとみられている。

 ちなみに、パリSGオーナーであるカタールと、今回噂に出ているサウジアラビアは、国として対立関係にある。「マルセイユ対パリSG」はあくまでもフランスが誇るスポーツ的熱狂。そこに国家間の争いが持ち込まれなければいいのだが――。そう思うのは私だけだろうか。

取材・文●結城麻里
text by Marie YUUKI

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