【栃木】田坂体制2年目で大変貌――目指すのは「容易に真似ができない走るサッカー」の完成

【栃木】田坂体制2年目で大変貌――目指すのは「容易に真似ができない走るサッカー」の完成

就任2年目の田坂監督率いる栃木は大きな変貌を遂げた。写真:徳原隆元



 昨季、残留争いに苦しんだ栃木SCが、J2屈指の堅守を武器に健闘し、見事な戦いを繰り広げている。
 
 19節を終えて11位で、総失点は15点。首位を走るギラヴァンツ北九州よりも4点少ない失点数で中位をキープ。昨季、下位に低迷したチームとは思えないほどの存在感を見せている。
 
 松田浩監督時代(2009〜2013年)から、ゾーンディフェンスを生かした堅守には定評があった。しかし、毎年のように夏場に失速、息切れする試合が目立って順位は伸びなかった。2016、2017シーズンにはJ3も経験。その後、J2に復帰しても、時折展開する好試合は長続きせず、かつての武器はさび付いたままだった。
 
 しかし、田坂和昭監督が就任して2年目。チームは大きな変貌を遂げる。ベースとなったのは、前年の残留争いから学んだ「戦う姿勢」だった。崖っぷちに立たされた2019年シーズンの終盤戦はアグレッシブな守備が安定的に機能し、残り10試合で勝ち点15を獲得。ぎりぎりでJ2残留を果たした。今季はこの戦いが基盤になっている。
 
 2020年シーズンは既存選手の意識が変わり、システムに順応できる新戦力も加入。その戦い方が、さらにブラッシュアップされた。

 開幕前、それまでの流れを継承しつつ、チームは「ストーミング」をメインの戦術を掲げた。中盤で激しいプレスをかけてボールを奪い、ショートカウンターに繋げるそのハードな戦術は、田坂監督が目指す「いい守備から、いい攻撃へ」の重要な指針になっている。
 
 ただ、戦術理解だけ高まればこなせる戦術ではない。選手たちは、試合終了の笛が鳴るまで走りきる走力、スタミナ、メンタリティーが要求される。17節、水戸ホーリーホック戦では後半アディショナルタイムに柳育崇が逆転の決勝ゴール。今季の栃木の戦い方を象徴する試合になった。
 
 また、守備では連動性を最大限に重視。ポイントとなるのは「スライド」だ。自分のマークを外して、別の選手へ素早くアプローチするアクションは、残り時間を計算していては鋭さが鈍る。
 
「ボールより走るサッカーを」
 
 そんな田坂監督の言葉も、冗談に聞こえないのが今の栃木の姿と言っていい。
 

 翌18節、栃木は徳島ヴォルティスに0−1の敗戦を喫した。5連戦のうちの4戦目は、今の栃木にとっては完敗とも言える内容で、3戦連続でピッチに立った有馬幸太郎は「チャンスは作れている。あとは(攻撃陣が)決めきらないといけない試合」と総括。さらに、「もっとがむしゃらにボールを追っていれば、相手もミスをしたかもしれない。アプローチのスピードや守備のスイッチの入れ方など、もう一度、修正しないといけない」と反省を口にした。
 
 近年、湘南ベルマーレの走り切る攻撃的サッカーは「湘南スタイル」と呼ばれている。田坂監督はそれになぞらえながら、「うちは『栃木スタイル』の構築を目指す」という。双方のスタイルは一致しないが、「容易に真似ができない走るサッカー」という意味では同じだ。
 
 2年目の田坂監督が完成を目指す「栃木スタイル」。その戦い方がJ2を席巻する日まで、チーム、そして選手は走り続ける。
 
取材・文●桜井 誠(下野新聞社)
 

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