“レバンドフスキ超え”の29歳ストライカー、アンドレイ・クラマリッチは一体何が凄いのか?【現地発】

“レバンドフスキ超え”の29歳ストライカー、アンドレイ・クラマリッチは一体何が凄いのか?【現地発】

ブンデスで最高評価を受けているクロアチア代表クラマリッチ。日本代表FW岡崎慎司とはレスターで同僚だった。(C)Getty Images



 第5節まで終了している今季のブンデスリーガで一番高い評価を受けている選手は誰だろうか?

 専門誌キッカーの採点によると現時点でトップはホッフェンハイムのクロアチア代表FWアンドレイ・クラマリッチだ。ここまで13ゴール・3アシストをあげているバイエルンFWロベルト・レバンドフスキよりも高い評価となっている。平均採点は「1.5」だ。

 ドイツでの採点は1点が最高、6点が最低だが、よっぽどすごいプレーをみせないかぎり1点台がでることはない。勝利に貢献する働きをした選手でも、2〜2.5点が通常だ。

 昨シーズンはけがの影響もあり、リーグ出場は19試合にとどまったクラマリッチはそれでも12ゴール・4アシストと結果を残し、スコアポイント16はブンデスリーガ全体で18位に入っていた。そして、新たな20-21シーズンは開幕から絶好調。1節ケルン戦では3ゴール、そして2節バイエルン戦では2ゴールを挙げる活躍で、絶対王者に公式戦33試合ぶりとなる土をつけた。3節フランクフルト戦では1−2で敗れたものの、18分に長谷部誠ら相手守備陣に囲まれながら巧みな動きと技術で見事なゴールを奪ってみせた。

 前監督アウフレッド・シュロイダーは「クラマリッチは我々のレバンドフスキだ」と絶賛し、SDのアレクサンダー・ローゼは「クラマリッチがピッチにいたら、まったく別のゲームになる」と絶大な信頼を口にしていた。
 
 それだけに、代表ウィークで新型コロナウィルスの陽性が判明し、4節ドルトムント戦に出場できなかったのは本人にとっても、クラブにとっても、とても痛い事態だった。ホッフェンハイムSDアレクサンダー・ローゼが思わず「場合によっては今後代表戦に選手を出すかどうかを検討しなければならない」と恨み節を口にするほどに。(第5節ブレーメン戦もベンチ外となっている)

 では、クラマリッチの何が優れているのだろうか。特にオフェンス選手は、攻撃時に相手選手間にできるスペースにポジショニングすることが求められる。戦術用語的には、「相手選手の背後を狙う」というのが一つの原則になるが、試合では相手選手は当然警戒するし、机上の理論通りにいつでもフリーになれるわけではない。

 いつどのタイミングでどのスペースにどこから顔を出すのか。
 そしてボールを受けた段階で次のプレーへのアイディアをもっているかどうか。
 そこで選手の評価は変わってくる。

 クラマリッチは、常に走り回っているタイプのプレーヤーではない。ただ、相手選手が視線を外したり、注意が自分から離れたりしたスキを見逃さずに、すっと味方からパスを引き出せるところへ顔を出すのが非常にうまいのだ。

 さらに技術的にも優れ、確かなビジョンを持っているので狭いスペースでもパスを引き出し、相手をいなし、自分に引き付け、味方のチャンスへつなげることができる。加えて、得点力も抜群なのだから、チームにとってこれほど頼りになる選手はいないだろう。

 現監督のセバスティアン・へーネスも「非常にバリエーションが豊かな選手だ。守備ライン裏のスペースに抜け出す動きに優れ、相手守備間のスペースに顔を出すのもうまい。技術レベルが高く、シュートは強烈だ。それもどちらの足でも、ヘディングでも点が取れる」と最大限の評価をしている。

 「ゴールへの嗅覚が鋭い」という言葉でストライカーの資質を評価されることが多いが、クラマリッチは「ゴールへの道から逆算したポジショニングが取れる」選手といえるだろう。

 そんな彼の獲得をバイエルンが画策しているというニュースが流れたのは、移籍市場が閉まる直前の時期だった。絶対王者はレバンドフスキのバックアップというだけではなく、オフェンシブなポジションならどこでもプレーできるクラマリッチを貴重な戦力として、獲得を狙っていると報じられた。
 
 だが、ホッフェンハイムもそう簡単にエースを手放すつもりはない。そしてクラマリッチ自身もホッフェンハイムにおける自身のステータスに誇りと喜びを感じている。クラブは22年まで契約が残るエースの移籍金に、最低ラインとして4000万ユーロ(約50億円)を設定した。そのため最終的にバイエルンは獲得を断念し、パリSGから移籍金0円でマキシム・シュポ=モティングの獲得を決断することになった。

 クラマリッチにとっては、クラブ内における立ち位置だけではなく、プレー面においてもへーネス監督のもとチームとして手ごたえのあるプレーができることは、大きなプラス材料だろう。へーネスが「クラブにとって非常に重要な選手だ。違いを生み出すことができる選手というのは色々いるが、彼は本当にコンスタントに違いを作ってくれる。チーム、そしてクラブに欠かせない。レジェンドとなる日も近いだろう」と全幅の信頼を置いている。

 そのクラマリッチとともに、狙うはチャンピオンズ・リーグ出場権獲得となる4位以内。ライバルクラブは多いが、背番号27が違いを生み出し続けることができれば、目標達成も夢ではないはずだ。

 筆者プロフィール/中野吉之伴(なかの きちのすけ)

ドイツサッカー協会公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に「サッカー年代別トレーニングの教科書」「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」。WEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」(https://www.targma.jp/kichi-maga/)を運営中
 

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