「酒井への批判は理解できない」「長友は準備が…」フランスの名伯楽はマルセイユの日本人コンビをどう見る?【独占インタビュー/前編】

「酒井への批判は理解できない」「長友は準備が…」フランスの名伯楽はマルセイユの日本人コンビをどう見る?【独占インタビュー/前編】

マルセイユで奮闘を続けている酒井宏樹(左)と長友佑都(右)をフランスの名伯楽が分析した。 (C) Getty Images



 アラン・ペランは、2007-08シーズンにリヨンを率いてリーグ・アンを制して、翌シーズンには古豪サンテティエンヌの指揮官として松井大輔(現サイゴンFC)を指導。日本でも馴染みのあるフランス人監督だろう。

 今シーズンは、フランスの人気サッカー番組『Telefoot』で解説を務めている百戦錬磨の名伯楽に、フランス・サッカー界で活躍する日本人選手や教え子であった松井に関して、興味深いテーマをぶつけてみた。

 今回は、不振にあえぐ古豪マルセイユで奮闘する日本代表DFの酒井宏樹と長友佑都に関する私見を訊いた。

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――さて、あなたの試合解説を聞いていると、フットボールに精通しているのは当然として、日本人プレーヤーにも理解があるように感じました。マルセイユで5年目を迎えている酒井宏樹をどう分析していますか?

アラン・ペラン(以下、P):私はあの選手が大好きなんだ。非常に寛大で、努力を惜しまず、チームのために全力を尽くし、規律も正せる。攻撃にも絡んでくれるし、大きな熱意も注入してくれるからだ。

 一緒に仕事するとなれば、とても簡単だろうし、非常に重要な存在だからこそマルセイユで多くの試合に出場してきたんだ。マルセイユにとっては、太鼓判を押せる選手だと思うね。しかもフットボーラーとしてのクオリティだけでなく、人柄も愛されてもいる。人の言葉にしっかり耳を傾ける非常にいい性格で、チームにも溶け込んでくれているように思うね。

――時折、一部のフランス人ジャーナリストから、手厳しい評価を受けている印象もありますね。

P:あれは私も理解できない。代表選手だからというのもあって、もう一段階、上の要求しているのかもしれない。とにかく、何が気に入らないのか、正直よくわからないよ。確かに攻撃参加のときに、ほんの少しフィニッシュやクロスの精度に欠ける点はあるかもしれないが、一番重要なのは彼がもたらすあの努力だ。

 彼はもの凄い労力を注入する選手で、チームのために働いてくれる。とにかく最大限に働くんだ。だから、できないことまで全てを求めるわけにはいかないよ。もちろん、超ハイレベルなメガクラブで活躍するには限界もあるかもしれないが、ビッグクラブであるマルセイユでは、すでに十分すぎるほど良いと思うね。

――酒井を注視しているせいかもしれませんが、たとえば、彼はワンタッチやツータッチでプレーできるのに対し、他の選手たちにそれができない。それなのに批判を受けるところに、少し不思議な感覚を抱くのですが。

P:案外、それが原因かもしれない。彼の前には(フロリアン・)トバンがいるが、彼らなら大きなスペースに走らせて、ワンタッチで繋ぐプレーができる。だが、他の選手たちは酒井にとってスピーディーじゃないかもしれない。

 とはいえ、酒井はサイドバックだから、ドリブルで突破して打開していく選手ではない。とても複雑だけど、やはり酒井に要求しすぎなんだと思う。「このポジションにもっといい選手を見つけるべきだ」というコメントを見聞きするたび、私はいつも驚いてしまう。

――マルセイユのサポーターたちは、酒井を非常に高く評価していますね。

P:とにかくマルセイユのサポーターはチームのために全身全霊で戦う選手を愛する。だから、酒井に「努力していない」と非難するなんて誰にもできないよ。たまにディフェンスでミスも犯すが、それも滅多に起きないことだ。

 普段のポジショニングは素晴らしいし、空中戦はさほどハイレベルじゃないかもしれないが、それも弱点をあえて探すとすれば、の話だ。マルセイユはとても複雑なクラブだが、酒井はどんなときも最大限に努力をしている。とてもじゃないが、私は批判などできないよ。

――あなたは過去にマルセイユの監督(2002年5月-2004年7月)も務めました。あのクラブが持つ特有の難しさも熟知していますよね。

P:まさに外国人にとっては簡単じゃない。言語の問題に加え、周囲も沸騰した状態で、選手にも凄まじいプレッシャーを与える。だが、その中で酒井は常に期待に応えてきたと思う。マルセイユ・サポーターは嫌いな選手がいると、すぐにメッセージや横断幕で批判するが、酒井がその対象になったのを一度も見たことがない。
――では、次に長友についても聞かせてください。ナント戦(リーグ・アン第26節)では、美しいアシストも記録して、かなり馴染んできたように思いますが。

P:褒め言葉のトーンは、酒井よりも少しダウンするかもしれないね(苦笑)。年齢が高いせいもあるだろうし、どんなフィジカルコンディションでやってきたかという問題もあると思う。フィジカル面で即戦力になる準備ができていなかった印象があるんだ。あくまでもフィジカル調整上の問題だったのか、それともフィジカルレベルそのものが低下しているのかは分からない。

 ただ、大きな経験を積んだ選手だから、ポジションに必要な最低限のタスクをこなし、ゾーンコントロールもできている。だが、それに甘んじていて、ダイナミズムはもたらせていない。酒井が同じサイドでもたらせる力強さには至っていない気がする。
――もう少し、詳しくお伺いできますか。

P:まずは守備でセーフティーに仕事をこなそうとしているのだろうと思う。ただ、そこでも、敵に対する存在感やプレッシングが不足気味だ。また、長友には攻撃参加の期待がかかっていたわけだが、そっちの面でも不安定さを感じている。

 もともと長友は、主力が離脱した際の補完要員としてやってきた面があり、同時に経験をもたらしてくれると期待されていた。だが、彼がプレーしても「プラスアルファ」になっていないと思うんだ。そうなれないでいるのか、もうなれないのか、またこれからなれるのか、それは私にもまだわからない。そこは今後の注目点だ。

 だが、とてもインテリジェントにプレーしているところもある。リスクを冒さずに、自分の強みを活かしつつ、いいポジショニングやテクニックなどで、フィジカルの衰えをカバーしている。彼ほどの年齢になれば、全てはできない。攻撃参加すれば、怒涛のように戻らねばならないが、いまの長友は戻りきれず、しばしば遠くに残ってしまう。レギュラーだった(ジョルダン・)アマビが復帰してもプレーできるのかどうかはわからない。

――しかし、先日のボルドー戦では、元フランス代表の(アテム)ベン・アルファを相手に素晴らしい守りを見せました。

P:確かにフィジカルの状態がアップしているかもしれないね。最近の試合パフォーマンスは上昇しているように思う。テクニックも問題ない。ただ、今後も課題はフィジカルレベルを一定以上の状態にまで取り戻せるかどうかだと思っているよ。

インタビュアー●結城麻里
Interview by Marie YUUKI

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