【川崎】改めて示した強さの理由。リーグ新記録の11連勝達成に見えた“進化”の証

【川崎】改めて示した強さの理由。リーグ新記録の11連勝達成に見えた“進化”の証

後半には中村(写真右)、ジェジエウのコンビネーションで2ゴールを挙げた川崎。名古屋を3-0で下し、リーグ新記録の11連勝を達成した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)



[J1第23節]川崎3-0名古屋/10月18日/等々力

 強い。

 新型コロナウイルスの影響によりイレギュラーなシーズンとはいえ、これほどこの言葉が似合うチームが、Jリーグに登場したのも久しぶりのことではないか。

 川崎が名古屋を下し、J1新記録となる11連勝を達成したゲーム。改めて今季の川崎の強さが象徴される試合となった。

 後半に点差が付いたとはいえ(前半終了間際に川崎が先制)、前半は両チームの特色が表われた非常に濃密な、観ている側は時間を忘れるような緊張感のある内容だった。

 川崎のスターティングメンバーで印象深かったのは、戦前にはジョーカーとしての起用が予想されたドリブラーの三笘薫、経験豊富なパサーの中村憲剛を、鬼木達監督がスタメン起用した点だ。

 試合2日前の取材で、名古屋戦のキーポイントを訊くと「やはり先制点」と話していた指揮官は、練習での好アピールも鑑み、序盤から一気に名古屋を責め崩す布陣を採用したのだろう。このゲームでは大島僚太、小林悠らが不在。さらに相手は堅守で知られる名古屋で、リーグ前半戦では0-1と唯一黒星を付けられた相手でもある。中盤から決定的なパスを出せる中村、そして個人で局面を打開でき三笘に、家長昭博、レアンドロ・ダミアンらと“名古屋崩し”の任務を授けたと見ることができる。

 もっとも戦術大国イタリア出身の指揮官、フィッカデンティ監督のスタイルが浸透している名古屋である。試合の入りこそ三笘の突破力を活かしてチャンスを作ったが、徐々に相手の強度の高い守備に押されるようになり、守備網を広げられ、ギャップを突かれて攻め込まれるシーンも増えてくる。20分過ぎからは、どちらかと言えば名古屋のペースだったと言えるだろう。

 現に古巣対戦となった名古屋のキーマン、阿部浩之も「(前半終了間際に)失点するまでは良かったと思います。前半はやられる場面も少なかったので」と振り返る。

 ただし「懸ける想い、今日は勝ちたいという想いが非常に強かった」(谷口彰悟)、「同じ相手に二度負けるのは個人的にも、チーム的にも、ありえない」(守田英正)と、名古屋へのリベンジに燃えていた川崎は、以前のゲームを基にしながら周到な準備を用意してきた。そして、事前の策をピッチで高レベルに表現できるのだから、今の川崎は強いのである。
 
 今季から4-3-3を採用している川崎だが、敗れた名古屋戦のように、逆三角形で構成する中盤においては、アンカーの脇がウィークポイントになり、その修正はシーズンを進めながら行なってきた。ただ前半途中には鬼木監督が、中盤のバランスについてなにやら指示を送る。ここのシーン、中村は次のように説明する。

「僕が(インサイドハーフで)出る時は、(前の)守備はトップ(CF)の選手と2枚、4-4-2、もしくは4-2-3-1みたいな形でスタートしますが、(今日は)ダブルボランチの守田(英正)と(田中)碧の脇のところを締め切れずに使われていたので、これも前日に練習していましたが、(守備時の立ち位置として)4-3-3、4-2-3-1とどちらも練習していて、途中で変えて、役割がハッキリして人にもボールにも行けるようになりました」

 その言葉どおり、状況によっては、中盤の3人がフラットに並ぶような形も見え、名古屋の4-2-3-1の中盤の3枚「トップ下の阿部+2ボランチの米本拓司、稲垣祥」、そしてアタッカー陣に対応している。

 相手を見て柔軟に立ち位置を変えるのは、川崎の攻撃の真骨頂だ。ディフェンスの穴を的確についてゴールを奪うわけだが、今季はより守備の柔軟性も光り、名古屋戦も臨機応変に戦い、相手の勢いを削いだわけだ。

