札幌がタレント軍団を相手に見せた“エンターテイメント” 「クラブ規模で言えばバイエルン対パーダーボルン」

札幌がタレント軍団を相手に見せた“エンターテイメント” 「クラブ規模で言えばバイエルン対パーダーボルン」

札幌の無敗記録は6でストップ。それでもベスト布陣の神戸と最後まで競った。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)



[J1リーグ8節]札幌2-3神戸/8月2日/札幌ドーム

「クラブ規模で言えばバイエルン・ミュンヘン対パーダーボルンのようなもの。我々と彼らでは予算が5倍くらい違う」

 神戸との一戦を前にミシャことミハイロ・ペトロヴィッチ監督はこう口にしていた。もちろん、というと失礼かもしれないが、札幌はパーダーボルンの方。しかし、こうも続けている。
「我々は勇気を持って戦うし、十分に勝負を挑めるだけの力があると思っている」
「札幌は組織として戦うことで力を発揮するチーム。100パーセントではなくそれぞれが101%を出さなければいけいない。そういうチームだ」

 神戸にはアンドレス・イニエスタがいて、ベルギー代表のトーマス・フェルマーレンがいる。元バルセロナのサンペールもいるし、酒井高徳、山口蛍という欧州でのプレー経験がある日本代表クラスの選手もいる。予算もタレントも多い”ビッグクラブ”を相手に、札幌はグループで応戦した。
 
 この試合では、札幌のメンバー選考も興味深いものだった。なにしろ前節の横浜戦では機動力のある選手を前に並べ、広範囲でマンマークを行なうことで前年王者を封じ、勝利した。傍から見れば横浜対策がズバリ的中したように見えたが、その試合後には「今後はこういった試合が増えると思う」と指揮官が気になる言葉を発しており、興味はさらに深まった。

 そして、神戸戦でもストライカーを前線に置かず、いまや“前線のリベロ”とも評せる荒野拓馬や、ミシャサッカーを熟知する駒井善成ら敏捷性のある選手を並べ、横浜戦とほぼ同様のコンセプトで神戸を封じにかかったわけである。

 ただし、守備のニュアンスには違いがあった。もちろん前線からハメられそうな時には一気に追ったが、それ以外で例えばGK飯倉大樹がボールを保持した際には彼を放置し、近場のパスコースを消すことでパスミスを誘発。あるいは縦へのパスコースを消しながらアウトサイドに追い込んで、そこで一気に囲む場面も多かった。マンマークでの対応ではありながらも、封じるためのアプローチが前節とは異なっていた。

 柔軟性があり合理的な手法だろう。横浜戦のように広範囲でマンマークを徹底すれば相手から自由を奪える。ただし、神戸相手にそれを実行すれば、サンペールや山口、さらにはイニエスタらと常にタイマン勝負をするわけで、普通に考えて分が悪すぎる。ならば多少の自由は与えながらも、なるべくそれを自分たちの監視下でやらせようとし、肝心なところで自由を奪いにいった。

 試合前、ミシャ監督はこうも話している。
「日本では、神戸のような相手に対してはブロックを作ってスペースを与えない戦いが効果的だと思われている。だが、大事なのは局面で自由を与えないこと」

 そして本稿はいきなりフィナーレへと飛ぶのだが、結果として札幌は2-3のスコアで敗れたものの、ベスト布陣の神戸と最後まで競った。それも鈴木武蔵、福森晃斗、ジェイという昨季の主要得点源3名を負傷で欠いてである(ジェイは試合開始直前に負傷)。それを考えれば札幌は確かなレベルアップを示したと言える。ミシャ監督の戦略は見事なものだった。
 
 惜しむらくは、前半の終わり頃からマークに遅れが出ていながらも、そこで修正ができず45分に失点をしてしまったこと。そして、試合最終盤に相手ゴール前に人数をかけて同点を目指したが、ランニングタイプのアタッカー陣では、パワーのある神戸守備陣を脅かせなかったことだ。

 結局、この敗戦で再開後の無敗は6でストップしてしまった。しかし、ここまでの戦いのなかで間違いなく札幌は選手層を厚くしたし、戦術面、戦略面での引き出しも増やした。この神戸戦もエンターテイメントとしては魅力的で、総合的に札幌はミシャ監督が志向する「観る者を楽しませるサッカー」をしっかり演じていると言っていい。

 試合数の多い8月は、同時に楽しみも多い8月になることだろう。

取材・文●斉藤宏則(フリーライター)

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