「日本人の良さは確実にある。でも課題は…」柴崎岳が思い描く日本代表が進むべきビジョン【インタビュー後編】

「日本人の良さは確実にある。でも課題は…」柴崎岳が思い描く日本代表が進むべきビジョン【インタビュー後編】

日本代表の司令塔を担う柴崎。チームの今後を語った。写真:龍フェルケル



 浮き沈みもあった1年だった――柴崎岳はそう2020年を振り返る。

 所属した当時スペイン2部リーグのデポルティボは前半戦に低迷、終盤にコロナウイルスが呼び起こした騒動に巻き込まれる不運もあり、最終的に3部リーグに降格した。1部に引き上げるという思いを胸にガリシアの地を踏んだ柴崎だったが、その夢は叶わなかった。

 降格の責任を感じ、悩みながらレガネスに移籍した今季。柴崎は獲得を自ら望んだホセ・ルイス・マルティ監督の下で攻守の中心として躍動している。昨季達成できなかった目標を追いかけ、21節現在チームは昇格プレーオフ進出圏内にいる。1月2日から始まった後半戦で1部への切符を掴み取る可能性は十分にある。

 そしてもうひとつのチーム、日本代表においても、柴崎はロシア・ワールドカップ以降、継続的にプレーしており中核となっている。カタール・ワールドカップまで残り2年。2021年の彼は自身と日本代表について何を考えているのかーー。

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――あと半歩を追求して声に出す意識が、今このタイミングで生まれたきっかけはあった?

「そういう意識が出てきたのはキャリアで見るとここ1年と少し、デポルとレガネスでかな。スペインでボランチをやるうえでは、チームメイトに指示を出したり、『こうしよう!』と言ったりしないと、どうしても守備のオーガナイズがずれていく。

 スペインでは味方に指示するのが当たり前で、それをしないで相手に後ろからボールを取られたりすると、『お前が指示しなかったから奪われた』と言われたり、そんなジェスチャーをされる。そういった環境で中盤としてプレーするなかで、『いくな!』とか『いけ!』という声は自然に出るようになってきた。その派生で、代表でもそういう指示をするようになった」

――日本代表で遠藤航と組んだボランチには安定感があった。

「航にはそこまでは言わないかな。航とはもともとバランスが取れているし、どちらかというと相手の追い方やコースの切り方、どこに立ってほしいという要望をサイドハーフや自分より前の選手に伝えることが多い。SBもそうだね」

――ピッチ上でのコミュニケーションを増やしたことで、連係面の向上は感じる?

「以前よりは相手に崩されづらくなったというのはある。守備において、大きな問題に陥るような状況にはなっていない実感もある。この点は今後もより良くしていきたい。もっと精度も質も上げられるはず」
 

――10、11月はオランダとオーストリアに遠征したが、ヨーロッパ内で日本代表のテストマッチをすることのメリットを感じたのでは?

「代表ウィークで日本に帰国して試合をすることと比べると、移動と時差調整がない点はやはり大きかった。移動時間が少なくて済むのでコンディションが崩れにくいし、対戦相手も欧州でやっている選手がほとんどで、彼らにしてもコンディションが整っている。日本のホームではない場所で戦うのはやはり大きな魅力だと思う。

 歴史的に見ても、日本代表はアウェーでの経験値が圧倒的に欠落している。もちろん、日本のファンの前でプレーするのも必要ではある。サッカー人気、今の日本代表を認知してもらうためにも少なからずやらないといけない」
――ロシア・ワールドカップから2年半が経ち、カタール大会まではあと2年になった。チームは今どういう時期にいる?

「チームの土台やベースはある程度できていると思う。ロシア・ワールドカップが終わり森保(一)監督になって2年半が経っているし、チームでこれをやっていこうという方向性はみんな分かってきている。あとはどれだけその完成度を高められるか。今後、ワールドカップ予選を勝ち抜きながら、そのなかで選手の入れ替えも出てくるはず。競争はないといけないし、それはチーム力を高めるうえで必要なこと。活動が限られているなかで、代表で動ける時間は意義のあるものにしていかないといけない。

 これからも不規則な事態がたくさん起きるだろうから、できる時に日本代表として最大限努めないといけない。代表としてダラけずに、自分たちを律してやっていけるか。その意味ではメキシコのようなチームとやれて、できないことがまだまだあると気づかされたし、刺激になった」

――代表のなかで気の緩みを感じることもあった?

「気の緩みは基本的にはそんなにない。でも最初の頃に比べると、当然ながら慣れてくる部分もある。それを自分たちで良い方向に持っていけるようにしないと。自分たちで鼓舞して、毎回緊張感をもって練習できるような空気作りをしていきたい。基本的に日本人は真面目だから、そこまで言う必要はない。取り組む姿勢もしっかりあるからうるさく言わない。でも気が緩まないように、という考えは常に持っている」
 

――代表チームは友人の集まりではないが、過度な緊張もチームワークにマイナスに作用する可能性もある。最適なバランスをどこに見る?

「どうだろう。指導者じゃないから、理想的なバランスがそもそもあるのかも分からない。最高のバランスというものもないと思う。ただ、少なくとも緊張感はないといけない。極論を言うと、代表チームはアミーゴ(友人)の集まりという感じよりは、ガチガチに緊張感があるほうが良いのかなと。

 友だち意識があって緊張感がないチーム、というのは代表をやっていくうえで良いとは思わない。クラブだと毎日一緒にやっているし、慣れもあるし、どうしようもできない時もある。それをどうマネジメントしていくかは監督の役割。選手はある程度認めるところと認めないところを作ることが大事」
――これからの日本代表はどう進んでいくべきか、描いているビジョンを聞かせてほしい。

「国を例に出すとイメージが先行してしまうけれど、こういうふうになっていきたいという思いはある。やっぱり日本人には日本人の良さが確実にある。それを出していくこと。日本人は真面目に仕事をするし、やれと言われたことをやる精神力もある。近年では、自分でこうだと思ったことを実行するプレーの自発性も徐々に芽生えている。欧州でプレーする選手が増えて、経験や自信を持てるようになったから。試合のなかでこうしようという意識も前よりは出ているし、日本代表としてそれは大事なこと。その点は自分自身にもまだまだ足りないところ。

 あとはやっぱりフィジカルかな。遺伝とまではいかないけど、物理的な体格の差がある。フィジカルの練習や、フィジカルそのものに対する意識もそう。欧州でやると、俺ですら身体的に伸びている部分があるし、フィジカルの強い選手の多い環境でやっていると慣れてくる。意識しなくても伸びていく。そこを日本の育成年代の人たちにどう意識してもらえるか。フィジカルを伸ばしていくことはひとつの課題だと感じる」

――出場すれば、自身二度目となるワールドカップへの思いを。

「最終的にはカタール・ワールドカップで、今まで日本代表がいけなかったところへいくことを目指してやっている。やっぱりそういう目標をもって、そのレベルのトレーニングをするのが重要になる。その意味でもワールドカップ出場権獲得が大事になるし、まずは足もとを見て進んでいかないといけない。

 日本サッカー全体としては、カタール・ワールドカップ以降について考えていくべき人はいる。自分は今選手だから、やっている現場で結果を残していくのが一番。考える立ち位置ではないし、あくまで1選手の意見だけど、代表として確実に持っておくべき長期的なビジョンはブラさずに継続しながら育成年代の代表チームやトレセンの育成も進化させていくべき。前述したフィジカルの部分、技術的な部分も含め考えていかないといけないと個人的に思う」

取材・文●豊福晋(サッカーライター)

※『サッカーダイジェスト』1月28日号(同14日発売)より転載。
 

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