「正直、勝てるとは…」CLベスト4進出のリヨンにフランス全土が騒然!! 快進撃を支えた会長の“本気”【現地発】

「正直、勝てるとは…」CLベスト4進出のリヨンにフランス全土が騒然!! 快進撃を支えた会長の“本気”【現地発】

ベスト4が決まりはしゃぐリヨンの面々。中盤のマジシャンだったウセム・アウアー(中央、キャプテンマーク)。(C)Getty Images



 リヨンがマンチェスター・シティを撃破し、史上初めてチャンピオンズ・リーグ(CL)準決勝にフランスの2クラブが進出。こちらは、一夜明けても全土が騒然としている。

 特に、リヨン旧市街とテロー広場は、パリのシャンゼリゼ大通りのお株を奪うように、クラクションと発煙筒が打ち上げられ、お祭りの舞台と化した。その興奮は明け方まで続いた。

 なにしろCLは、フランスの『L’EQUIPE』紙が発明、創設したコンペティション。ところが栄光はいつも他国クラブに捧げ、フランスのクラブが優勝したのは1993年のマルセイユ1回のみ。最後にやっとファイナルに進出したのも、2004年のモナコまで遡る。まして2クラブが揃って準決勝に進出したことなど、一度もない。

 史上初の快挙達成に、『L’EQUIPE』紙翌16日付の一面には、「FABULEUX !」(想像を絶する、途方もない、神話の域といった意味)という大見出しが躍った。リヨンのヒーローたちが、誰もいないサポーター席に向かって、逞しく勝利をアピールする写真も、歴史的だった。

 2面のメイン記事にも、「ベスト4にフランス2クラブが登場、気違いじみている」という文字が躍動。新型コロナウイルスを克服して前線に復帰したオピニオン・リーダー、ヴァンサン・デュリュック記者が健筆を振るい、意味深長なメッセージを発している。

「いまや、火曜日にパリ・サンジェルマン対RBライプツィヒ、水曜日にリヨン対バイエルンだ。フランス対ドイツの準決勝である。昔なら、あまりのセビリア、あまりのグアダラハラ、あまりのマラカナンのせいで、こういうのは好まなかったもの。だが、マルセイユでの欧州選手権(EURO)2016があった。そしてそれ以降も、リスボンは魔法のよう、という思考が出ている」

 セビリアとは1982年スペイン・ワールドカップの準決勝で、フランスが西ドイツとの死闘の末に敗北した伝説の試合を指す。グアダラハラとは1986年のメキシコ・ワールドカップだ。ここでもフランスは準決勝で西ドイツに0-2で敗れ、因縁とトラウマが深まった。そして、マラカナンとは2014年ブラジル・ワールドカップ。準々決勝でドイツに力負けした。

 EURO2016準決勝でようやくドイツを撃破し、その2年後にはフランスが世界王者に返り咲いた。したがってデュリュック記者は、もしかすると2018年に次いでフランスがCLでも「2つめの星」をもぎ取れるかもしれない、という密かなゲキを飛ばしていることになる。

 だが、もっと挑戦的だったのは若きキリアン・エムバペだ。リヨンがマンチェスター・Cを木っ端微塵にするや否や、ソーシャルネットでリヨンの勝利を拍手マークで称えながら、英語でこう発信したのだ。

 「FARMERS LEAGUE」

 これは「“農民リーグ”2クラブが準決勝進出さ」という痛烈な皮肉である。スペイン、イングランド、イタリアなどの選手たちがリーグ・アンを「農民リーグ」と馬鹿にしてきたのに対し、ここぞと反撃した“挑戦状”とも言える。

 バルサの壊滅とグアルディオラの惨敗は、「ティキタカ時代」の(一旦)終焉と、「パワフルでスピードに溢れるトランジッション時代」の到来を告げているのかもしれない。そして15年ぶりにリオネル・メッシとクリスチアーノ・ロナウドが消えた準決勝には、エムバペが登場することになる。

 だがパリだけでなく、リヨンの快挙も感動を呼んでいるところだ。なにしろユベントスを下し、マンチェスター・Cも下したのだから、勢いは凄まじい。

 フランス人で元ポーランド代表のリュドヴィク・オブラニャクは、テレビ『LA CHAINE L’EQUIPE』の人気討論番組で、「正直、リヨンが勝てるとはさすがに思わなかった。自分が間違っていたことを認めたい」と語り、選手とリュディ・ガルシア監督に脱帽した。

 また、元リヨンの監督で、フランス代表監督も務めたレイモン・ドメネクは、「彼らは、コロナでリーグが中断し、上昇中だったのにリーグ7位に甘んじることになった一件を、強烈に不当と感じてきた。だからモチベーションが凄まじかった。コンフィンヌモン(引きこもり)中もその後も凄まじいフィジカルトレーニングを重ね、彼らの脳裏は『勝つ』になっていた」と分析した。

 さらに、選手たちの大化けも大きな話題になっている。

 ここ3回の対戦でマンチェスター・Cを相手に4ゴールを決めたマクスウェル・コルネには、「Mad Max」(『L’EQUIPE』)の形容が与えられた。2ゴールを叩き込んでマン・オブ・ザ・マッチに選出された24歳のムサ・デンベレには、ついにレ・ブルー(フランス代表の愛称)の扉が開きそうな気配だ。そして、あらゆる面でまばゆかったウセム・アウアーには採点「9」がつき、メガクラブからのオファーが殺到するに違いない。

 もっとも採点「9」はアウアーだけではない。ガルシア監督にも「9」がついた。仇敵マルセイユのサポーターまでが、「今日の彼には脱帽だった」と発信したほど。「ビッグマッチで勝てないと言われてきた指揮官だが、ついに実力を証明した」との評価も相次いだ。

 思えば、リヨンのジャン=ミシェル・オラス会長は、リーグ・アンが新型コロナウイルスの影響で中断した際、狂ったようにその決断を非難しまくった。だがあるとき、さっと態度を切り替えて仕事にかかった。

 そして「リヨンにはまだ来シーズンもヨーロッパ舞台に登場できる可能性が残っている」と強調、「だが、みなが想像している手法で、ではないかもしれない」と語っている。

 当時、みなが想像していたその方法はパリSGと対戦したリーグカップ優勝だった。事実、彼らは延長戦まで粘り強く戦ってリーグ王者を苦しめた末、惜しくもPK戦で敗れた。つまり、この頃からリヨンは、本気でCL制覇を目指していたことになる!

「まさか……」とは思うが、今年は何が起きても不思議はない。しかもフランスは、ワールドカップ形式のトーナメントに強いのだ。さてリスボンの魔法は、実現するだろうか。

取材・文●結城麻里
text by Marie YUUKI

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