史上最速の戴冠劇はなぜ可能だったのか? 圧巻の強さを誇った今季の川崎を読み解く3つのポイント

史上最速の戴冠劇はなぜ可能だったのか? 圧巻の強さを誇った今季の川崎を読み解く3つのポイント

2年ぶり3度目の優勝は、4試合を残しての史上最速V。川崎は圧倒的な強さでシーズンを駆け抜けた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)



 川崎フロンターレが4試合を残してJ1リーグ史上最速で頂点に立った。優勝を決めた25日のG大阪戦は今季の強さを象徴するような圧巻のパフォーマンスを披露。家長昭博のハットトリックなどで5-0の大勝を飾っている。なぜ今季の川崎はここまで独走できたのか。

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■戦術変更
 2020年のJリーグを圧倒したフロンターレの強さの理由が4−3−3の導入にあるのは論をまたない。前線からの守備にしても攻撃にしても、前方に人数をかけやすくなったこのシステムが連勝街道を支えたと言えるだろう。

 守備のバランスについてはシーズン中に調整を施したが、再開後しばらくはボール支配率の高さでカバー。選手個々の対応力で難しい場面も乗り切った。2017年の就任から4季目となる鬼木達監督は選手たちにハードワークを求め続け、日々対人能力を磨いてきた。だからこそ数的同数になったとしても川崎の選手たちは強さを見せる。

 昨季王者の横浜も取り入れた4-3-3システム。最終的に導入を決めたのは、今の川崎にこのシステムに適応できる選手がいたからだと鬼木監督は説明する。

「大事なのは自分たちの選手にどれだけ当てはまるか。選手がいないとできないことなので」

 ポイントはワイドアタッカーだったという。

「今年はワイドなアタッカーが多かです。そのあたりで決断したというのはあります」

 左右のウイングについては、まさにタレント豊富だ。序盤に点を重ねた長谷川竜也は怪我による長期離脱があったが、その穴を齋藤学、三笘薫が埋める。右サイドには家長昭博に続き旗手怜央が控える。そして攻守でハードワークできる選手たちの中でも特に大卒ルーキーふたりの活躍が光った。

 シーズン当初から出場機会を増やした旗手は、チーム戦術を理解するサッカーIQの高さで欠かせない選手に成長。得点機に関わる多さと、複数のポジションをこなす器用さでチームに貢献した。

 そして三笘のインパクトも見事だった。局面を一気に打開するドリブルはリーグ随一の水準で、サイドアタッカーとして相手に脅威を与えた。また、29節終了時点で12得点と、新人選手の得点記録更新が期待されている。ある意味規格外の活躍を見せているといえる。

 その戦術変更を下支えしたコーチ陣にも着目が必要であろう。今季からトップチームに加わった寺田周平、戸田光洋はもちろん、選手の体調を管理した篠田洋介フィジコを始めとするメディカルチームの尽力も並大抵のことではなかった。

 

■5枚の交代枠と選手層
 圧巻のリーグ制覇のもうひとつの要因が5人交代制だろう。鬼木監督は当初、この5枚の交代枠の利用について、イメージをし切れていなかった部分があるという。ただリーグ戦再開直前の6月27日に行われた湘南との練習試合が契機になり、どう5枚交代枠を活用するのか、考え方を切り替えたのだという。

 交代枠を駆使した相手に「対処できずに点を取られてしまったということがあった」と振り返る。この試合を境に5枚の交代枠の重要性を認識した鬼木監督は、公式戦でフル活用してきた。

 7月4日の鹿島とのリーグ再開初戦以降、10月14日の22節・広島戦で4枚の交代にとどめるまで、5人の交代枠をフル活用し続けた。結局、優勝が決まるまでの29試合中、4枚の交代にとどまったのは前述の広島戦と25節のFC東京戦の2試合のみ。ちなみに広島戦については負傷者が出たことにより、予定外に交代枠を使わざるをえなかったという事情があった。

 もちろんただ単に5選手を入れ替えればいいという話ではない。5枚を交代しても結果を出せるだけの選手層の厚さがあったことが川崎の強さの源でもあった。

 いわゆる2チーム編成を組めるような戦力を抱えて、過密日程で選手のやりくりに苦しむライバルたちに対して、盤石の姿勢でシーズンを戦えたことになる。

■チームマネジメント力
 チーム戦術の変更がハマり、分厚い選手層を活かす5枚の交代枠をフル活用する。最終的にその環境を活かせたのは、鬼木監督のチームマネジメント力があったからこそだ。

 指揮官は選手たちにこう語り続けていた。

「楽しもう」と。

 その背景には「現役が終わって思うのは、楽しんでやれる時がやっぱり選手としては一番躍動している」との想いがある。

 プレッシャーを楽しみに変える。サッカーを楽しむことが、ゴールにつながり勝利をもたらす。それが結果的に記録的な戴冠劇へとつながった。

 今季の川崎は2節からリーグ新記録の10連勝を記録。達成感が出てもおかしくはなかったが、選手たちは鬼木監督の言葉に導かれ、新たな記録に挑戦する。守田英正は鬼木監督の言葉を次のように記憶している。

「自分たちが成し遂げたこの10連勝という記録を自分たちでもう一度越えよう」

 12節の名古屋戦で今季初黒星を喫するも、選手たちを奮い立たせた指揮官の言葉。川崎は再度連勝記録に挑戦し、25節のFC東京戦までに記録更新となる12連勝を達成。優勝を目前に足踏みはしたが、今季のリーグを圧倒し、史上最速で優勝を決めた。圧倒的な強さによる王座奪還劇だったと言えるだろう。

取材・文●江藤高志(川崎フットボールアディクト)

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