ブレーメン大迫勇也、今はただ辛抱の時。ドイツでの“逆風”は強いが…【現地発】

ブレーメン大迫勇也、今はただ辛抱の時。ドイツでの“逆風”は強いが…【現地発】

開幕戦以降、先発出場から遠ざかっている大迫。だが、その存在は必ず必要になるはずだ。(C)Getty Images



 開幕戦でブレーメンがヘルタ・ベルリンに1−4で完敗を喫した時、「またか」と肩を落としたファンも多かったことだろう。昨シーズンの悪夢がよみがえる。同じく大敗スタートを切ったシャルケとの第2節での試合は、早くも「降格危機へ足を滑らすのはどっちだ?」と囁かれるほどだった。

 だが、ブレーメンはそのシャルケ戦を3−1で勝利。続くビーレフェルト戦も1−0で破り2連勝を手にしている。開幕3試合で勝点6は、実に7年ぶりとなる好調なスタートダッシュだという。

 正直に言えば、内容的には褒められたものではなかった。この試合のボール保持率はわずかに35%。ボールを保持する時間帯でも、ビーレフェルトの組織だった守備を崩せずに、いたずらに自陣でパスを回すばかりだった。

 試合後の会見で、監督のフロリアン・コーフェルトもそのあたりを認めている。

「最終的には幸運もあったし、時間をやり過ごすような展開だった。まだ我慢が必要だ。自分たちで相手以上のプレーを、これから見出していかなければならない」

 ただ、そうした試合展開ながらも勝点3を取ることができたのは、間違いなく昨シーズンと比べてポジティブな要素だ。
 
 昨シーズンの序盤は、理想的なプレーを追い求めすぎていたことがブレーキの悪因となっていた。魅力的なサッカーを求めるのは、プロクラブとしてごもっともなコンセプトだ。でも、理想へと気持ちが傾向しすぎて、現実的な戦い方ができないのでは、リーグで生き残ることはできない。コーフェルトは昨季、苦しい残留争いを戦い抜いたことで、その優先順位を学んだのだろう。

「3試合で勝ち点6には満足している。昨シーズンはホームでほとんど勝てなかったからね」という振り返りは本音だと感じた。

 今シーズンはまず、守備組織の安定がポイントだった。ビーレフェルト戦では相手のキーマンとなる堂安律にボールが入らないよう、中盤センターからハーフスペースを徹底的にケア。相手に決定機をほとんど許せなかったことは収穫だろう。

 問題は攻撃面だ。3試合でお世辞にもうまく機能しているとは言えない。ビーレフェルト戦で決勝点となったレオナルド・ビッテンコートのゴールは素晴らしかった。左サイドから大きなサイドチェンジ。ゴール前に走りこんだ右SBジャン=マヌエル・ムボムがダイレクトで折り返すと、ゴール前でボールを受けたビッテンコートがワントラップからのボレーで決めた。
 

 とはいえ、それ以外でめぼしいチャンスは作れていない。今のままではいずれ、問題を抱えることもわかっている。フランク・バウマンSDは「勝ち点のためにこの2試合は戦った部分はある。これはスタートで、ここをベースに上積みしていける」と話している。その上積みの部分は、間違いなく確かな攻撃構築を作り出すことだ。

 そのためには、大迫の存在がきっと重要になってくる。大迫は開幕ヘルタ・ベルリン戦で先発起用されたが、目立った活躍ができないまま、前半だけでベンチにさがった。シャルケ戦では90分からの出場で、ビーレフェルト戦は出番なしだ。

 ドイツ・メディアは、ブレーメンファンが大迫のプレーや立ち振る舞いに満足いかず、ハーフタイムに交代を告げるアナウンスがあった際、歓声が上がったことを取り上げたり、矢面に立たせたりしている。
 
 確かにヘルタ戦では「気持ちが感じられない」「調子が悪い」「機能していない」と書かれてしまうようなパフォーマンスだったかもしれない。ただ、それを大迫一人の問題にするのは違う。なぜ、そうなっているかを考慮しなければならないからだ。

 思えば昨シーズン、大迫は苦しいチームの台所事情のなかで様々なポジションで起用され、それぞれのポジションでチームのために身体を張り、懸命なプレーをみせていた。調子を崩した時期もあったが、それでも大事な終盤にチームを支える素晴らしいプレーで残留への原動力のひとつになっていた。

 ボールが集まり、周囲がすぐサポートし、パスの出口をどんどん作り出すことができれば、大迫は非常に重要な選手になる。チームの基本的な守備組織やポゼッションでのパス回しが安定してくれば、大迫は間違いなく生きる。

 守備ライン間でボールを引き出し、起点を作り、チャンスをクリエイトする能力はチームトップレベルなのだから。コーフェルト監督もそのことはよくわかっているはず。

 いまはまだ、辛抱の時。

 適材適所で起用され、また本来のプレーが発揮できる日が必ず来るはずだ。
 筆者プロフィール/中野吉之伴(なかの きちのすけ)

ドイツサッカー協会公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に「サッカー年代別トレーニングの教科書」「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」。WEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」(https://www.targma.jp/kichi-maga/)を運営中