宿敵アルゼンチンの2強撃破に沸くブラジル! パルメイラスとサントスの“貧富の差”対決の行方は――【コパ・リベルタドーレス決勝】

宿敵アルゼンチンの2強撃破に沸くブラジル! パルメイラスとサントスの“貧富の差”対決の行方は――【コパ・リベルタドーレス決勝】

対照的なパルメイラス(上)とサントス(下)の対決に注目が集まる。(C)Getty Images



 コパ・リベルタドーレスが、南米でどれほど重要な位置を占めているのかは、一言で説明するのは難しい。

 大陸のナンバー1を決めるというのなら、欧州チャンピオン・リーグやアジア・チャンピオンリーグなどと同じではないか。そう皆さんは思うかもしれない。しかしそれは違う。断じて違う。
 
 南米のクラブが、タイトルという名誉以上に手に入れたいもの、それはその優勝賞金だ。ここ3年間の例だと、決勝にたどり着いただけで、両チームが620万ドル(約6億2000万円)をもらえる。そして、優勝すればさらに1550万ドル(15億5000万円)ドルが手に入る。この賞金によって、3〜5年は生き伸びられるクラブも少なくない。

 賞金それだけではない。決勝のTV放映権は高額だし、露出度が高くなるからスポンサーもつく。そしてその後にはクラブワールドカップが待っている。ここでの賞金、放映権料もついてくるのだ。経済的に困窮する南米のチームにとって、コパ・リベルタドーレスの戴冠は、チームの将来を大きく左右するのである。
 
 それにしても今回の決勝は、我々ブラジル人にとっては特別なものとなった。対戦するのはパルメイラスとサントス。ブラジルのチーム同士が決勝でぶつかるのは60年の歴史の中でもたった2回しかない。直近では、14年前にインテルナシオナウとサンパウロが対戦した時だ。

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 今年のファイナルがもう一つ特別なのは、舞台がブラジルであることだ。最も巨大で、美しいサッカーの殿堂「マラカナン」で、母国のチームが南米一の地位をかけてぶつかる。これに興奮しないブラジル人はいないだろう。ブラジル同士が決勝で、ブラジルのスタジムで戦うのはこれが史上初である。ただし、頂上でぶつかる両チームの状況は真逆と言ってもいいほど対照的だ。

 パルメイラスは現在南米でもトップ3に入る戦力を誇るチームだろう。経済的にも組織的にも健全だ。最も難しいというサンパウロ州リーグで優勝し、現在のブラジル全国リーグでも上位にあり、選手の補強でもこれほど投資しているチームはない。

 ホームスタジアムはブラジルで最もモダンで、バイエルン・ミュンヘンと同じアリアンツが後援している。しかしパルメイラスの何よりの強みはレイラ・ペレイラという大富豪の婦人だ。信用銀行と大学も経営する彼女はこの5年間、チームに金を出し惜しみしたことはないのだ。

 サポーターには“レイラおばさん”の名で親しまれている彼女は、いつかはクラブの会長になるのではとも言われている。フェリペ・メロという高額な選手を買えたのも、ヨーロッパから監督を連れてこられたのも、すべては彼女のおかげだ。いまやパルメイラスは南米で最もリッチなチームであろう。

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 一方のサントスは、パルメイラスとはかなり状況が異なる。ペレがプレーし、ネイマールを生み出した名門は、しかし現在ではブラジルでも最も経済的に苦しいチームの一つだと言われている。

 選手への給与も滞りがちだし、少なくとも3人の選手の移籍金が未払いだということで今シーズンはFIFAから移籍市場に参入することを禁止されてしまった。選手の売り買いができなかったのだ。そのため、チームは経験のない若手と無名の選手、忘れ去られたベテランで構成され、シーズンの頭にはB降格も十分あり得るのではと思われていた。

 経済状況だけでなく、内部の経営も混乱している。4か月前に会長が放逐され、その後臨時の会長が立ち、この1月にやっと正式な新会長就任したばかりだ。

 監督についても名将を招く資金はないので、最終的には失業中だったクカを復帰させた。彼の給料はブラジルのプロチームの監督の中でも最低レベルだと言われている。そのため、サントスの決勝進出は誰にとってもサプライズであった。

 両チームには一つだけ共通項がある。それはどちらも準決勝でアルゼンチンの強豪チームを破っていることだ。
 
 パルメイラスはグループリーグでも決勝トーナメントでも順当な強さを見せてきた。今大会はすでに32ゴールを決めており、これは歴代大会の記録の中でも7位に位置する。そして準決勝で当たったのはリーベル・プレートだった。

 敵地ブエノスアイレスでの第1レグは、パルメイラスが圧巻のパフォーマンスを見せ、3-0で圧勝。しかし絶対的有利で迎えたホームでの第2レグで、パルメイラスは前半に2点を許してしまう。

 おまけにパルメイラスの2ゴールは審判に取り消された。すべての流れは変わり、パルメイラスの快進撃も、もはやここまでと思われた。しかし、どうにかその後の失点を許さず、0-2で敗れたもののトータルスコア3−2で決勝に駒を進めた。

 一方のサントスは、補強禁止処分を受けながらも、クカ監督が魔法を見せ、誰の注意もひかないうちにひっそりと勝ち進んでいった。主砲カルロス・サンチェスが、準々決勝のグレミオ戦ではもう一人の主力ソテルドをコロナで欠いたが、それでもどうにか切り抜けてきた。

 そして準決勝ではリーベルと並ぶアルゼンチンの名門ボカ・ジュニオルズとぶつかった。敵地ボンボネーラでの第1レグはスコアレスドローで終え、すべてはホームでの一戦にかかっていた。

 そしてボカのスター選手を相手に、ほぼ無名なサントスの選手たちは3-0で完勝を収めた。彼らの戦いぶりを全て書いたら、何ページあっても足りないが、ここでは勝利の立役者のひとりはディエゴ・ピトゥカであったことだけ言っておこう。鹿島アントラーズが新たに獲得したMFだ。
 
 アルゼンチンとブラジルのライバル関係は皆さんもよくご存じだろう。その敵国のチームを破って、ブラジルのチーム同士が決勝で対戦することに、ブラジル人は並々ならぬ喜びを覚えている。

 それもどちらもアルゼンチンきって強豪だ。リーベルがホームで完敗したことは彼らが試合に対して適切なアプローチをしていなかった証拠であり、ボカに至っては下馬評では断然優位だったにもかかわらず、敗れてしまった。

 アルゼンチン・メディアは敗戦の原因を探り出そうと躍起になり、「まるで顔に平手打ちを食らったようだ」とそのショックを隠せない様子だった。

 今回の決勝がブラジル人にとって特別な、もう一つの理由がこれだ。

 ブラジルの2チームはこの土曜日(日本時間1月31日早朝)、真夏のリオのマラカナンでぶつかる。リッチなパルメイラスか、貧乏なサントスか。“貧富の差”対決に注目が集まっている。

文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子

【著者プロフィール】
リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/ブラジル・サンパウロ出身のフリージャーナリスト。8か国語を操り、世界のサッカーの生の現場を取材して回る。FIFAの役員も長らく勤め、ジーコ、ドゥンガ、カフーなど元選手の知己も多い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授としても大学で教鞭をとる。

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