スペイン代表では異色の「フィジカルモンスター」に脚光!イニエスタらとは“対局”にあるが、活かさない手はない【現地発】

スペイン代表では異色の「フィジカルモンスター」に脚光!イニエスタらとは“対局”にあるが、活かさない手はない【現地発】

アメフト選手のような体躯で圧巻のスピードを誇るトラオレ。(C) Getty Images



 10月のインターナショナルウィーク期間中に、フル代表デビューを遂げたばかりで、まだ出場が3試合にしか過ぎないにもかかわらず、各メディアでトップを飾ったのがアダマ・トラオレだ。その扱いはまるで超大物ルーキーの世界に向けてのお披露目のようだった。

 24歳にして所属クラブのウォルバーハンプトンで主力として君臨しており、決して無名の選手ではない。バルセロナのファンにとっては、フベニール時代のプレーぶりが記憶に新しいかもしれない。

 しかし、これほど注目されたのはここ最近の目覚ましい成長に加え、スペインでは希少価値の高い、NFLのフルバック顔負けの筋肉質の身体を活かしたプレースタイルのインパクトの高さに他ならない。

【動画】圧倒的すぎるスピードとフィジカルの強さ!アダマ・トラオレの圧巻プレー集
 
 現在のスペイン代表は主に3つの世代に区分される。チームを引っ張るのはセルヒオ・ラモス(レアル・マドリー)、セルヒオ・ブスケッツ(バルサ)、ヘスス・ナバス(セビージャ)の3選手だ。この重鎮組をチアゴ・アルカンタラ(リバプール)、ダビド・デ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)ら中堅が追随する。

 そしてルイス・エンリケ監督の積極的な抜擢も追い風にここにきて急速に勢力を広げているのが、ミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)、パウ・トーレス(ビジャレアル)、ダニ・オルモ(RBライプツィヒ)、ファビアン・ルイス(ナポリ)、ミケル・オジャルサバル(レアル・ソシエダ)、ロドリ(マンチェスター・シティ)、セルヒオ・レギロン(トッテナム)、アンス・ファティ(バルサ)、エリック・ガルシア(シティ)といった若手だ。

 こうした年齢を問わない登用からは実力重視の方針を貫こうという指揮官の強い決意が伺える。それは各選手の所属クラブのバリエーションの豊かさにも表れており、そうした傾向に乗って招集されたのがアダマだった。

 スペイン代表は華麗なパスサッカーを武器に2008年から2012年にかけて黄金時代を築いた。シャビ、アンドレス・イニエスタ、ダビド・シルバ、サンティ・カソルラ、ファン・マヌエル・マタら小兵プレーヤーがその中核を担ったが、筋骨隆々の爆速ウインガーのアダマは、まさに対極をなす存在だ。

 長い間、サッカー界はジョゼップ・グアルディオラによって完成されたバルサスタイルが時代の最先端を走った。スペイン代表の隆盛もその流れに乗ったものであり、そうした文脈の中ではアダマのような選手は存在が希薄だったかもしれない。

 しかし、サッカーは変わった。トレンドはハイプレス戦術へと移行し、進化した守備戦術を攻略するには、パスを繋ぐだけではなかなか難しくなっている。そしてアダマは、その自慢のフィジカルとスピードで相手DFを粉砕することができる。
 
ハイプレス戦術流行を背景にスペースが前方に広がった状況で、アタッカーがDFに対して1対1を挑むという場面が最近の試合では増えている。アダマは優雅なドリブラーでもボールの魔術師でもない。彼の特技は誰よりも速く走り、強靭な身体で相手DFをなぎ倒しゴールに向かって突進することで、そうした能力は現代サッカーではことさら重宝される。
 
問題は、その活用法だろう。スタメンで起用するのか勝負どころでスーパーサブとして投入するのか? スペイン代表のプレースタイルにこのままスムーズに適応できるのか? これから代表で長くプレーできるのか、それともその活躍は一過性で終わるのか?
 
アダマは特殊な選手だけに、よけいにその長所、短所は極端になる。ただその一長一短がどんなに奇をてらったものであっても、貴重なオプションであることは間違いなく、スペイン代表の中に入るとその希少価値はさらに高くなる。このフィジカルモンスターの才能をフル活用しない手はないはずだ。
 
文●サンティアゴ・セグロラ(エル・パイス紙)
翻訳●下村正幸
 
※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙のコラムを翻訳配信しています。
 

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