家財整理を主業務とする企業が日本のスタジアムにもたらすものとは?【三浦泰年×経営トップの無限トーク】

家財整理を主業務とする企業が日本のスタジアムにもたらすものとは?【三浦泰年×経営トップの無限トーク】

三浦泰年氏とエコトップ社代表取締役の伊藤氏。写真:塚本凜平(サッカーダイジェスト写真部)



『サッカーダイジェストWeb』で連載コラムも好評の元日本代表DF、三浦泰年さんが企業経営トップを直撃する新連載。自らも日本とブラジルをはじめとした多文化交流を企画する会社を経営する三浦さんが、毎回独自の視点でビジネス展開を図る起業家に話を伺う。第1回は、名古屋で家財整理や生前遺品整理を主業務とする「株式会社エコトップ」を経営する伊藤勝利氏にご登場いただいた。

――◆――◆――

――伊藤代表は三浦さんの現役当時からの大ファンだったとか。

伊藤勝利代表(以下、伊藤)「そうなんです。子どものころからずっとサッカーが好きで。小学校の時に伯母が住んでいる静岡へ行き、自転車でヤスさんのご実家のもんじゃ焼き屋さんへ行って、その時サインをいただいて……。それ以来もう夢中になってしまって」

三浦泰年(以下、三浦)「そのもんじゃ焼き屋はもう、なくなっちゃったんだけどね。でもその後出会ったのは、2020年のコロナが始まる前くらいで、名古屋のある鉄板焼き店で行なわれた懇親会で講演をさせてもらって、そこに勝利君がいたという、そんな出会いです」

伊藤「ヤスさんは私にとってスーパースターですから、実際お会いしたらどんな方なのか、正直少しお話しづらいのかな、などと思っていたのですが、鉄板焼き店でも『じゃあ、僕が焼くよ』と言ってヤスさん自らもんじゃ焼きを焼いてくださって(笑)」

三浦「思い出した。僕、もんじゃ焼き屋の息子だから焼くのはうまいからってみんなに焼いてあげたんだ(笑)」

伊藤「その場では、ヤスさんのことを子どもの頃からどれだけ好きだったのか延々と伝えさせていただいたのですが、その後ヤスさんが『サッカーダイジェストWeb』で発信されているコラムで、コロナ禍の自粛中にお部屋の片づけをされていることを知りまして。それで、私はご家庭から出た不用品を回収して東南アジアに輸出して寄付をしたり、あるいは国内で再販可能な物を売買い取り販売をする家財整理のお仕事をしているので、よろしければお伺いさせていただけませんかと、懇親会で教えていただいたLINEで連絡をさせていただいたんです」

三浦「なんとかコロナの自粛中にきれいにしたかったから、本当に良かった。僕も単身でいろんなところに行っているので、その時に使った物を持って帰ってくると、どんどん物が増えていくんです」

伊藤「お部屋を一定期間内で片付けるのは、不用になった物の分別方法が分かりにくく、思うように前に進まない場合や、分別方法が分かったとしても物量が多くて一度に大量の物を減らす事ができずお部屋が綺麗にならない場合が多いです。また不用品をそのまま捨てるということではなく、売れる物、あるいは売れないけど使える物の区別というのは、専門業者でなければ時間や費用に大きな差が出るので、私はそのお手伝いをヤスさんにさせていただきたくて、想いをお伝えしたんです」

三浦「そうしたら、やっぱりサッカーが好きということで、名古屋グランパスのスポンサーをやっていたり、自分のことやカズのことをすごく応援してくれたり。そういうお話もするようになりましたね」
 

――三浦さんは伊藤社長のお仕事について、何か興味深い点があるようですね。

三浦「そうなんです。この仕事を業界全体のパートナーシップによって、取り組んでいる部分があると聞いていて。サッカーの世界では、ピッチ上で競合する相手と手を組む場面はなかなかないんだけど、競り合っていく相手とともに手を組んで戦うというのはどういうことなんでしょう?」

伊藤「いま世の中が注目しているのは、SDGs(持続可能な開発目標)ですよね。SDGsの17番目にパートナーシップで目標を達成しようという項目がありますが、それは私の仕事にも通ずるところがあると思うんです。自社で全ての事を対応するということは素晴らしい事ですが、その一方で、活動範囲に限りができてしまったり、同業者が『競合他社化』し生存競争をしてしまい、お客様だけでなく地域貢献も出来なくなってしまう場合もあります。そうではなくて、パートナーシップを組むことによって、知識や技術、資金や資材などを相互で補完すれば、同業者と共存し、自社のみでは達成できない目標も達成できると思うんです。私の拠点は名古屋ですが、関東や関西の同業者とパートナーシップを組ませていただいて、実際にお仕事もさせていただいている。それによって、新たな可能性もできていますし、その地域にあった家財整理や生前遺品整理トレンドもシェアしていただいている。時間や労力のシェアリングエコノミーということにもつながっていると思いますね」

