40年前の“英雄”たちが提言! 「奇跡の世界一」を成し遂げた選手たちは暗黒期の現アッズーリに何を想うのか?

40年前の“英雄”たちが提言! 「奇跡の世界一」を成し遂げた選手たちは暗黒期の現アッズーリに何を想うのか?

北マケドニアに敗れ、カタールW杯への出場権を失った今のイタリア。そんなチームに栄光を知るレジェンドたちが提言した。(C)Getty Images

6月20日から3日間、イタリアでは全国の107の映画館で『Il Viaggio degli Eroi(英雄の旅)』というタイトルの映画が上映されている。

 これは、1982年スペイン・ワールドカップに3度目の世界制覇を果たしたイタリア代表を追ったドキュメンタリー映画であり、映画監督、脚本家、編集者として活動するマンリオ・カスターニャが製作総指揮、俳優兼テレビ司会者のマルコ・ジャッリーニがナレーションを務めている。

 スペインW杯での「アズーリ」といえば、イタリア・サッカー界を暗黒の闇に包んだ「トトネロ」と呼ばれる八百長事件の2年後。さらに事件に関与したとして2年にもおよぶ長期欠場を強いられたストライカーのパオロ・ロッシは1か月前にピッチに戻って来たばかりで、またチームも良い状態とは言い難く、国民の期待も決して高くないまま本大会を迎えていた。

 迎えた1次リーグでは、ポーランド(0-0)、ペルー(1-1)、カメルーン(1-1)に3戦全て引き分け、カメルーンとは総得点でわずか1差上回っての2次リーグ進出という体たらく……。パイプがトレードマークのエンツォ・ベアルツォット監督と40歳のキャプテン、ディノ・ゾフだけが代表で取材と受けるという当時のメディアとの関係の悪さもあって、チームは国中から大バッシングに遭った。
  これに加え、2次リーグでは前回王者でスーパースター候補のディエゴ・マラドーナを擁するアルゼンチン、ジーコ、ソクラテス、ファルカン、トニーニョ・セレーゾの「黄金の中盤」で世界を魅了していた、大会ナンバーワンの実力を誇るブラジルとの「死のグループ」に組み込まれ、もはや敗退は必至と思われていた。

 ところが、クラウディオ・ジェンティーレのファウル覚悟の徹底マークでマラドーナを封じ、鋭いカウンターで前回王者を2-1で下す。さらにブラジル相手には試合巧者ぶりを発揮し、また指揮官からの信頼を受けてレギュラーとして起用され続けるも結果を残せずに批判の矢面に立たされていたロッシが、突如復活のハットトリックを達成。今なお語り継がれるスペクタクルな試合の末に3-2で勝利を飾り、この大激戦区を勝ち抜いたのだ。

「ゴールを奪うことがこんなに簡単なことだと忘れていた」と語って完全覚醒したロッシは、準決勝のポーランド戦(2-0)でも2点を挙げて勝利の立役者となり、西ドイツ(当時)との決勝でも先制点をゲット。イタリアはマルコ・タルデッリの印象的な2点目を含む2ゴールを加えて3-1で勝利し、サンチャゴ・ベルナベウの夜空に黄金のトロフィーを掲げた。そしてロッシは、6得点で大会得点王&大会MVPのダブルクラウンに輝いた。

 イタリアは戦前の2回、そして2006年ドイツ大会でもW杯優勝を飾ったが、それと比べても、このスペインでの「奇跡の世界一」は最も大きな至上の喜びを国民に与えたといわれており、国全土で三色旗が振られるなか、それまで批判を受け続けた選手たちは、一躍英雄として凱旋したのである。 その感動の場面を詰め込んだのが、今回の『Il Viaggio degli Eroi』だが、この上映に先立ち、当時のメンバーからジャンカルロ・アントニョーニ、アントニオ・カブリーニ、フランコ・カウジオ、ブルーノ・コンティ、フランコ・コッロバティ、ジュゼッペ・ドッセナ、フランコ・セルバッジ、さらには昨年9月に肺がんで亡くなったロッシの妻であるフェデリカ・カペレッティなど出席し、お披露目イベントが開催された。

 攻撃的なSBとして活躍したカブリーニは、ロッシの他、ベアルツォット監督、アシスタントコーチのチェーザレ・マルディーニ、イタリア史上最高のリベロとも呼ばれたガエタノ・シレアに対し、「我々が恋しく思っているヒーローたちに、この思い出を捧げる」と、今は亡き戦友への思いを語っている。

 鉄壁のCBだったコッロバティは「40年もの時が経過しても、変化しない価値がある」、優雅な中盤の司令塔だったアントニョーニは「この大会のおかげで、世界が私を認めてくれた」、ロッシと並んでMVP級の活躍を見せたコンティは「我々はロッシのような、多くのチャンピオンと出会うことができた」、そしてアズーリの功労者であるカウジオは「今日でも、あの素晴らしい日を過ごしているかのようだ」と、イタリアにとっての特別な瞬間を振り返った。

 この映画の制作意図について、カスターニャ監督は「素晴らしいスポーツの偉業というだけでなく、困難な時の後に、国の復活を象徴付ける素晴らしい瞬間だった。それは、コロナ・パンデミックとロシアのウクライナ侵攻という歴史的な困難を世界が強いられている現在、伝えられなければならない価値観と情熱、コミットメントと希望の物語だ」と説明した。ここまでの情熱的な作品が、カタール・ワールドカップの出場権をアズーリが逃した年に公開されるのも、ある意味、皮肉であり、また象徴的と言えるかもしれない。

 2大会連続のW杯予選敗退で、イタリア・サッカーの低迷ぶりがより顕著となっている現在。だが、再建に向けて再び歩み出したロベルト・マンチーニのチームに対して、アントニョーニは「1、2年は時間を与えなければならない。それに、彼は欧州制覇を果たしていることを思い出すべきだ。今は物事があまりに速く過ぎていく」と指摘する。
  さらにカブリーニは「マンチーニは魔法の杖を持っているわけではなく、再建に時間はかかる。リーグやサッカー連盟には、彼にチャンスを与えてあげてほしい」と激励の言葉を贈っている。

 先日はスポーツ紙『Gazzetta dello Sport』でインタビューを受けた82年戦士のタルデッリは、「マンチーニは良くやっている。今、国内クラブは育成を軽視して国外の選手を獲得する安易な方法を選んでいるため、代表監督は若い選手を見つけることが難しい。今はロベルト・バッジョ、アレッサンドロ・デル・ピエロ、フランチェスコ・トッティのようなチャンピオンは見当たらない」と現代表監督を称賛し、彼の置かれた厳しい状況に同情を示してもいる。

 ちなみに彼は82年W杯のことを「敗者として大会に突入し、勝者として母国に帰って来られた」と振り返り、優勝を「マジック」と表現。興味深いのは、前述の通り、大会中はメディアとの関係が最悪といわれたにもかかわらず、タルデッリは「当時は選手とメディアの関係は非常に近く、人間としての関係があった。しかし今では両者の間に、そういったものは存在しない」と語っている。

 今回、奇しくも40年前の栄光を振り返る機会を得た暗黒期のイタリア・サッカーが、ここから何を感じ、今後の復興に向けて、これをどう活けるだろうか。

構成●THE DIGEST編集部

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