「移籍考慮は時期尚早だ」なぜ南野拓実は出場機会を与えられないのか? リバプール番記者に訊く“リアル評”【現地発】

「移籍考慮は時期尚早だ」なぜ南野拓実は出場機会を与えられないのか? リバプール番記者に訊く“リアル評”【現地発】

リバプールで苦戦が続いている南野拓実の現状をリバプールの番記者はどう見ているのか? (C) Getty Images



 今シーズン開幕当初、南野拓実の機は熟した。そう感じ取っていた。

 今年1月にオーストリアの強豪レッドブル・ザルツブルクからリバプールに移籍した南野だったが、昨シーズンは自身が思い描いていた活躍ができなかった。プレミアリーグ王者の証となるメダルを得たものの、リーグ戦で先発出場したのは2試合のみ。ゴールとアシストはいずれもゼロでシーズンを終えた。

 とはいえ、ユルゲン・クロップ監督は日本代表FWの苦戦を意にも介していなかった。指揮官は常々、南野の獲得は長期的なプランの一つで、新しい国と言語、プレースタイルに慣れるまでは時間がかかるものだと話していた。フィジカルが求められるイングランド・サッカーに慣れ、チームが求める戦術にも対応していく必要があったからだ。

 そして迎えた今夏。南野はプレシーズンで好調を維持した。ウェンブリー・スタジアムで行なわれたプレミアリーグ開幕の前哨戦であるアーセナルとのコミュニティーシールドでは、途中出場ながらゴールを決めて見事アピールに成功した。

 この時、クロップ監督は南野についてこう語っていた。

「私は常に、タキ(南野の愛称)には時間が必要だと話していた。今、その状況は大きく変化した」
 
 この指揮官の言葉通り、25歳の日本代表FWは自信を深めていた。シーズン開幕間もない9月24日に行なわれたリーグ・カップ3回戦のリンカーン・シティ戦では2ゴールを挙げ、チームの大勝(7-2)に貢献した。

 しかし、だ。シーズン開始から約3か月経過した現時点での南野は、リバプールの主力選手の役割からほど遠い位置にいる。直近のブライトン戦(プレミア第10節)で先発フル出場を果たしたとはいえ、それ以前のリーグ戦では、合計58分の出場時間を与えられただけ。また、チャンピオンズ・リーグでの先発機会も格下のミッティラン戦のみで、その際も60分しかプレーせずに、途中交代を言い渡された。

 なぜ、好調だった南野はなかなかプレータイムを得られないのか? それは、彼が世界最高水準のFW陣を擁するリバプールで、世界でも指折りの実力を持つ3トップとレギュラー争いをしようとしているからだ。

 モハメド・サラー、サディオ・マネ、ロベルト・フィルミーノとレギュラー争いをしながら、控えにいる現状は決して恥じることではない。そもそも南野は、“スカッドプレーヤー”として獲得されている選手でもある。

 彼はチームの層を厚くする存在であり、3人から早々にレギュラーポジションを奪うとは考えられていない。ザルツブルクが設定した725万ポンド(約10億1500万円)という契約解除の違約金は破格の安さで、リバプールには痛みをほとんど伴わない投資とさえ言えた。
 

 加えて、南野をさらに厳しい状況に追いやったのが、今夏にウォルバーハンプトンからやってきたディオゴ・ジョッタの存在だ。リバプールが総額4500万ポンド(約63億円)と高額な移籍金を投じて獲得したこのポルトガル代表FWは、最高の形でレッズでのキャリアをスタートさせた。

 スピード、力強さ、スキル、直線的なプレーに、味方に決定機を作り出して、自身もゴールを量産する非凡なゴールセンス――。ここまでジョッタが見せているプレーは非の打ち所がなく、彼は抜群の貢献度でチームの勝利に絡んでいる。イングランド国内、しかもプレースタイルの似たウルブスで過去3シーズンもプレーしていたことが、有利に働いたのは間違いないだろう。

 そして、南野の数十倍のスピードでリバプールにフィットしたジョッタはいまや、リバプールの4番手、いや不動の3トップと並ぶアタッカーと見なされている。他のライバルを軽々と抜き去り、クラブに欠かせない「カルテット」の一部にまで飛躍したのだ。ゆえに南野に与えられる出場時間の減少は必然とも言える。
 
 しかし、関係者から得た話を総合すると、クラブはここまでの南野に満足しているという。控えめだが、サッカーに臨む姿勢は模範的で、非常に勤勉。ボールを保持しているか否かに関わらず、クロップ監督が求める戦術にも馴染んできており、何よりも本人には向上心があり、助言を聞き入れて意欲的に挑戦する姿勢を崩さない。

 また、南野は英語も上達し、チームメイトとのコミュニケーションにも慣れ、確実にスカッドの一員として認められている。ジムワークを積極的にこなして、プレミアリーグ特有の当たりの強さにも慣れてきているのは確かだ。

 とはいえ、現在の南野にとって最大の問題は、やはり出場機会が圧倒的に少ないことだ。

 プレー機会がなければ、当然、輝くチャンスもなく、いざ出場した際に本人にかかるプレッシャーも増大。実戦から離れ、動きが鈍重になるうえに、結果を求めて空回りしがちになるのは避けられない。先日のブライトン戦がまさにそうで、ボールタッチが硬く、ボールを失う場面が悪目立ちしていた。

 この日本代表にとって、今が踏ん張りどころ。自己憐憫に陥らないことが何よりも大切だ。シーズンは長く、短期間でも巡ってくるチャンスの数は少なくないだろう。個人的にも、その機会は必ずやってくると考えている。真摯にトレーニングに臨み続け、必要とされた時に、実力を証明することが肝要だ。

 クロップは南野について、最近、こう述べている。

「調子を落としているわけではないし、タキはトレーニングで、いいパフォーマンスを見せている。だが、このチームはとても強いチームで、そこに入り込むのは容易ではない。タキは素晴らしい青年で、トップレベルの選手だ。だからこのチャレンジに、彼は意欲的に向かってくれるはずだ」

 この指揮官の言葉にもある通り、南野は間違いなくリバプールに適した選手だ。先述の通り、ジョッタの台頭によって、南野のアタッカーとしての優先順位は落ちた。本人もこのことにフラストレーションを募らせているのは間違いないが、今後のキャリアを考慮しても、現時点で移籍を考えるのは時期尚早だ。最低でも今シーズン終了までは待つべきだろう。
 
 繰り返しになるが、南野はスカッドの厚みを増すためのバックアップのオプションの一人として獲得された選手だ。しかしながら、サッカー界は何が起こるか分からず、劇的な速度で状況が変化する場所でもある。

 それゆえに彼のアンフィールドでの挑戦が終わったわけでは決してないし、決してそう見るべきではない。最低でも、クロップがそう考えていない以上は、飛躍のチャンスはまだまだ巡ってくると考えるべきだ。

文●ジェームズ・ピアース(The Athletic記者)
Text by James Pearce/The Athletic

訳●松澤浩三
Translation by Kozo Matsuzawa

【著者プロフィール】
ジェームズ・ピアース(The Athletic記者)
15年近く地元紙『Liverpool Echo』のエース記者として活躍。2000年代半ばから担当となったリバプールの裏の裏まで知り尽くし、辛辣ながらフェアな論評で、歴代の監督と信頼関係を築いた。今夏からはヘッドハントされたスポーツ新興メディア『The Athletic』で執筆活動を行なっている。

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