「デポルに残留する可能性もあった」柴崎岳が打ち明けた半年前の葛藤【インタビュー前編】

「デポルに残留する可能性もあった」柴崎岳が打ち明けた半年前の葛藤【インタビュー前編】

インタビューに答えてくれた柴崎。葛藤と希望を語った。写真:豊福晋



 浮き沈みもあった1年だった――柴崎岳はそう2020年を振り返る。

 所属した当時スペイン2部リーグのデポルティボは前半戦に低迷、終盤にコロナウイルスが呼び起こした騒動に巻き込まれる不運もあり、最終的に3部リーグに降格した。1部に引き上げるという思いを胸にガリシアの地を踏んだ柴崎だったが、その夢は叶わなかった。

 降格の責任を感じ、悩みながらレガネスに移籍した今季。柴崎は獲得を自ら望んだホセ・ルイス・マルティ監督の下で攻守の中心として躍動している。昨季達成できなかった目標を追いかけ、21節現在チームは昇格プレーオフ進出圏内にいる。1月2日から始まった後半戦で1部への切符を掴み取る可能性は十分にある。

 そしてもうひとつのチーム、日本代表においても、柴崎はロシア・ワールドカップ以降、継続的にプレーしており中核となっている。カタール・ワールドカップまで残り2年。2021年の彼は自身と日本代表について何を考えているのかーー。

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――今季(2020―21シーズン)も半ばを迎えましたが、コロナウイルスもあり、この1年は激動の年でした。

「激動だったのは自分だけじゃないし、みんなそうだったと思う。スペインでは去年の3月半ばから約2ヶ月間ロックダウンしていた。ただ、あの時期は自分にとってもすべてが初めてで、ある意味新鮮に過ごせた部分もあったかな。家にランニングマシーンを買ってしっかり環境を整え走っていたので、あの期間もコンディションはそれほど落ちなかった。それに家族もいたから家で楽しく過ごせた。

 キャリアとしては浮き沈みもあった。コロナウイルスでリーグ戦が休止となって、不規則な日程のなかでプレーしていたデポル(デポルティボ)は3部に降格してしまった。昨シーズンは後半戦に関してはそれほど悪くはなかったけど、前半戦の低迷が響いた。個人的にはチームを降格させた責任も感じていたから、今季デポルに残留する可能性もあったくらいだった」
 

――デポルで3部リーグを戦うつもりもあったと。

「そういう責任を感じやすいタイプだから、残留という選択肢もないわけではなかった。もちろん周りからは『3部はさすがに……』と止められて。レガネスからオファーをもらったこともあり、心機一転、新たなチームでやることになった。昨シーズン終盤、コロナによる試合中止騒動(デポルティボの対戦相手フエンラブラダにコロナ感染者が出たことで試合が急遽中止に。他試合は開催された)で先が見えない状況のなか、俺は先に日本に帰ることになって最後の試合には出られなかったけど、不公平さは感じた。

 デポルに対する思いは今も強いし、3部での動向は追っている。自分だけじゃなく、家族もア・コルーニャでの生活には満足していたし、あの街を離れたくないくらいのイメージだった。責任感も含めて、後ろ髪引かれる思いでの決断だった」

――レガネスではスペインに来たシーズン(2017年2月)にテネリフェで出会ったマルティ監督と再会した。

「マルティ監督に誘ってもらったのも、移籍を決めた理由のひとつだった。今季は出場機会もコンスタントにあるし、監督の信頼も感じる。あとはそれに自分が応えて、結果に自分のプレーが反映されないといけない。
 今季は日程も詰まっていて、ここ3、4か月は日本代表もありずっと試合をしていた感覚で、少し疲れている時期もあった。昇格を目指すうえで、今のレガネスの順位は最高ではないけれど、悲観する必要もないとは思う」

――ピッチの上では、昨季よりもプレーしやすそうに見える。

「まあまあ、やりやすいかな。チームにいる選手の質もそうだし、監督がやりたいことも結構マッチしているから。もちろん改善の余地はあるし、チームとしての完成度もまだまだ低いけど、それでも勝点を重ねながら徐々にできている。もっと良くできるし、チームにはいい意味で可能性を感じている」

――レガネスという新たなチームで、自分の持ち味や長所を出せている手応えを感じられている?

「今はMFとしての可能性を見出してもらっている。今季はボランチ、インテリオール(インサイドハーフ)、4?4?2のサイドなど、複数のポジションでやっている。どのポジションであっても求められるプレーの質はそこまで変わらないので、それをどこで発揮するか。

 ボランチならチームを回してスムーズに潤滑させていく役割と、前にも積極的に飛び出していくイメージ。前線ではより得点につながるような決定的なプレーを求められるし、イマジネーション、創造性の面で期待されている部分もある。

 今やっているように、多くのポジションをこなせることは出場機会を得るためにも選手として大きな強みになる。マルティ監督は試合の状況や対戦相手により、選手へのリクエストを少しずつ変化させるタイプ。個人的にもそんな監督の要求にどれだけアダプトさせていくかを考えている」
――昨年、「もっと自分を出して人をワクワクさせるようなプレーを見せていきたい」と語っていたのが印象に残っている。その思いは今も変わらずに強い?

「もちろん今でもあるし、レガネスでもそれはより求められている部分だと思う。自分の能力を、チームプレーだけではなくて自分のパーソナリティ的な部分をもっと出してほしいと監督にも言われている。テネリフェ時代もそうだったけど、4年前はまだ日本から来たばかりでそういう考えが強い時期だった。個をどこまで出すのかは良し悪しがあるけど、今自分に必要な部分だと思う。どちらの考え方をしてチームの力になれるのか。その判断を間違わないようにしないといけない」

――10、11月で4試合の親善試合を戦った日本代表では、現在はどういった意識を持ってプレーしている?

「日本代表の10月、11月シリーズでの個人的なプレーで言うと、以前よりもピッチの上で味方に対してコーチングができている実感がある。この点はもっと良くできるし、良くしていきたい。テレビや、スタジアムでもピッチの外からだと少し分かりづらいけれど、細かい部分を追求している。『半歩こっちにいて』とか、『右を見ろ』とか、『後ろ』とか、細かいコーチングをするだけでプレーはしやすくなる。特に、自分より前にいる選手は快適に守備や攻撃ができる。

 自己分析すると、そういった細かい部分ができるようになっているかなと。10、11月の4試合では、特に守備面で収穫があった。ある程度チームのバランスも取れて、安定感があった。チームとしての組織力もあるけど、細かい部分で近い選手に伝える部分を意識してできたのは良かった」

取材・文●豊福晋(サッカーライター)

※『サッカーダイジェスト』1月28日号(同14日発売)より転載。

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