松井大輔のベトナム初陣は度肝を抜く凄まじい賑わいに…スタジアム観戦した現地在住日本人の印象とは?

松井大輔のベトナム初陣は度肝を抜く凄まじい賑わいに…スタジアム観戦した現地在住日本人の印象とは?

熱気溢れるベトナムリーグ開幕戦の様子。? Akira Ohga



 飛び込んできたLIVE映像に眼を疑った――。

 憎き新型コロナウイルスの悪業に悩まされ続けているのは、世界のフットボールシーンもご多聞に漏れず。しかし、無観客または観戦者数を制限した試合開催が当たり前なこのご時世において、凄まじい賑わいを見せているではないか。

 シーズン開幕を待ち侘びたファンで溢れかえったトンニャット競技場。ベトナム1部リーグ開幕戦、サイゴンFC対ホアン・アイン・ザライFC(以下、HAGL)での話だ。

 日本航空、エネオス、JTB、佐川急便、ニチバン……多くの日本企業の広告バナーも目立ったその会場で、試合を観戦したという日本人ファンの情報をキャッチし、話を聞いた。ホーチミン在住歴2年になるという大賀照さん(46歳)だ。
 
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――試合の話の前に聞かせてください。世界を騒がす新型コロナウイルス被害、ベトナムではどんな状況なのでしょうか?

「ベトナムは初動が早かったんです。第1波、第2波(昨夏/ピーク時期)、第3波(昨冬)とありましたが、日本と比べればどれも雀の涙ほどで。ベトナムから日本へ帰国した人の中から2日に1名くらいは陽性反応が出ているオチもあるのですが(苦笑)。ただベトナム人は普段からマスクをつけることに抵抗が無く、2003年のSARS騒動で痛い想いをした経験もあるので、感染症対策への意識は高いとは思います。現在は1か月以上続けて市中感染者数0が続いていて生活には影響ありません」

――なるほど。その環境下だからこそ規制なき試合開催が可能なんですね。LIVE映像から伝わってきたスタジアムの雰囲気には度肝を抜かされました。会場へ足を運んだ動機をお聞かせいただけますか?

「決してサイゴンFCのファンだった訳ではないです。正直、松井大輔を観に行ったというのが本音です。チケットは事前に購入しようとしたのですが、一般販売の詳細がいまいち分からず、当日早めにスタジアムへ行って購入しました。チケットの購入方法は、ベトナム人にも分かりづらかったみたいですよ。不満もあったようで、チーム公式SNSへのファンの書き込みに『なんでネット販売しないんだ!』『まだ原始的な窓口販売しかやらないのか?!』なんていう怒声も多かったですから」

――多くの日系企業の広告バナーも気になりました。

「そうですね、『会社から招待券をもらって来れた〜』なんていう友人家族もいましたし。私はメインスタンドから観戦したのですが、周りには多くの日本人グループの姿も。在留邦人の間では注目の試合だったことは間違いありません。」
 

――日本でも移籍が話題となった松井大輔の現地での注目度はどんなものなのでしょうか?

「日本人コミュニティの中では、ずば抜けて高いです。こちらの日系情報メディアでも彼の移籍が多く取り上げられていますし。ベトナム人のSNSへの書き込みを見ていても『ワールドカップに出ていたあの松井だ!』『ボールを扱う技術が素晴らしい!』なんていう声も多かったので、サッカー好きなローカルも注目しているんだと思います。ただ一緒に入団した元Jリーガー(高崎寛之/前FC岐阜、苅部隆太郎/元FC岐阜、ウ・サンホ/前栃木SC)については名前を知る程度の情報しか持ち合わせていないですが」

――守備に追われる時間が多かったとはいえ、キャプテンマークを巻きスタメン出場した彼のプレーに、またサイゴンFCの仕上がり度合いには少しがっかりさせられたというのが私の印象です。

「私も同感です。彼がボールに関与したプレーは少なかったですしね。でもチーム合流されてまだ3週間ですよね。試合前にピッチで組んだ円陣でもキャプテンらしく仲間を鼓舞していましたし、調子も徐々に上がってくることを期待してしまいます。」

―――あの熱気をスタジアムで感じられる環境は、いま世界中を探してもベトナムぐらいではないかと。正直羨ましいです。今後もスタジアムへ観戦に行かれるのでしょうか?

「勿論です!松井大輔を観に行きますよー!」

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 試合は40分、HAGLの最終ラインでのパスミスを奪取した新加入FWメルロ(アルゼンチン系ベトナム人)がカウンターゴールを決めてサイゴンFCが先制。この1点が決勝点となり、開幕戦をものにした。

 HAGLが主導権を握り、多くのチャンスを作り出し、サイゴンFCが耐えてカウンターという展開で、松井大輔はスタメン出場し75分までプレー。終始押し込まれる展開では、彼の良さを発揮できる局面は極めて少なかった。

 昨季リーグ3位という好成績を収めたサイゴンFCは資金力を武器に、より強固なチーム作りを図るべく“ジャパナイズ”による強化策へ舵を切っている。2020年にはFC東京と業務提携を締結。新たに会長へ就任したチャン・ホア・ビン氏も“ジャパナイズ”と心中する腹積もりのひとりだろう。しかし開幕戦やプレシーズンの動向を観る限りでは、チーム状況は決して芳しくはない。ローカル選手のクオリティの低さに、彼らの行方に不安を感じずにはいられない。我慢のシーズンになることは必須だろう。

 パンデミック封じに成功しているベトナム。執筆現在での累計で、感染者が1539人、死者が35人、また新規感染者の1日平均が3人というのが公式発表となっている。そんな“平和”な環境下で始まった今季のベトナムリーグ。スタジアム発信の熱いフットボールパッションを感じながら、リーグ動向を注視するのも良いのではないだろうか。

取材・文●佐々木裕介(フリーライター)
 

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