【J1前半戦総括】圧巻の川崎。一方で気になる「降格なし」の負の影響

【J1前半戦総括】圧巻の川崎。一方で気になる「降格なし」の負の影響

8月8日のC大阪戦でリーグ新記録の10連勝を達成。大島(写真)らを起点に展開される川崎の攻撃は視覚的にも美しい。写真:Jリーグフォト



 今季のJ1リーグ前半戦、話題の中心は間違いなく「川崎」だ。

 再開直後から絶好調だった長谷川竜也が7月22日の仙台戦で怪我に倒れると、「ここからは俺に任せろ」と言わんばかりに大卒ルーキーの三笘薫が台頭。そして、負傷で出遅れた小林悠が戦列復帰後に点取り屋としての貫禄を改めて示せば、左膝前十字靭帯損傷および左膝外側半月板損傷からカムバックした中村憲剛が約10か月ぶりの公式戦(8月29日の清水戦)でいきなりゴールを決める。
 
 さらに9月9日の神戸戦ではプロ3年目の宮代大聖が劇的な決勝弾と、ヒーローが次々と出てくる展開はまるで王道のサッカー漫画を見ているよう。0−2から逆転した6節・仙台戦、1−2と追い込まれながらも残り10分でひっくり返した15節・神戸戦の戦いぶりは、エンターテインメントの極みと言えるものだった。

 ここまでの成績も、J1の18試合を消化して15勝2分1敗(55得点・16失点)と圧倒的。敗れたのは12節の名古屋戦だけで、むしろ目を引くのは堂々とした勝ちっぷりだ。FC東京に4−0、札幌に6−1、C大阪に5−2、清水に5−0、広島には5−1というように、勢いに乗った時のパフォーマンスは痛快そのもの。分厚い選手層に加え、優れた組織力も備えた今季の川崎は“クラブ史上最強”との見方もある。

 正直、現状で川崎のライバルは見当たらない。ロティーナ体制のC大阪は堅実ながらも爆発力に欠け、ここにきてまとまりが出てきたFC東京もACLの負担が懸念。上位につける名古屋も川崎ほど選手層は厚くなく、リーグ戦で目下6連勝の鹿島も首位との勝点差は17と厳しい状況だ。
 
 なにより残念なのはJ1連覇を狙う横浜の不振。昨季のリーグMVPである仲川輝人が14試合出場でわずか2ゴールという体たらくもあり、思うように勝点を稼げていない。各チームの「横浜対策」が進み、比較的あっさりと失点を重ねる現状では逆転優勝など夢のまた夢だろう。

 それにしても、川崎はなぜ強いのか。サッカーの質自体が高いのはもちろん、今季の特別ルール(5人交代制、降格なしなど)が追い風になっている部分もある。

 5人交代制については、C大阪のロティーナ監督が「川崎は素晴らしいクオリティを持っているが、交代選手がさらに質を高める」とコメント。実際、「レアンドロ・ダミアン OUT/小林悠 IN」という豪華リレーをはじめ(この逆パターンも)、主力クラスが次々と投入される交代策は、対戦相手にとって脅威でしかない。
 
 また「降格なし」により、ガチガチに守りを固めて勝点1を狙うチームがほぼいない。そのおかげで、川崎はだいぶ戦いやすくなった印象だ。圧倒的な得点力(J1の18試合で55得点は断トツの成績)が示すとおり、今の川崎に真っ向勝負を挑めばどうなるか。ここで細かく説明する必要はないだろう。
 

 「降格なし」で気になるのは、いま下位に低迷するクラブがどれほどの危機感を持って試合に臨んでいるかという点だ。今季を「準備期間」と位置付け、勝敗以上に戦術の落とし込みにこだわるスタンスを強く否定するつもりはない。ただ、降格が復活するだろう来季に向け、それがベストなやり方かと言えば疑問だ。
 
 来季、仮に残留争いに巻き込まれれば「自分たちのスタイル」などと言っていられなくなる。上位チームとの対戦では試合を壊してでも勝点1を狙う泥臭さが必須になるが、そうした必死さが今季の試合ではあまり見られないように映る。

 今季のJ1では、9月20日現在で指揮官交代がひとつもない。違約金などの問題があるのは理解できる。とはいえ、「降格なし」だからといって、これは果たして健全な状態なのか。「まだ大丈夫」とあぐらをかいているようでは、来季きっと痛い目に遭う。勝負事なのだから、最重要視すべきはやはり勝敗。「こういうシーズンだからこそ、勝負にこだわりたい」という長谷川健太監督(FC東京)のコメントは真理を突いている。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)
 

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