加速する若手の海外移籍――求められる語学力、適応力、メンタリティ。川島永嗣が指摘するのは「通訳が入ると…」

加速する若手の海外移籍――求められる語学力、適応力、メンタリティ。川島永嗣が指摘するのは「通訳が入ると…」

ストラスブールの川島は一時は奪われた先発の座を奪い返し、定着するに至っている。ポジション柄、そのベースにはチームメイトとの密なコミュニケーションは不可欠だ。(C) Getty Images



 レアル・マドリーから今月、ヘタフェに3度目のレンタル移籍に赴いた久保建英の活躍ぶりが話題になっている。

 久保はご存じの通り、小学生の頃からバルセロナのカンテラに所属し、現地の学校に通って教育を受けた選手。幼い頃からスペインの生活環境に慣れていたため、18歳でFC東京からレアルに赴いた時も、一般的な「日本人若手選手の海外挑戦」とは捉えられなかった。

 彼と同い年で、バルセロナから熱視線を送られた西川潤(C大阪)が「僕はスペイン語を話せないし、現地に馴染むのは簡単じゃない。いきなりスペインに行って試合に出られるタケとはベースが違うと思います」と話したことがあったが、全員が久保になれるわけではない。普通の日本人選手が異国に渡って成功を掴むには、まずは言語を中心とした「適応力」と「コミュニケーション力」が不可欠なテーマになってくる。

 Jリーグにやってくる外国人選手の場合、通訳が身の回りの世話をするのは普通だが、日本人選手が欧州に赴く場合、通訳がつくケースはかなり少ない。1月にベルギー2部・ロンメルへ移籍した斉藤光毅は日本人通訳に生活面を含めたサポートをしてもらっているようだが、そういう環境は長くても半年くらい。その後は言葉、文化、習慣の違いにひとりで向き合わなければいけない。そのハードルをどう超えていくかが肝心なのだ。

 言語の課題を完璧にクリアしたトップ選手の代表格と言えるのが、川島永嗣(ストラスブール)だろう。

 彼の場合、海外移籍は27歳と遅かったが、大宮アルディージャでプロキャリアを踏み出した当時のイタリア留学をきっかけに、語学学習を地道に行なっていた。最初は英語、イタリア語、フランス語、ポルトガル語、スペイン語のテキストを一気に購入。毎朝30分間勉強してからトレーニングに通う習慣を身に着けた。そのうえで、ブラジル人選手とポルトガル語で話したり、毎年のように行ったイタリア留学先でイタリア語を操ったり、2004年に赴いた名古屋グランパス時代は英会話学校に通いながら、フェルホーセン監督やヨンセンなどと意思疎通を図った。

 こうした努力の結果、リールセに移籍した時点では英語とイタリア語の日常会話は問題なくできたという。「語学の達人」はスタンダール・リエージュ時代にもフランス語も3年がかりで独学で習得。それもJリーグ在籍時に磨いた語学センスの賜物と言っていい。

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 海外挑戦前の準備の重要性は、本田圭佑や吉田麻也(サンプドリア)らも強調するところだ。吉田は「もともと英語の勉強は好きだったし、サッカーバカになりたくないと思っていた」と話していたが、その意識が高ければ高いほど、実際に現地に行ってから言葉で躓くことは少ないだろう。「シュツットガルト時代は高徳(酒井=神戸)がいたし、マインツ時代は日本語の話せるパク・チュホ(蔚山現代)がいて助かった」と言う岡崎慎司(ウエスカ)も、レスター時代は慣れない英語でインタビューに応じるなど、できる限りの努力をしていた。そうやって自分からアクションを起こさなければ、何も始まらない。

「通訳が入ると他のチームメイトとの距離感が遠くなりがち。スタンダールに後から入ってきた小野裕二(G大阪)と永井謙佑(FC東京)も3か月だけ通訳がいたんですけど、いなくなった後の方が自分から積極的に溶け込もうとしていました」と川島は言う。彼らが短期間で前向きに変化したように、「誰かが助けてくれる」という感覚から脱しなければ、本当の意味での現地適応は叶わない。さまざまな困難やストレス、失敗はあるだろうが、それを恐れずにチャレンジ精神を持つことが非常に重要だ。特に若い選手ほど強く認識すべきではないだろうか。

 今の20歳前後の欧州組で、こうした能力に長けているのが菅原由勢(AZ)で、元々15〜16歳の頃から大人とも対等に話せるタイプだったが、2019年夏にオランダに渡ってからはより社交性に磨きがかかったようだ。

「『適応するのが早いね』っていろんな人に言われます。それは僕自身の性格もあるし、AZのチームメイトやスタッフが快い対応をしてくれて、何も困ることがないなかでサッカーに集中させてくれているのが大きいと思います。まあ正直、『海外に行って何が困るんだろう』と思っていたくらい(苦笑)。英語も来た当初より聞き取れるようになったし、ミーティングもほぼオランダ語だけど、英語で言ってもらえる時もある。語学面はもっと頑張って、サッカーを楽しみたいですね」

 移籍から4か月後の2019年10月、彼は心底楽しそうにこう話したが、その後もコンスタントに試合経験を積み重ね、2020年10月のカメルーン戦ではA代表デビューも果たすなど、順調なステップを踏んでいる。その菅原に触発され、同期の中村敬斗(シント=トロイデン)や鈴木冬一(ローザンヌ)らも意識を高めているはず。幼稚園時代からインターナショナルスクールで育った齊藤未月(カザン)も全く問題ないだろう。次なる海外移籍予備軍と目される西川や三笘薫(川崎)も英語の勉強を始めているという。

 そんな若い世代が増え、川島や吉田、長谷部誠(フランクフルト)らのように現地適応し、なおかつトップリーグに定着できる選手がさらに増えていけば、日本サッカー界の地位やレベルも向上する。いい流れを加速させていくことが肝要だ。

文●元川悦子(フリーライター)

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