久保建英はなぜELで輝けたのか? 戦術アナリストが今後の可能性と課題を分析!「最適なポジションに、最強のライバルが…」【現地発】

久保建英はなぜELで輝けたのか? 戦術アナリストが今後の可能性と課題を分析!「最適なポジションに、最強のライバルが…」【現地発】

ELシワススポル戦で1ゴール・2アシストの活躍をみせた久保。(C) Getty Images



 久保建英がビジャレアル入団後、初めてスタメンを飾ったヨーロッパリーグのシワススポル戦。ウナイ・エメリ監督は連戦に備えて主力を温存したが、その指揮官のローテーション導入が結果的に久保に理想の環境を用意し、1ゴール・2アシストの活躍をもたらした。

 明らかになったのが久保は鋭いドリブルを武器にしているとはいえ、サイドに張り付かせる選手ではないこと。センターから右サイドにまたがるゾーンを幅広く動き回りながら、ボールを引き出し、前に向いてプレーしてこそ持ち味を発揮する。この日、4−3−3の右ウイングに配置された後半よりも4−4−2のセカンドトップに入った前半のほうが活躍を見せたのは必然であった。

 前述したように、エメリ監督の大幅なローテーション導入により、このシワススポル戦は、アレックス・バエナ、カルロス・バッカ、マヌ・トリゲロスと多くのバックアッパー格の選手がスタメンに名を連ねた。

 一見すると、久保にとってはマイナスに映る事態だが、実際はその逆だった。たとえばダニエル・パレホが中盤に君臨する状況では、久保も意識的にそのパスの受け手となるプレーが求められる。将来的には、バレンシアでのロドリゴ(現リーズ・ユナイテッド)がそうだったように、久保もパレホと強力なホットラインを形成する可能性もあるが、現状ではそこまでの信頼関係を築けておらず、チーム不動の司令塔の存在は自由を奪う要因にもなる。

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 しかしこの日はそうした制約から解放され、組み立てに顔を出しながら、攻撃を加速させるなど伸び伸びとプレーしていた。これはパレホに加え、ジェラール・モレーノも欠場したことで他の選手の意識が自然と久保に向いたこととも無関係ではなく、またその分、プレー範囲が広がり、臨機応変にポジションを変えながらボールを要求。カットインする時も、味方の選手と重なり合うような場面はなかった。

 エメリ監督は久保の起用法を見直すべきだろう。4−2−3−1を採用しないのであれば、トップ下のポジションは自ずとなくなるが、4−4−2におけるセカンドトップは大きな可能性を秘めている。ちなみにこの日の久保のポジションを4−2−3−1のトップ下と見なす向きもあるようだが、バッカとほぼ横一列に並んでいた守備時の配置を見れば、4−4−2のセカンドトップのほうがしっくりとくる。

 言うまでもなくセカンドトップはエースのジェラール・モレーノが得意とするポジションだ。しかし、エメリ監督はサイドアタッカーには守備面でも高い貢献を求め、事実、久保も後半は右SBのルベン・ペーニャを再三に渡ってサポートしていた。少なくとも“エメリ・ビジャレアル”では、久保は4−3−3の右ウイング(順足となる左ウイングはなお相性が悪い)よりも4−4−2のセカンドトップのほうが適性がある。

 さらによく言われているように久保の課題は、得点力の向上だ。これを広義に解釈すると、フィニッシュの精度、シュートへの意識の低さ、ゴール前でパスを呼び出すオフ・ザ・ボールの動きのアグレッシブさといった能力が含まれる。

 久保は生粋の点取り屋ではない。すなわちゴールセンスは生まれながらに備わっているわけではない。したがって試合や練習を通じて鍛え、磨き、進化させていくしかない。
 しかしこの弱点は、ゴール近くでプレーすることで、ある程度はカバーされる。実際、この日の久保はバッカが相手CBを引き付けることで、自身へのマークが軽減され、いつも以上にゴール前でボールを呼び込み、さらにそこからパスとドリブルを織り交ぜてフィニッシュに絡んでいた。こぼれ球に素早く反応した1点目は、まさにその一例だった。

 セカンドトップでプレーすると言っても、右サイドに流れる傾向が変わるわけではない。左利きである久保にとって最もゴール方向に身体の向きを作りやすいゾーンであり、実際、そこから頻繁にバイタルエリアに顔を出していた。

 もちろんゴール前ではそれだけ選手も密集するが、重心が低く、身のこなしがしなやかで、ボールスキルに長けた久保にとってはむしろ好都合。サミュエル・チュクウェゼのように広いスペースを走破するよりも、こうした狭い局面を打開するプレーを得意にしているのだ。

 バッカの2点目をアシストしたプレーは、一瞬の隙を突いてドリブルやラストパスを駆使してチャンスを演出する久保の魅力が凝縮されていた。
 シワススポルは決して守備の強いチームではなく、久保に対するマークも緩かった。ハイリズムで撃ち合いになった試合展開も追い風になった。

 ただ後半、エメリ監督による4−3−3へのシステム変更に伴い、久保のポジションが右ウイングに移動すると、途端に攻撃面での存在感が低下した。むしろ自陣深くまで戻って同サイドのサイドバックと連携して守備に奔走する場面のほうが目立っていたのは既述した通りだ。

 それが4−4−2であれば、セカンドトップというポジションが提供される。ジェラール・モレーノの壁は厚く、ポジションを奪取するのは大きな困難が伴うが、久保がどのポジションでどういった環境を用意すれば輝くかが明確に明らかになったことが、ビジャレアルがこのシワススポル戦で得た大きな収穫であった。

文●アレハンドロ・アロージョ(戦術アナリスト)
翻訳●下村正幸
 

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