パリSGの新指揮官ポチェティーノが、直ちに乗り越えるべき“4つの課題”。レオナルドSDとの関係は…【現地発】

パリSGの新指揮官ポチェティーノが、直ちに乗り越えるべき“4つの課題”。レオナルドSDとの関係は…【現地発】

現役時代にプレーした古巣へ監督として帰還したポチェティーノ。(C)Getty Images



 新たに監督となったマウリシオ・ポチェティーノ率いるパリ・サンジェルマンが現地時間1月3日、新年初練習を行なった。

 フランスではクリスマスから招聘が規定路線になっていたため、29日の正式就任までの間にこのアルゼンチン指揮官の注目点が数多くピックアップされていた。現地のファンが最も期待感を膨らませているのは、その人間性だ。

 現役時代のポチェティーノとプレーしたパリSGのOBジェローム・アロンゾは、「(パリの)ロッカールームにヒューマンなスケールをつけ直してくれるのを期待している」(現地紙『L’EQUIPE』)と語り、こう強調した。

「何かが欠けているんだよ。彼こそが、その“欠けている鎖の輪”かもしれない。いまのパリSGは天才少年のスクールみたいに見える。汗が必要だ。彼は努力の味、労働の味をもたらせると思う」

 ヒューマンで同時に天性のリーダーシップをもつポチェティーノには、師事した選手たちも敬意を表している。また、フランスではディエゴ・マラドーナとの微笑ましいエピソードも語り継がれている。

 21歳のポチェティーノが生き神様のようなマラドーナと友情を結び、「テレビを消してきてよ」と言った。そして神様に「物怖じしない性格だ。マウリシオは俺にテレビを消しに行けと言ったんだから。ヤツ、俺に命令しやがった!」と唸らせたエピソードだ。
 
 だがそれにも増して注目されているのは、メソッドだ。何しろマルセロ・ビエルサの愛弟子である。

 フランス代表の本拠地クレールフォンテーヌではある日、トッテナムのムサ・シソコとタンギ・ヌドンベレが大きな話題を振り撒いたという。ふたりがポチェティーノのトレーニングについてリアルに語り聞かせたため、チームメイトが盛り上がったというのだ。トレーニングがあまりにきついため、「○○はゲロゲロ吐き、○○は眩暈を起こして……」という話だった。

 本当にそんなメソッドがいまのパリで通用するのか――。これが人々の最大の関心事になっている。だが、かつてポチェティーノに師事したバンジャマン・スタンブリはこう断言する。

「ネイマールとキリアン・エムバペが目指すのは勝利。彼らはハイレベルのコンペティターだ。だから努力を通してこそ勝利が得られるのだと納得すれば、彼らも努力するはずだ」

 だが、現在のパリSGでは、直ちに4つの課題が求められてくる。第1に、グループをすぐにアスリート面で復活させる課題だ。

 今シーズンのパリは、フィジカル・プレパレーションを欠いたままスタート。新型コロナウイルスの感染者も続出し、ネイマールをはじめ10人もの選手をケガで失ったまま、バカンス入りした。またエムバペら数人が、筋肉損傷寸前の「レッドゾーン」にあった。

 猛烈メソッドを誇るポチェティーノが、彼らをどう本来のアスリートに戻していくのか。3日後の6日には、早くも初試合となるサンティティエンヌとのリーグ戦が待っている。

 第2は、プレースタイルを植えつけることだ。

 クラブがカタール支配下になって以来、これに成功したのは、4−3−3を定着させたローラン・ブランのみ。後継のウナイ・エメリは自分のスタイルに選手たちを嵌め込もうとしすぎて、2016年9月に主力が「カウンター路線はやめてほしい」と4−3−3復活を要求。さらにチャンピオンズ・リーグでバルサの大逆転を負けを喫した「ルモンタダ」により、求心力が瓦解してしまった。

 トーマス・トゥヘル前監督も当初はハイインテンシティのスタイルを掲げ、エムバペやアンヘル・ディ・マリアにも厳格に対応した。だが、CLでマンチェスター・ユナイテッドに不覚をとった辺りからうまくいかなくなり、最後はスター選手の個人技頼みになってしまった。

 果たしてポチェティーノは、明確なアイデンティティやプレースタイルを植えつけることができるのか。スターたちはどう反応するのか。
 
 第3は、選手たちのリスペクトを獲得するという課題。

 フランス代表主将のユーゴ・ロリス、イングランドのスーパースターであるハリー・ケインらがこぞってリスペクトし、ポチェティーノとチームを結ぶ役割を果たしてきたのは周知のとおり。だがいまのところ監督としてのタイトル歴がないため、やや未熟でエゴばかりが強いパリでもそれができるのかどうかが問われてくる。また南米選手が多い点も、罠になり得る。南米組を直ちに掌握しつつ、スターたちを巧みにマネージメントしなければならないことになる。

 そして第4に、スポーツディレクターとの信頼関係という課題だ。

 トゥヘル前監督がレオナルドSDに斬られたのは明らか。だが、レオナルドが呼びたかったのはマッシミリアーノ・アレッグリだったという。つまり、ポチェティーノもトゥヘル同様、レオナルドSDの人選ではない。一方トッテナムでポチェティーノは、選手リクルーティングで一歩も譲らなかった。となればレオナルドとポチェティーノは、リクルーティングで対立する可能性もあるということになる。

 ふたりが共存できるかどうかは、パリの根幹にもかかわってくるだろう。再びトゥヘル解任劇のような結末が起きれば、クラブそのものと、カタールのイメージが悪化するだけである。

 こうした諸点をリストアップしながら、フランス人はいま、ポチェティーノの初指揮を興味津々で待っているところだ。2月16日には早くも最初の正念場がやってくる。CLラウンド・オブ16のバルセロナとのアウェー戦である。またしてもバルサにやられて敗退するようなら、彼の行く先は思いやられることになるだろう。

 だが逆に、もしパリを初のCL優勝に導くようなら、クラブOBでもあるポチェティーノはファンに支えられ、誰よりも強くなるに違いないのだ。

取材・文●結城麻里
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