「トップ昇格の可能性は低いので…」C大阪U-18の“逸材”近藤蔵波が味わった挫折と、合同トライアウトで見せた“凄まじい気迫”

「トップ昇格の可能性は低いので…」C大阪U-18の“逸材”近藤蔵波が味わった挫折と、合同トライアウトで見せた“凄まじい気迫”

第9節のYS横浜戦で公式戦復帰を果たした近藤。写真:安藤隆人



 2002年生まれ、“日韓ワールドカップ世代”のセレッソ大阪U-18に所属するMF近藤蔵波はまさに順風満帆だった。

 C大阪U-15の時からU-15日本代表に名を連ね、U-18に昇格をした後もU-16日本代表としてAFC U-16選手権優勝を経験。2019年には、高校2年生ながらU-23チームの一員としてJ3デビューを果たすなど、順調にステップアップを果たしていた。

 しかし、そんな彼にとって去年は苦しい1年となる。U-17ワールドカップ(ブラジル)イヤーだったが、当初はメンバーにも入っていなかった。3月の福島合宿で辞退者が出たため、追加招集をされると「いいアピールができた」とハイパフォーマンスを見せた。
 
 だが、合宿直後に右足首を負傷。リハビリを強いられ、さらにもう1度故障を繰り返したことから、トップコンディションまで戻らず、U-17W杯のメンバーから落選。今年1月には手術も行ない、ようやく公式戦に復帰したのは8月8日のJ3リーグ第9節のY.S.C.C.横浜戦、21分間のプレーだった。

「去年は本当に悔しかった。足首の靭帯とネズミで予想以上に長引いてしまいました」

 プロに向けて、世界に向けて一番アピールできるチャンスをただ見つめることしかできなかった。そして今年は手術からのリハビリでコンディションを上げてきたが、新型コロナウィルス感染拡大の影響でアピールするチャンスは激減してしまった。
 
 徐々に焦りが生まれて行った。そんな中で8月11日に多くのJクラブスカウトが集結するトライアウトであるコネクティング・サポート・セレクションin関西(株式会社リトルコンシェル主催、ポカリスウェット協賛)に参加できるチャンスが巡ってきた。

 現時点で、彼はトップチームに昇格できるかできないかは決まっていない。だが、このトライアウトに参加している時点で覚悟はできていた。

「クラブも僕のことを真剣に考えてくれていると思います。もちろんトップ昇格をしたいですが、ここにいるということは可能性が低いと思っています。でも、僕は大学という考えはなくて、プロに行きたい。やれることを全力でやりたい」

 1本目は4-2-3-1のトップ下に入ると、ボランチで出場したC大阪U-18のチームメイトであるMF神保海鈴と息の合ったコンビネーションで攻撃の中枢を担った。先制点はこの近藤がお膳立て。左サイドで浮き球のボールを走りながら完璧にトラップをすると、中の状況を見てファーサイドのスペースに柔らかなクロス。これを阪南大高のMF小西宏登がヘッドで押し込んだ。

 2本目は4-4-2のボランチ。ここでも縦に鋭いパスと球際の強さ、局面の打開力を見せつけると、4本目は4-1-4-1の2シャドーの一角に入り、高い位置からドリブルを積極的に仕掛けた。

「この中で一番目立たないといけないと思っていました。ボランチなどの不慣れなポジションでしたが、何ができるかと考えた時に今日に関しては積極的に得点を狙いました」

 ゴールこそなかったが、凄まじい気迫とプレー強度はひしひしと伝わってきた。正直、心の中には複雑な思いが入り乱れていただろう。だが、彼はそれを闘志と覚悟に変えてピッチの上で躍動した。
 

「正直、小学校の時からずっと『プロになれるものだ』と思ってサッカーをやってきました。それが甘かったと、高3になっていろいろ気づかされました。だからこそ、残り少ないチャンス、期間ですがモノにしてプロの道に進んで努力していきたい」

 この日、スタンドには34ものJクラブスカウトが熱視線を送っていた。その中で力強くアピールする近藤の姿は印象的だったに違いない。

「まだ体力的な部分が万全ではないので、ここが戻ってくれば、もっと違ったプレーを見せられると思います。僕にはどんなチャンスでも掴み取るためにやるしかない。期間も短いですし、ここで声がかかれば嬉しいですが、この先で1番周囲に見てもらえるのはJ3リーグなので、そこで活躍できるようにしたいです」

 これまで培ってきた技術を土台にしつつ、余計なプライドは捨てて、ただまっすぐに。近藤蔵波は自らを奮い立たせて、力強く歩を進めている。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)
 

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