【群馬】「初めてゴールを決めて泣きそうになった」引退発表の林陵平が”今季初得点”に抱いた想い
2020年11月30日 05時30分 サッカーダイジェストWeb

町田戦で今季初得点。31試合目にして決めた移籍後初ゴールでもあった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)
[J2第37節]町田0−3群馬/11月29日/町田GIONスタジアム
ザスパクサツ群馬は11月29日、J2の37節でFC町田ゼルビアと対戦。3−0の快勝を収めた。
宮阪政樹、大前元紀へと続くゴールラッシュの口火を切ったのは、この日、6試合ぶりに先発した林陵平だった。
34分に左SBの飯野七聖が相手DFに倒されて得たPK。このキッカーを務めた林は、豪快にゴール中央へと蹴り込み、チームに値千金の先制点をもたらす。
ボールがゴールへと突き刺さるのを見届けた林は、両耳を塞ぐポーズをしながらベンチの仲間のもとへ駆け寄っていく。
そしてチームメイトやスタッフたちも、林の頭を叩き手荒く歓迎した。誰もが、待ってましたと言わんばかりに彼のゴールを祝い、まるで自分のゴールかのように喜んだ。
「あんなに仲間が喜んでくれて、初めてゴールを決めて泣きそうになりました。あんなに集まるなんて予想もしていなかったですね。周りの選手も俺も泣きそうになったよって言ってくれて、すごくありがたいです」
この町田戦の10日前、11月19日、林は今季限りでの現役引退を発表した。そんな34歳のストライカーにとって、町田戦のPK弾は群馬移籍後初ゴールだった。しかも、今年3月に加入してから、なんと31試合目にしてシーズン初の得点だ。林自身だけでなく、チームメイト誰もが待ち望んだ瞬間だった。
奥野僚右監督も「彼がゴールしたあとの選手たちの喜び方を見れば、みなさんも承知いただけると思います。それくらい、彼自身にもそうですし、チームメイトみんなが切望していた貴重な1点でした」と、試合後に嬉しそうに語っていたのが印象的だ。
もっとも12年間のプロキャリアで、林がここまで焦りを抱いたシーズンもなかったという。
「プロ生活のなかで、ここまでゴールを決められなかったことがなかったので、正直すごく苦しかったです。やはりFWなので、ゴールに生きているところがありますから。でもこういうゴールを決めることによって、今までの感情とかが報われるなと感じている。本当に良かったです」
明治大を卒業後、東京V、柏、山形、水戸、町田、群馬と6クラブを渡り歩き、積み上げたリーグ戦通算ゴールは、今季の町田戦のものも含めれば、66にものぼる。
ゴールに生きている――。林はゴールを決めることでサッカー選手としての自分を実感する生粋の点取り屋なのである。だからこそゴールの瞬間にすべての感情を爆発させて笑顔をはじけさせる。
そして満開の笑顔とともに披露するのが、いまやお馴染みとなった欧州選手のゴールセレブレーションだ。欧州サッカーフリークと知られる林は、毎回様々な選手のセレブレーションを真似しては、ファン・サポーターを楽しませてきた。
町田戦のゴール後に見せた耳を塞ぐ仕草も、ブルーノ・フェルナンデス(マンチェスター・ユナイテッド)のセレブレーションを模倣したものだ。
「古巣戦だったのでゴールセレブレーションしようか迷いました。もちろん町田へのリスペクトの気持ちはありますから。でも引退まで残り6試合で、生セレブレーションを待っていてくれる人もいたので、その意味でさせていただきました」
次は誰の真似だろう――。敵味方問わず、林がゴールを決める度にサポーターは胸を弾ませる。単なるゴールだけでなく、そうしたパフォーマンスでワクワクさせてくれる選手はなかなかいない。そんな一流のプロフェッショナルであり、一流の“演出家”が現役を退くのは、やはり寂しいものだ。
それでも林は「まだ何個かストックがある」と明かし、「あと5試合あるので、今日を皮切りにまたゴールを決められるように頑張りたいです」と意気込む。
林のゴールセレブレーションを、あと何回見られるだろうか。残りのストックを大放出してくれることを期待したい。
取材・文●多田哲平(サッカーダイジェスト編集部)
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