久保建英の起用法はどうなる? スペイン人戦術アナリストに直撃!「エメリが左利き3人を同時に使うかは疑問だ」【現地発】

久保建英の起用法をスペイン人戦術アナリストが解説 トップ下の実現には2つの問題か

記事まとめ

  • ビジャレアルへのレンタル移籍が決定した久保建英の起用法を戦術アナリストが分析した
  • 最有力なのは右サイドだといい、サムエル・チュクウェゼに比べテクニックが多彩とも
  • トップ下も候補の1つだが、その実現には2つの問題が横たわるという

久保建英の起用法はどうなる? スペイン人戦術アナリストに直撃!「エメリが左利き3人を同時に使うかは疑問だ」【現地発】

久保建英の起用法はどうなる? スペイン人戦術アナリストに直撃!「エメリが左利き3人を同時に使うかは疑問だ」【現地発】

ELにも出場するビジャレアルへ移籍した久保。レギュラーの座を勝ち取れるか。(C) Getty Images



 久保建英にとって、マジョルカは“試練の場所”でもあった。

 ビセンテ・モレーノ監督が採用する戦術面でも、チーム全体のクオリティーという面でも、久保のような攻撃センスに長けた選手にとって必ずしもプラスとは言えない環境の中で1年間プレーしたことは成長を加速させた。だが同時に、ポテンシャルをフルに発揮できていないというもどかしさが常にあった。

 1年のレンタル移籍が決定したビジャレアルは、その意味では能力の高い選手が揃い、チームを率いるのも国際経験も豊かなウナイ・エメリだ。もちろんその分、チーム内の競争は激しさを増すが、この環境の変化が久保にどんな化学反応をもたらすか興味は尽きない。

 全ての若手選手がそうであるように、今の久保は継続して出場機会を得ることが何よりも先決だ。ただ彼を特別な存在にしているのは、昨夏にレアル・マドリーに入団してからの親善マッチ、そしてマジョルカでの1年間でのプレーを通じて、すでにプリメーラ(1部)でもトップクラスの選手であることを実証していることだ。

 実際、若手のレンタル移籍といえば、武者修行という側面が強いが、久保の場合は新シーズンのプロジェクトの目玉として迎え入れられている。しかもビジャレアルはエメリを招聘してさらなる飛躍を期している。伸び盛りの19歳にとってこの上ない新天地といえるはずだ。

【動画】久保の入団会見&圧巻のリフティングパフォーマンス
 最大の関心事は、久保がビジャレアルにフィットできるかだろう。両者の相性は理想的といってもいいが、ポイントとなるのはやはりどのポジションで起用されるかだ。

 もっとも有力なのは、マジョルカでも主戦場としてプレーした右サイドだ。久保はあらゆる意味において鋭さが魅力の選手だ。スピードに乗ってスペースに走り込むというよりもむしろ、狭い局面であっても一瞬の動き出しと急激なギアチェンジを駆使したドリブルで打開してしまう。

 逆足のウイングのメリットを活かし、周囲の選手と連携しながら頻繁に中に入り込み、左サイドに顔を出すことも少なくない。その意味では、自由を与えられたほうが持ち味を発揮する選手といえる。

 ビジャレアルの右サイドは、クラブが輩出した“近年の最高傑作”の呼び声も高いサムエル・チュクウェゼが本職とするポジションでもある。恵まれた身体能力を活かした縦への推進力が武器のナイジェリア代表FWは、まだ線が細くフィジカルコンタクトを課題にする久保に比べてプレーの一つひとつがアグレッシブだ。

 カットインから左足でシュートを叩き込むプレーを得意とし、縦に速いサッカーを好むエメリの戦術的傾向との相性も良く、さらなる進化が期待される。ただそのプレーは単調さが否めず、引き出しの豊富さやテクニックの多彩さという点では明らかに久保に軍配が上がる。久保の加入は、チュクウェゼにとって脅威となりそうだ。

 久保のポジションの話を続ければ、メディアプンタ(トップ下)も候補の1つだ。この形だと久保とチュクウェゼの併用も可能となるが、ただその実現には2つの問題が横たわる。

 ひとつ目は久保自身のプレースタイルだ。この日本代表MFは、ペナルティーエリア角付近でボールを持つ形を十八番にしている。

 マジョルカでは前述したように周囲のサポート不足もあり、なかなかこの得意な形に持ち込むことができなかったが、それでも右サイドから持ち上がり、縦に仕掛けてからのクロスやそのままドリブルで切れ込んでのシュートでフィニッシュに絡み、相手守備陣の脅威になり続けていた。

 これがメディアプンタになると、その前提となるカットインしてドリブルする機会が限定されることになる。
 
 もうひとつの問題は、周りの選手との兼ね合いだ。ビジャレアルはジェラール・モレーノとパコ・アルカセルというラ・リーガでも指折りのストライカーを2人抱えている。久保と両FWとの共演は注目のひとつだが、久保をメディアプンタに置くと、自動的にチームの売りである2トップを解体せざるを得なくなる。

 あるいはジェラールを昨シーズンに新境地を開いた“偽の右ウイング”として起用するオプションもあるが、そうなるとチュクウェゼが弾き出されてしまう。一方で、久保、ジェラール、チュクウェゼはいずれも左利きで、そもそも3人の同時起用は左右のバランスという点で難しいという側面もある。

 もちろんそのデメリットを承知の上で、そのうちの誰かを左サイドに回す手もあるが、エメリが持ち味を相殺してまで起用に踏み切るかは疑問だ。

 もちろんメディプンタ起用はプレーゾーンを相手ゴールに近づけることにもなる。昨シーズンの久保はゴールへの積極性を欠いた嫌いもあり、シュートチャンスが増える点では当然右サイドに比べて利点がある。

 以上、こうした様々な選手の特徴を鑑みながら、戦術家として誉れ高いエメリはいかにして複雑なジグソーパズルを解くように各ピースをはめ込んでいくか。久保はその中で持ち味をアピールしながら、居場所を確保していかなければならない。

文●アドリアン・ブランコ(戦術アナリスト)
翻訳●下村正幸
 

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