三浦「自分はいつもそういうことをサッカーに置き換えて考えるんだけど、例えばスポンサー集めやファンサービス、プロモーションのやり方といった情報は、まさに56クラブのなかでパートナーシップを組んでシェアできたらいい。もちろん、Jリーグ自体がそういう意味ではパートナーだと思うから、助け合ったり共存したりできる部分はけっこうあるんじゃないかなと、話を聞いて思いました。ただ、トレーニングのやり方や戦術、采配など、現場レベルの話では難しいのかとも思ったけど、大げさなことを言えば日本のサッカーが強くなるためには、もしかしたらそういう面でも共存して、情報を交換していくことは必要な時代になってきているのかもしれませんね」

伊藤「私は選手育成やチーム強化などに貢献するのは難しいですが、スタジアムのエコという面では有益な情報をシェアできると考えています。現在オフィスが名古屋の他にドイツのフライブルク市にあり、そこは世界一の環境首都と言われています。その街にはブンデスリーガ1部のSCフライブルクがありますが、そこはドイツサッカー界初の太陽光発電のスタジアムで、来年オープンする新スタジアムは屋根の太陽光パネルだけでなく、駐車場などのフェンスにも太陽光パネルを設置していて、スタジアムの電力のほとんどを賄えます。他にもゴールネットを紙で作成しリサイクル時に土に還るような施策を行なったり、試合日には公共交通機関が試合のチケットを見せると無料になる仕組みで、車移動のCO?削減につなげたり、地域ぐるみでエコに取り組んでいるんです。こうした最新情報を日本のサッカー界にシェアし、採り入れていただければすごくやりがいがありますね」

三浦「すごく興味深い話ですよね。エコが実はサッカーと近いところにもあるっていうのは、知らない人も多いだろうし、もっとそうした情報や考え方を日本に浸透させて、ぜひエコの要素がいっぱい詰まったスタジアムを作ってもらえたら嬉しいですね」
 

――今年はコロナ禍という面でお仕事に影響したり、変化を求められた部分もあるのではないでしょうか。

伊藤「私の主業務に生前遺品整理がありますが、お客様と直接、接するしか方法がないのが現状です。当たり前のようですが、換気をし、ソーシャルディスタンスを保ち、消毒をしながら作業を行うこと、それからコロナ禍をきっかけにお客様に新たな形で何かを提供させていただけるとしたら、介護施設などにリモートで生前遺品整理の重要性を発信していくなどポジティブな関わり方ができればと思います」

三浦「コロナ禍の今は、いろんなことを感じながら日々を過ごしているんだけど、2021年に東京五輪を開催するのであれば、やはり行動を起こす必要はあるのかなと。その大前提にあるのが、いま勝利君が言ったソーシャルディスタンスであったり、手洗いや消毒といった対策であり、そうしたものを講じて感染に気を付けながらも、やっぱりトライしていかなければいけない」

伊藤「高齢者の死亡原因を考えた時に、ウイルス感染によるものよりも屋内転倒や転落などの不慮の事故のほうが大きな割合を占めています。物を所有しすぎてしまうあまりに生活動線を塞いでしまっていると、屋内転倒を起こしてしまったり、災害時には大型家具や家電が転倒するなど怪我や死亡のリスクはさらに高まります。コロナウイルスに感染するリスクはゼロではありませんが、命を守るということであれば、三密を避けてお部屋の整理をさせていただくことが、私の仕事に合ったコロナウイルスへの向き合い方だと考えています」

三浦「発想の転換やアイデアがいま以上に必要になってくるんじゃないかなと思いますね。そのアイデアが、あまりにも単純すぎて、コロナから守るだけになっているところがあるから、いま勝利君が言ったように、ちょっと発想転換すればやるべき大事なことはまだまだあるんじゃないかなと思います。大賛成ですね」

◆対談者プロフィール◆
三浦泰年(みうら・やすとし)
1965年7月15日生まれ、静岡県出身。静岡学園高を卒業後、ブラジル留学を経て読売クラブに入団。Jリーグ開幕とともに、地元の清水に加入し、初代主将を務める。その後V川崎、福岡、神戸でプレーし、引退後は神戸チーム統括本部長などを経て北九州、東京V、チェンマイFC、富山、鹿児島の監督を歴任した。現在は解説者のほか、株式会社EMAの代表取締役としても活動している。

伊藤勝利(いとう・しょうり)
1989年10月20日生まれ、愛知県出身。家財整理、生前整理、遺品整理を主業務とする株式会社エコトップを創業。リユース(再利用)、リサイクル(再資源化)に取り組むとともに、これらの自社事業を通じて、サッカー界のエコへの関心度向上も促進している。豊田スタジアムで行なわれる名古屋グランパスのホーム戦ではエコステーションを設置するなどゴミ分別回収にも貢献している。

取材・文●長沼敏行(サッカーダイジェストWeb編集部)
写真●塚本凜平(サッカーダイジェスト写真部)

『サッカーダイジェスト』1月28日号(1月14日発売号)より転載

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