【明神智和】日本代表から学べ!「手本のようなシーン」としてピックアップした二つのプレーとは…

【明神智和】日本代表から学べ!「手本のようなシーン」としてピックアップした二つのプレーとは…

明神氏がシンプルななかにも素晴らしい技術が詰まったプレーと評する遠藤(中央)から久保(17番)への縦パス。(C)JFA



 シドニー五輪や日韓ワールドカップでも活躍した元日本代表MFの明神智和氏は、現在ガンバ大阪ジュニアユースコーチとして活躍している。日本代表での戦いを知り、育成の現場を知る明神氏が、育成年代の子どもたちへ、この10月、11月に行なわれた日本代表の欧州遠征で見られた学ぶべきプレーを解説する。
 
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 今回私が注目したプレーは二つあります。両方とも遠藤航選手のパナマ戦後半でのプレーになりますが、一つ目は、60分のPKを獲得した直前のシーンです。

 左サイドでスローインを受けた遠藤選手が一度吉田麻也選手にパスを出す。吉田選手から植田直通選手へ。それを遠藤選手が中央の位置に移動しながら、植田選手からパスを受け、シンプルに2タッチで久保建英選手へ縦パスを入れる。そこから久保選手のスルーパスが南野拓実選手に渡ってPKを獲得した場面です。

 まずシンプルにボールコントロールからのパスが素晴らしかったのですが、その直前のボールの受け方、ポジショニングも絶妙です。遠藤選手はしっかりと相手の中盤と前線の二つのラインの間を取り、素早い判断から強めのパスで久保選手の左足につけて「前を向け」というメッセージがこもったボールを送りました。
 
 久保選手に関しても、あのファーストタッチだけで相手に向かっていくところに置けているので、対面していた相手DFがどうしても久保選手に対応しなければいけない。そうなることで、南野選手の走るスペースが生まれました。
 
 もしあのボールコントロールで足下に入れてしまっていたら、前を向くのに時間がかかって、相手DFから違う対応をされたと思いますし、少しでも外に開いたような形でコントロールしていたら、逆にDFがそちらに対応して、南野選手へのパスコースは生まれなかったでしょう。シンプルにコントロールしてパスをするという一連の流れが高度に凝縮された素晴らしいプレーでした。
 
 私は現在、主に中学1年生を見ているのですが、実際に技術的な部分、「止めて蹴る」といった形は追求しやすい部分で、みんなしっかりとやろうとします。しかし、ゲーム形式の練習や実際の試合になってくると、そこに相手がいて、味方もいる。そのなかで“状況判断”をして練習している技術を出すのは非常に難しくなります。
 
 二つ目は、同じくパナマ戦の68分50秒あたり、GKから組み立てて最後は遠藤選手の縦パスに三好康児選手が反応したシーンです。
 
 植田選手や柴崎岳選手を経由し、最終的に遠藤選手から三好選手に縦パスが入るまでに、だいたい14本ものパスが繋がっていて、そのなかで遠藤選手は2回そのパスワークに絡んでいます。
 
 その間の50秒ほどで、遠藤選手は映像で見る限り19回も周りを見ていました。かつて中田英寿選手もやっていたいわゆる「首を振る」という動作です。
 
 それだけ周りの情報を自分のなかに入れて、刻一刻と状況が変わるなかで、相手と味方ともちろんボールの状況を見て、どこにスペースがあるかを確認しながらプレーしていることが窺えます。
 

 前述の“状況判断”をする上で前提となっているのがこのプレーです。
 
 特に注目する点は、最初に柴崎選手から右サイドでボールを受けた時。この時、遠藤選手は自陣の方に身体を向けてターンして、シンプルなバックパスで吉田選手を使っていました。
 
 その時は自分をマークしている相手をパスが来る前にしっかりと見て、わりと近くにいたので、安全に相手とボールの間に身体を入れて、吉田選手にバックパスをしています。その判断も素晴らしいですし、さらに最終的に植田選手から受けたパスから三好選手に縦パスを入れるのですが、その時はパスを受ける直前に相手からバックステップで1メートルくらい離れています。
 
 バックステップで離れたタイミングでパスを要求し、それを2タッチで入れるのですが、その時は後ろに首を振っていました。バックステップで相手から離れた分、前方の状況は把握できているけれど、分からない後方を確認したという事です。それは、この状況でボールを奪われる場合はどういう可能性があるのかを考えた上で、一番危険性が高い相手FWからのプレスバックを警戒したものと考えられます。
 
 そのうえで、確保できた時間で「止めて蹴る」という選択をしていました。バックステップで得たスペースと時間がなければその後の縦につけるパスは送れなかったと思います。
 
 練習時に選手たちには「動きながらプレーすることが大事だよ」とか、「ボールもらう時に止まったままだったらボールは受けられる?」などと伝えていますが、そういう普段から言っていることの重要性を再確認できたプレーでした。
 
 遠藤選手もこれまで自陣でボールを奪われた経験もあったと思います。その場合はどのような形で奪われているのかという蓄積もあったので、ボールコントロールの技術であったり後ろを見るという判断ができたのだと思います。
 
 遠藤選手の凄さは基礎技術の総合力にあるという言い方もできると思います。特に中学生くらいだと相手ディフェンスもいなくて、止めて蹴るだけの練習というのはつまらなかったりするんですよ。ただ、そういう基本的な技術が試合の中でどれだけ良いプレーを生むかとか、どれだけ大事かというところが、今回の試合を観て伝えたいポイントでした。
 

 さらにその先には、なぜそのファーストタッチになったのか、なぜそこに止めるのか、なぜそのパススピードなのか、なぜ右足に、左足にパスを出したのか、その全てに意図がないと、代表戦のようなレベルが上がった試合ではゴールまでたどり着けません。
 
 その部分は意識してトライするだけで変わってくるはずです。ファーストタッチにどんな意図があるか。その後に味方にパスを出した時、そのパスにどんなメッセージがあるのか。出し手のメッセージと受け手の要求が合致すると良いプレーに繋がっていきますし、合わないのなら、たとえボールを失わないとしてもミスと捉える、そんな厳しい要求があっても良いのではないでしょうか。
 
 10月と11月の代表戦を比べるとチームの意思疎通も上がってきていると感じます。特に鎌田大地選手は10月の2試合よりも、11月のパナマ、メキシコとの試合の方が格段に連携が良くなっていました。短期間でもこれほど変わるのだなと感じました。
 
 代表レベルになれば、パスが30センチずれるだけで、たとえ味方に繋がっていても次の展開が大きく変わってしまう。そこで前を向けるのか、前を向けなくて後ろにしかプレーできないのか。最終的にゴールへ向かう可能性はその30センチだけで大きく変わってしまいます。
 
 今回のプレーで、遠藤選手がどれだけ止めてから蹴るまでの時間が短いのか、どれだけ周りを見ているか。普段の練習でやっているパス&コントロールの技術は、実際に試合でこう使うんだよという、お手本のようなシーンでした。
 
【著者プロフィール】
明神智和(みょうじん・ともかず)/1978年1月24日、兵庫県出身。シドニー五輪や日韓W杯でも活躍したMF。黄金の中盤を形成したG大阪では2014年の国内3冠をはじめ数々のタイトル獲得に貢献。現在はガンバ大阪ジュニアユースコーチとして活躍中。

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