中村憲剛の不在を乗り越え力を付けた川崎。“自立”と“復活”で掴んだ二度の連勝記録の意味

中村憲剛の不在を乗り越え力を付けた川崎。“自立”と“復活”で掴んだ二度の連勝記録の意味

優勝を決めたG大阪戦では86分からピッチに立った中村。3度目のリーグ制覇を飾り、今季限りでスパイクを脱ぐことになる。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)



 チームは中村憲剛不在を織り込み、選手たちは自立の必要性を感じていた。シーズン開幕時、中村は昨年11月に左膝を負傷し、長期離脱中だった。

 例えば中村と同様にトップ下やインサイドハーフを担う脇坂泰斗。沖縄・中城村で2月5日に行なわれた北九州との練習試合でのこと。2本目にキャプテンマークを巻いた脇坂は中村の不在を前提に「そういう状況(中村不在)を置いておいても、やらないといけないというか、昨年試合に出てある程度結果は出ましたが、全然満足してないですし、もっとやらないといけない。フロンターレのあのポジションはもっと結果を出さないといけないところなので」と矢印を自らに向けていた。攻守において、チームを引っ張れるよう成長しなければと決意を新たにしていた。

 2月15日のルヴァンカップ清水戦を前にした練習。鬼木達監督は守備のセットプレー時に新キャプテンの谷口彰悟に仕切るよう指示している。この件について谷口彰悟は「リーダーシップを取らないといけないですし、しっかり周りに伝えるという作業はより一層やっていかないと」と話す一方、小林悠は「そういう時に声を出すのはオレと憲剛さんと、ショウゴであったりした」と話す。ところが直前のプレーで谷口はミスしていたのだという。

「セットプレーでショウゴがオレのマークに付き切れなかった」と説明する小林は、だから谷口が「言いにくかったのかなと思います」と述べる。ただ、それは試合が始まれば切り替える。ミスしていようが、気恥ずかしかろうが、必要な時は声を出す。そうした姿勢が必要だと小林は説明していた。

「皆が言わないといけない。それは今日思いましたね」

 セットプレー時の声掛けという部分でも、チームは中村不在を織り込んでいった。

 新任のキャプテン・谷口は、リーグ開幕の鳥栖戦を前にリハビリに専念していた中村についてこう話している。

「これまで先頭を走ってきた選手なので。本人が悔しい気持ちはあると思いますし、ただそれでもしっかり託してくれるというか、頑張れよ、と言ってくれるのでそういう気持ちには応えたいですし、安心して観戦できるような試合にしたいですね」
 
 前キャプテン・小林から谷口へのキャプテンの継承と、新システムを実装した川崎はコロナ禍によるリーグ中断を経て快進撃を見せる。リハビリ中の中村の不在を感じさせないほどの高い機能性を示したチームは、J1新記録となるリーグ10連勝を飾った。その快進撃を、中村はどう見ていたのか。

「正直、前の10連勝が途切れた時は、自分の中ではまだ試合に絡んでなかったんで、すげえなっていう風に見てました」

“外”から見ていた中村は、8月29日の清水戦で戦線復帰。この試合でいきなりループシュートを決めて存在感を示す。すでに樹立していたJ1新記録の10連勝を上回る12連勝が始まったのはこの清水戦から。つまり「憲剛さんのため」ではなく、中村の完全復活がチームの力になっていたということ。

 その中村が復帰したことで、練習中からプレーの質がさらに向上。中村自身が直接試合に関与して、12連勝を下支えした。キャリア初のバースデーゴールが決勝点となり、12連勝目となったFC東京戦などはその最たるものであろう。

 事実として中村がチームにもたらした影響は大きかった。その中村のラストシーズンを、圧倒的な強さによるリーグ制覇で飾ることができた。チームは今後、いくつかの記録の更新を狙いつつ、未戴冠の天皇杯を目指すこととなる。元日の勝利によって、笑顔で中村を送り出したい。

文●江藤高志(川崎フットボールアディクト)

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