賛否両論のFIFAによる「W杯隔年開催」案。クロップ、マンチーニら名将たちの見解は?

賛否両論のFIFAによる「W杯隔年開催」案。クロップ、マンチーニら名将たちの見解は?

FIFAの最大の収益源であるワールドカップが隔年開催になれば…。(C)Getty Images

FIFA(国際サッカー連盟)が現在4年ごとに開催しているワールドカップについて、隔年開催を提案し、その可能性を探っていることが大きな物議を醸している。

 FIFAのグローバル・サッカー開発責任者を務める元アーセナル監督のアーセン・ヴェンゲルが「このスポーツが進むべき正しい道であると100%確信している」と自信を持つこのアイデアについて、UEFA(欧州サッカー連盟)やCONMEBOL(南米サッカー連盟)が「イベントの価値の低下、選手の疲労、女子サッカーへの悪影響」を理由に猛反対しているのに対し、AFC(アジアサッカー連盟)は「世界中の全ての地域にとって潜在的な利益が引き出せる」として支持を表明するなど、統括機関の間でも意見は分かれた。

 個々の意見も様々で、リバプールのユルゲン・クロップ監督やチェルシーのトーマス・トゥヘル監督が「金のために試合を増やすことばかり考えている」と新案を批判すれば、マンチェスター・シティを率い、現在も国内外の多くの試合をこなしているジョセップ・グアルディオラは「ワールドカップは素晴らしく、サポーターはこれを楽しんでいる。2年の一度見られるのではあれば、それは良いことだ」と歓迎する。
  また、欧州王者となったイタリア代表のロベルト・マンチーニ監督は「評価すべきこと」と隔年開催に肯定的ながらも、「EUROと合わせるとスケジュールの調整が難しい」とクリアすべき課題が多いことを指摘。元西ドイツ代表FWで昨季までバイエルンCEOを務めたカール=ハインツ・ルムメニゲは同様の理由により、こちらは反対の意思を示した。

 他にも、リトアニアで新たな挑戦を開始した本田圭佑は「賛成」を表明し、反対意見に対して「慣れの問題」と語り、元ブラジル代表FWの“怪物”ロナウドは「より多くの人たちの夢が実現する」と賛成した上で、持論を述べている。

 FIFAはまた、世界中のファンを対象にしたアンケート調査を行ない、過半数にあたる55%が開催年の間隔の縮小を希望しているという結果が出たが、一方でその間隔については、「毎年」が11%、「2年ごと」が30%、「3年ごと」が14%と意見が分かれ、結果的に「4年ごと」を下回ることとなった。しかしFIFAは、「ファンはより頻繁にW杯が開催されること、とりわけ2年ごとの開催を望んでいる」と結論付けた。

 FIFAがこれに勢いを得て推進を強めようとする一方で、UEFAはこの動きそのものを停止するよう求めるなど、平行線を辿っている状態だが、これについてオーストラリアのビジネスや経済などを専門とする総合サイト『THE CONVERSATION』が「全ての意見は、経済的利益と費用を根拠にしている」と指摘。要するに、賛成するのも、反対するのも、理由は「金」ということだ。
  同メディアは、FIFAの収益の最大のものはワールドカップの放映権料、ライセンス権料、チケット収入であり、これをより増やすために開催頻度を上げたいと考えるのは当然の流れと見る。一方で、UEFAにとって最大の収入をもたらすのは4年に一度のEUROではなく、毎年開催されるチャンピオンズ・リーグ(CL)である。UEFAの過去4年間の収益は125億米ドル(約1兆3750億円)で、これはFIFAのほぼ倍だという。

 毎年、莫大な収益を生み出すクラブレベルのビッグイベントを有するUEFAとしては、これを乱すことは望まないのは当然。そして、CLをスムーズに運営する上で、最もネックとなるのが(FIFA主催の)代表チームのイベントなのである。

 また、FIFAは年間5億米ドル(約550億円)を「開発と教育」に投じており、ヴェンゲルもより世界の発展への貢献度を高めるためにもW杯の隔年開催が必要であると訴えているが、同メディアは「W杯の回数を2倍にすることが、必ずしも収益が2倍になることを意味するわけではない」と指摘する。
  近年のW杯の収益で最も多くの割合を占めるのは放映権料であり、2018年ロシア大会では全体の55%に達したという(チケット収入はわずか15%)。しかし、放映権料の金額は視聴者の要求の度合いに依存するものであり、W杯が頻繁に開催され、さらにオリンピックのような他のイベントと競合するような状況となった場合、大会の価値は薄れ、テレビ局に莫大な放映権料を支払う意欲を低下させる危険性がある。

 一大会ごとの単価が大幅に減ってしまえば、FIFAにプラスになるものは何もないと同メディアは主張。そして、「各クラブに悪影響を与えてUEFAの怒りを買い、ファンにも被害をもたらす危険性がある中での隔年開催は、ギャンブルである」と指摘した。

 隔年開催そのものは「一度試しにやってみる」こともできるだろうが、それによって低下したW杯の価値(=収益)は、4年ごとの開催に戻したとしても、すぐに戻るかどうか分からないリスクがあるということだが、それでもFIFAがこの案の実現に突き進むのかどうか、注意深く見守る必要がある。

構成●THE DIGEST編集部

関連記事(外部サイト)