 ちなみに対戦相手の視点として、名古屋のCB中谷進之介は「(両ウイングの)三笘(薫)選手と家長(昭博)選手が予想通りに僕たちセンターバックを消しにきたので、もう少しサイドを使ってというところがありましたが、上手く使えなかったのがひとつありました。また取ったボールに対してフロンターレさんの切り替えにちょっと押し込まれてしまったのかなとも思います」と述懐。

 さらに今オフに川崎から名古屋へ移籍し、古巣と等々力で対戦した阿部に話を聞くと「僕からすれば紅白戦みたいな感じでした」と“らしい”冗談で笑わしてくれた後に、こう続けてくれた。

「スイッチが入った時の人数のかけ方っていうのは、去年僕がやっていた時以上に迫力があるというか、どんどん人が出てきていたと思います。そのなかでも、みんなが何が必要かっていうのを理解しながらやっていたと思いますし、それに対してうちは、そういう役割分担じゃないですけど、出ていく人が少なかったり、そういうところのポジション取りの精度や速さに、やっぱり差があったかなと思います」

 優勝請負人として川崎でリーグ連覇、ルヴァンカップ初優勝に貢献し、古巣のことを熟知している男の言葉が、端的に今季のチームの進化の様子を表わしているだろう。

 さらにこの試合でチームの発展ぶりを改めて象徴したのが、名古屋から3得点すべてを奪ったセットプレーである。

 1点目は「前日の練習で、キッカーを(田中)碧と分担するところがあって、目先を変えるところで碧に蹴ってもらいました。自分とは球種が違うので、そこは準備したことがハマったかなと思います」(中村)と、田中の右CKをニアで谷口が頭ですらしてファーで待っていた三笘がプッシュする形で決めている。

 また2点目はゴールやや左から中村がファーサイドにFKを送り、ジェジエウがヘッド、そのボールがDF中谷に当たりゴールへ。さらに8分後には左CKを得ると中村はショートコーナーを選択。「アドリブに近い形。目先を変える意味で、中の選手も分かっていなかったと思います」と中村の咄嗟の判断で、近くにいた守田からのリターンをこの司令塔はダイレクトでクロスを入れると、再びファーサイドで待ち受けていたジェジエウが今度は美しい放物線を描いたヘッドで3点目を決めた。

 ちなみに2点目のFKは、21節の仙台戦で中村がバー直撃のFKを蹴り、「決められるように練習します」と話していた位置と近いポジション。その布石はあったのか疑問をぶつけてみると、「(名古屋の)ランゲラック選手の頭の中で、自分が仙台戦で打ったシュートのイメージがあったかもしれないです。中で待っている選手も直接あるかもしれないと考えると、最初に下がるはずなので、いろんな駆け引きも含めて合わせようと思いました。距離が遠いというのもありましたが」と話す。
 さてセットプレーの強化で思い出すのは、新型コロナウイルスで約2か月、本格的なトレーニングを積めず、リーグ再開へ急ピッチで準備を進めていた当時の鬼木監督の言葉だ。この頃からチームはセットプレーの強化に乗り出しており、「大きな武器になりますし、ピンチにもなりますので自分たちもしっかり取り組もうと、選手たちにも話しています。過密日程の中では鍵になるはずです」と指揮官はその重要性を語り、実際にリーグ再開後にセットプレーからの得点が増加した際には、こうも続けていた。

「(今季から加わった)戸田(光洋)コーチを中心に、コーチ陣が練ってやってくれています。選手も重要性を分かってきていると思いますし、リーグが再開する前から話していましたが、セットプレーは本当にキーになると思っています。攻守でしっかり点を取りたいですし、点を取らせないことを続けたいです」

 改めて名古屋戦後に指揮官にその話を振ると、人柄を象徴するように、スタッフ陣への感謝を述べつつ、手応えを語る。

「相手のウィークポイントや自分たちのストロングポイントを、戸田コーチを中心に、スタッフがいろいろと練ってくれました。それを実行できたことが素晴らしいと思います。(詳細は)なかなか多くを言えることはないですが、こういうビッグマッチではセットプレーは必ずチャンスにもピンチにもなると思っていたので、そういう意味では、相手に対して変なセットプレーも与えずに頑張ってくれました。相手がしっかりとした守備に対して、セットプレーで点を取ることでダメージを与えることができました。試合に対して、試合巧者というか、そういうものが出せているのではないかと思います」
 

