青森山田に新たな有望株が台頭!中学校サッカーフェスティバルMVPのDF山本虎が目指す“高校デビュー”

青森山田に新たな有望株が台頭!中学校サッカーフェスティバルMVPのDF山本虎が目指す“高校デビュー”

大会では圧巻のパフォーマンスを見せた山本。青森山田高での活躍も期待できそうだ。写真:松尾祐希



 新型コロナウイルス感染拡大の影響で夏の全国中学総体は中止。中体連のチームに残された公式戦は一部の地域を除いた全国各地のリーグ戦や年末のU-15高円宮杯しかない。

 現状をなんとか変えられないか――。

「東京はTリーグが中止になったので、U-15高円宮杯しかありません。ただ、トーナメント戦なので負ければ終わり。公式戦がほとんどない状態で3年生は引退してしまうかもしれません。公式戦が全てではないとは思いますが、なんとか試合の機会を作ってあげたかったんです」(修徳中・吉田拓也監督)

 子どもたちに戦いの場を提供したい――。そうした想いを抱える中体連の指導者たちの意向を汲んだ人たちが新たな大会を企画。感染対策などに細心の注意を払った上で“全国中学校サッカーフェスティバル”の開催に漕ぎ着けた。

 静岡県の裾野市などで8月15日から17日にかけて行なわれた大会のレギュレーションは2回総当たりのリーグ戦方式。当初は8校で行なう予定だったが、現状を鑑みて、過去に全中を5度制している青森山田中、昨年の高校サッカー選手権で初の単独優勝を収めた静岡学園高の中等部、昨年の全国中学総体で初出場を果たした修徳中の3チームで大会が開催された。また、大会中は株式会社 SPLYZAの提供でアプリを用いた試合分析を行ない、チームの垣根を超えた意見交換会を実施。指導者だけでなく、選手たちもオンラインミーティングで試合を振り返るなど、今後につながる取り組みにもトライした。

 そんな全国の強豪3校が集まる中で、大会を制したのは青森山田中だ。初日に静岡学園中を4−0、修徳中を5−0で撃破。2日目も静岡学園中を6−1で下した。最終日の修徳中戦は対策を施され、相手の堅守を崩せずに苦戦を強いられる。しかし、粘り強く戦ってスコアレスドロー。青森山田中は準優勝の修徳中(1勝1分2敗)、3位の静岡学園中(1勝3敗)から勝点を積み上げ、4試合で15得点・1失点の圧倒的な強さで優勝を飾った。

 今大会を振り返り、青森山田中の上田大貴監督は「今大会が開催できたことにすごく感謝をしています。選手たちも普段戦えないチームと大会形式で競い合えたので充実した3日間になりました」と関係者に感謝の意を伝えながら、子どもたちの頑張りに目を細めた。
 

 青森山田の奮闘ぶりは個人賞にも現われ、同校が各賞を独占。MVPはチームの優勝に貢献したキャプテンのCB山本虎(3年)、得点王は4得点の荒木竜(3年)、佐藤大心(3年)、ベストGKには鈴木将永(3年)が選ばれた。

 とりわけ、今大会で目立っていたのはMVPを獲得した山本だ。昨年のナショナルトレセンに選ばれた逸材は182cmのサイズを生かしたプレーで存在感を発揮。空中戦ではほぼ競り勝ち、地上戦ではフィジカルの強さを生かした守りで相手に仕事をさせなかった。また、足もとの技術も水準以上。右足だけではなく、利き足ではない左足でも高精度のフィードを見せ、攻撃の出発点として違いを見せた。

 入学当初から将来性を高く評価されていた山本。1年次からトップチームでプレーしていたが、主軸として際立つプレーを見せるようになったのは最終学年を迎えてからだ。5月に3週間ほど高校生のAチームでトレーニングに参加。浦和レッズに入団が内定した藤原優大(高3)やU-17日本代表の松木玖生(高2)らと同じ時間を過ごし、成長のきっかけを掴んだ。本人は飛び級での体験談をこう振り返る。

「練習の雰囲気や練習の強度が中学生とは全然違いました。玖生さんはしっかりプレーしていない選手がいれば、その人を鼓舞して修正させていましたし、優大さんはプレーの質が高く、学ぶことがたくさんありました。特に同じポジションの優大さんはCBとして全ての能力を持っていて、的確なポジションを取りながらチームメイトも動かせます。そして、ヘディングも絶対に負けないんです。チームの中心を担う選手の在り方を教えてもらいました」

 山本の成長は上田監督も認めている。

「彼は高校で活躍するのはもちろんですが、日の丸を背負って戦える選手になってほしい。その中で藤原や松木と一緒にプレーした経験は、チームへ戻ってきた時に現われていました。キャプテンとしてどうすべきか、藤原のリーダーシップ、松木の振る舞いなどを知り、その後の行動やプレーに違いが生まれました」
 
 山本は今後、中学生のカテゴリーでプレーしつつ、在学中の“高校デビュー”が目標となる。指揮官も「本人も高校生の試合に出るつもりでいますし、チャンスが全くないわけではない」と、飛び級での活躍に太鼓判を押す。かつて柴崎岳(デポルティーボ・ラコルーニャ)や松木は中学生でAチームの公式戦に出場した。山本もそうした偉大な先輩たちの系譜を辿れるか。

「中3で玖生さんはプレミアリーグEASTの最終節に出場していました。自分も今年のスーパープリンスリーグに出たい」と意気込む有望株は現状に満足していない。今季中のデビューを目指し、さらなる高みを目指すつもりだ。

 青森山田中の優勝で幕を閉じた今大会。修徳中や静岡学園中にもキラリと光る才能を見せた選手がおり、チーム強化の面でも大きな意味があった。実際に静岡学園中の岡島弘高監督も、「全国レベルのチームと試合が行なえて、Bチーム同士のトレーニングマッチも含めていろんな選手がゲームを経験できました。こういう大会で全部員を強化できたので、本当にありがたかった」と大会の意義を実感したという。

 今回は3チームの参加となった。来年以降も大会の継続を考えており、さらなる発展を見据えている。“コロナ禍”で生まれた新たな取り組みが、今後の中体連を支える大会になる可能性は十分にあるはずだ。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

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