メッシの絶望と戦友たちの危機――高齢化と高年俸化が進むバルサの行く末【現地発】

メッシの絶望と戦友たちの危機――高齢化と高年俸化が進むバルサの行く末【現地発】

バイエルンに惨敗を喫し、うなだれるメッシ。(C) Getty Images



「レオのサッカーに関する知識量は驚異的なものがある。プレーすることにしか興味がないように見えるがとんでもない」(ホルヘ・サンパオリ政権時代のアルゼンチン代表のチームスタッフ)

「レオはサッカーを見るだけでなく、言語化する能力にも長けている。ピッチで何が起こっているかを瞬時に把握し、弱点を探り当ててしまう。彼を指導する監督は、見掛け倒しでは通用しない」(バルセロナのテクニカルスタッフ)

 そのサッカーに対する深い見識について周囲の人間がこう賞賛するリオネル・メッシは、今年2月の時点で「いまのままではチャンピオンズ・リーグ(CL)のタイトルまで届かない」と警鐘を鳴らしていた。ラウンド・オブ16第2レグでナポリを退けた(3-1)後も、その表情は晴れないままだった。チーム状況、キケ・セティエン監督の修正力を考えれば、バイエルン・ミュンヘンを下してベスト4に進出するのは夢物語だと10番は悟っていたのだ。

 結局、メッシの懸念した通り、バルサは試合に敗れた。しかも2-8という歴史的惨敗でだ。選手たちの動きは総じて重く、セカンドボールの争奪戦でも後手を踏み続けた(前半のファウル数はバルサの3に対し、バイエルンは12、前・後半トータルでは13対22)。この一戦でのバルサのスタメンの平均年齢は、29歳329日だった。ベテラン揃いのチームが残酷なまでに“ビタミン”不足を露呈したのだ。

 もはや戦力の刷新は待ったなしの状況にあるが、前監督のエルネスト・バルベルデの人心掌握術を持ってしても手を焼いたチームである。実行に移すのは並大抵のことではない。

「選手たちはチームの競争力が失われていると嘆いているが、それは彼らの責任でもある。戦力と照らし合わせて獲得したい選手をリストアップしても、彼らの高年俸が足かせになって動くに動けないんだ」

 クラブ内部からはこんな不満も漏れ伝わる。実際、バルサのトップチームに所属する選手の年俸総額は欧州のクラブで最高の3億9200万ユーロ(約490億円)。しかもそのうち平均年齢31.8歳のメッシ、アントワーヌ・グリエーズマン、ルイス・スアレス、セルヒオ・ブスケッツ、ジェラール・ピケ、ジョルディ・アルバの6選手に支払っている年俸だけで全体の70パーセント近くを占めている。

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 しかも厄介なのはその多くが長期契約を結んでいることだ。毎年一方的に契約を解除できるオプションが不随しているメッシを除いて、最短がルイス・スアレスの2021年で、ピケが22年、ブスケッツは23年、グリエスマンとジョルディ・アルバは24年までだ。

 そのルイス・スアレスにしても一定の出場試合数を満たせば、もう1年自動的に延長できるオプションが盛り込まれていることを自ら明かしており、当然彼の希望は契約を全うすることだ。唯一ピケがバイエルン戦後、退団をほのめかす発言したが、そもそもが高給取りのベテランの受け入れ先を探すのは、決して簡単なことではない。

 それはメッシも同様だ。前述の退団条項については期限となる5月31日までに態度を示さず、そのまま少なくとも来シーズン終了までバルサでプレーすることになったが、それとは別にクラブが契約延長(1年契約プラス1年延長オプション)を持ち掛けるも、話し合いは凍結状態にある。メッシの命を受けた父親で代理人のホルヘ・メッシが交渉にストップをかけたからだ。

 とはいえ、仮に退団することになっても、手取りで5000万ユーロ(約62億5000万円)を超える年俸を負担し、なおかつメッシの要求を満たす競争力を持ち合わせたクラブがこのコロナ禍で現れるとは考えられない。かといって同様の理由で、深刻な資金難に陥っているバルサが、メッシの希望するCL奪還に向けたプロジェクトを新たに立ち上げることも極めて困難な状況だ。

 ではバルサとメッシは一体どうすればいいのだろうか。クラブの関係者がこう証言する。

「新たにチームに来る監督がまずすべきことは、メッシと腹を割って話して、去就を心配する必要がないことを伝えることだ。ただそれは彼だけが持つ特権だ。他の選手はもっと働かなければならない。チームが変わるには当然、メッシの理解が必要になる」

 ここでクラブ関係者がいうその他の選手とはバイエルン戦で90分間通じて24回(そのうち9回は自陣からのパス)しかボールに触ることができなかった親友のスアレス、さらにはピケ、ジョルディ、ブスケッツといった面々である。
 
 アルゼンチン代表ではメッシのゴーサインを得て世代交代が敢行され、ロシア・ワールドカップを境にハビエル・マスチェラーノ、エベル・バネガ、ルーカス・ビグリア、ゴンサロ・イグアインといった常に行動を共にしていた選手たちが呼ばれなくなっている。

 バルサはメッシを説得し、1年でも長くプレーしてほしいと願っている。しかし問題は、まだそのプロジェクトは空っぽで、誰がリーダー役を担うかも明らかになっていないことだ。

 ただ時間が流れるだけで、メッシの絶望感が高まり、長年の戦友たちが置かれた状況は厳しさを増している。

文●ファン・I・イリゴジェン(エル・パイス紙バルセロナ番)
翻訳●下村正幸

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙の記事を翻訳配信しています。
 

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