 4-3-3を導入し、様々な面で進化を果たす今季の川崎。その強さの秘訣を、以前、鬼木監督に尋ねたことがあったが、指揮官は自らの想いを確認するように口にしてくれた。

「トレーニングを見ていて、これだけやればやはりこうなるよなと。そしてこういう風にしていかないといけないんだろうなと。自分が結果に導かなければいけないほどの取り組みを、選手たちがしてくれているので、それに応えるだけのことをやらなくちゃいけないという想いはあります。

 それに新しいことを今年はチャレンジしていますが、培ってきたことを全部壊すわけではないですが、勝ってきたなかで、新しいことにチャレンジするのは選手も大変だと思うんです。でも、それに向かった時に、逆にこれだけパワーを出せるのかという想いがありました。チャレンジ精神を今すごく感じています。そこはやはりパワーになるなと。

 そして選手一人、ひとりの試合に出たい、メンバーに入りたいという強い想いが、ゲームに現われるんだなと思っています。だから毎日の練習も楽しいですし、ゲームは勝つことも負けることもあるので、結果の部分は仕方のないこともありますが、選手が自信を持って戦えているのが、今の結果につながっていると思っています」
 そうした指揮官の期待に応えるように、選手たちも名古屋戦後に印象的な言葉を残している。まずはチーム最年長の中村に、リーグ新記録の11連勝の意味を質問した際に話してくれたエピソードだ。

「11連勝という記録に挑戦できるのは、自分たちが勝ってきたからで、そういう試合を楽しめるようにやっていこうとオニさん(鬼木監督)は話していました。僕らはこの後、日程が空くので、今日やらないと、いつやるのと。ここでやらない奴らはいないんじゃないかという話もあって、僕らもそのつもりでしたし、全員の力で集中して、達成した新記録だったと思います。

 2回、10連勝するチームもそうそう出てこないと思います。前にも話をしましたが、この10連勝の間も、何連勝を目標というのは正直、今日の試合まではありませんでした。記録のかかった試合は、そこをボカすことなく、しかも前回負けた名古屋さん相手に絶対に勝って決めるんだと。それを達成できて良かったです。今後もチーム全員、スタッフも含めた総力だと思います。ここから一つ一つ積み上げていきたいです」

 そしてこう続ける。

「皆で繋いでここまできました。オニさん先頭に、スタッフ陣の分析も含めて、どんどん試合が来る中で選手も入れ替わりながら、勝った次の試合で自分がスタメンになったりと。それをつなげていくのはプレッシャーもあったと思います。ただ試合に入ればそのプレッシャーも勝ちにこだわって、ベクトルを合わせて結果を残せました。
 
 対戦相手も2巡目に入って対策を講じてくるので色々ありましたが、試合の中で修正しながら、微調整しながら、選手交代で出た選手が点を取ってくれたり。皆が目の前の試合を勝つことだけを考えてここまでこられました。選手間の競争。自分が出た時は絶対に勝ちたいという気持ちをそれぞれが出している。

 自分も今日は新記録がかかった中でスタメンで出られてモチベーションもすごく上がりました。そこでチームの勝利に貢献できた。今は自分の例えですが、それがいろんな選手に要因があった。本当に自分ができなければ、次の試合はメンバー外になり得る。そういうチーム内での争いは、自分がここまで所属してきた中で一番レベルが高いと思っています」

 また今季からキャプテンを務める谷口は、「僕らは連戦の最後の試合。ここは疲れもあるだろうけど、歯を食いしばってやるしかないと思っていました。そういう試合をきっちりと勝てたのは自信になります。今日は、シンプルに勝ちたい気持ちが強かったです。一回負けた名古屋に勝ちたい。失点数も少ないチームだし、そういう相手に対してたくさん点を取りたいと思っていました。そこは受け身にならずにアグレッシブにやれました」と試合後に充実の表情を浮かべる。

 変化を恐れずにチャレンジを続け、勝利のために最大限の準備をする。そしてチーム全員で想いを共有し、柔軟に変化していく。

 歴史に名を残すチームになりそうな今季の川崎は、満足をせず、常に前だけを見続けている。記録とともに、彼らが見せるサッカーがどこまで進化するのか、今は楽しみで仕方がない。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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