マルディーニとミランの2度目の別れの原因とその影響は!? 現地メディアの反応は「冷酷なオーナーの振る舞い」「残念ながら結果は…」と様々
2023年06月08日 15時07分THE DIGEST

退任が発表されたミランのマルディーニTD。(C)Getty Images
イタリア・セリエAのミランは現地時間6月6日、クラブのレジェンドであり、テクニカルディレクターを務めていたパオロ・マルディーニの退任を発表した。
クラブは公式サイトで「パオロ・マルディーニが2023年6月5日をもってクラブでの任期を満了することを発表する。ミランのチャンピオンズ・リーグ(CL)復帰やセリエA優勝など、長年にわたる彼の貢献に感謝する」との声明を発し、ジョルジョ・フルラーニCEOは、マルディーニ、そして同時に退任が濃厚(現時点でクラブからは未発表)なスポーツディレクターのフレデリク・マッサーラにも言及している。
「パオロとリッキー(マッサーラ)に感謝の意を表したい。そしてこの数年間、クラブに貢献してくれた協力者全員にも感謝したい。パオロは史上最高の選手のひとりであり、マネジャーとしてリッキーとともに、19回目のスクデット獲得を達成するために重要な役割を果たした。彼らが去ってしまうのは残念だ」
新たな体制下でミランの中心的な役割を担うことになるクラブCEOは、レジェンドとの別れを惜しんだが、この電撃的な人事の原因は、クラブとマルディーニの意見の相違によるものであると現地メディアは報道。昨年6月に2年契約を新たに結んだマルディーニだったが、ミランを買収した「レッドバード・キャピタル」の創設者でCEOのジェリー・カルディナーレとの会談において、今季の成績や来季の補強に向けて考えが合致しなかったという。
6月4日に行なわれたセリエA最終節(対ヴェローナ)の後のセレモニーでピッチに姿を現わしたマルディーニ。ここで現役引退を発表した大功労者のズラタン・イブラヒモビッチを称えるのが、レジェンドの最後の仕事になるとは、選手も予想していなかったようで、先日、ようやく契約延長を発表したばかりのラファエウ・レオンやマイク・メニャンが自身のSNSで意味深な投稿をして注目を集めている。
また、一部のファンもクラブのシンボル的存在への“仕打ち”に対して不満や怒りを表わし、SNSでの書き込みはもちろん、ミランのオフィス「カーサ・ミラン」の前で抗議活動を行なったり、「マルディーニとマッサーラへの連帯を示す」行為として全てのミラニスタに向けて来季のシーズンチケットやグッズの購入のボイコットを呼びかけたりと、様々な行動を起こしている。 現地メディアでは、『Gazzetta dello Sport』紙は「決して良いシーズンではなかったが、捨てたものでもない。セリエAでは4位を獲得。CLでは、昨季までに7年間も出場権を逃していたにもかかわらず、最も権威あるカップ戦に戻ってからわずか2年で準決勝まで駒を進めた」と、今季のミランの成績を評価したが、「最後に貸借対照表を作成し、結果に基づいて評価することに慣れている実業家のカルディナーレのビジョンでは、明らかにマルディーニがもたらしたものは彼を満足させなかった」と綴った。
一方、同じスポーツ紙の『Corriere dello Sport』は、「カルディナーレはミランの冷酷なオーナーとしての振る舞いを見せ、マルディーニの輝かしい過去にはほとんど興味を示さず、今季について記録した結果は、わずか3つだけだった。CL準決勝進出(これは高評価)。セリエA4位(ただし、ユベントスへのペナルティーによる)。戦力補強の投資額-5000 万ユーロ(約73億円/セリエA最高額ながら、投資に見合ったのはマリック・チャウだけだった)」と、現オーナー側の見解を示している。
なお同メディアは、ミランがシーズン終盤で苦戦していた際、マルディーニはCL出場権を獲得できなかった場合にはステーファノ・ピオーリの代わりに、現役時代に数々の栄光をともに手にした盟友であるアンドレア・ピルロ(今季はファティ・カラギュムリュクを指揮)を迎えようと考え、実際にトルコまで足を運んだというが、ピオーリ監督を高く評価して“アンタッチャブル”な存在としているオーナーとは、ここでも意見が対立してしまったようだ。
また、2017年にミランが中国資本に買収された際、クラブのSDに就任し、現在はパドバで同職を務めるマッシミリアーノ・ミラベッリは、出演したラジオ番組『1FOOTBALL CLUB』で、「青天の霹靂とは言えず、彼らの間で摩擦があるのは知っていた。ただ、ミランはリーグとCLの両方で重要な目標を達成しており、今回の決定には、完全には同意できない。成果は重視されるべきであり、近年達成した業績は圧倒的に良好だ。マルディーニとマッサーラは、自身のスキルを発揮し続けることを承認されるべきだった」と主張した。
一方で、イタリア人ジャーナリストのジャンカルロ・パドバン氏は、サッカー専門サイト『Calciomercato.com』で、「1年前、マルディーニは新オーナーの信頼を得、まともな予算(5000万ユーロ)と決定権という、彼が望んでいたものを手に入れたが、残念ながら結果は、彼にとっても、ピオーリ監督にとっても、そしてミランにとっても、失敗に終わった」と厳しく評価し、以下のように続けている。
「シャルル・デ・ケテラーレ、ディボック・オリギと、補強の失敗が有害な雰囲気をクラブに生み出すなど、ミスの連続だった。そして、マルディーニとピオーリ監督の間にも亀裂が生じ、指揮官は(マルディーニが獲得した)新加入選手を理由なくメンバーから外すことさえあった。カルディナーレ・オーナーはもうそれに耐えられず、マルディーニとは違う誰かと一緒に歩むことを決断した」
なお、同氏はマルディーニの後釜について、「私なら18年間素晴らしい仕事を果たしてラツィオを去ったイグリ・ターレを真っ先に選ぶ」と、ナポリからの引き合いもあるという元アルバニア人選手を推薦。また、スカウティング責任者のジョフリー・モンカダに対しても、「彼の仕事は非常に優れている」と高評価している。ちなみにジャーナリストのアントニオ・ヴィティエッロ氏によれば、モンカダは「マルディーニには、私の提案はあまり聞いてもらえなかった」と明かしたという。 いずれにせよ、ミランは新たな体制をスタートすることになり、そこではカルディナーレ・オーナーが、これまでの一番の主題だった新スタジアム建設だけでなく、クラブの様々な点に積極的に関わることとなり、「真のミラニスタで、絶対に間違いを犯さない」(パドバン氏)フルラーニCEOらもこれまで以上に存在感を増すことになると見られる。
2009年5月31日に現役引退によってミランから去り、9年後に戦略開発ディレクターとして古巣に戻り、翌年にレオナルドの後を受けてTDを務めてきたマルディーニ。1年目でテオ・エルナンデズ、レオンといった現在の主力選手との契約をまとめ上げ、チームに勝者のメンタリティーを植え付けられるイブラヒモビッチを招聘した。獲得だけでなく、クラブの宝でもあったジャンルイジ・ドンナルンマとの契約延長交渉を打ち切るなど、時に毅然とした態度でクラブの強化に努めてきた。
ここまで34選手の獲得に関与してきたレジェンド。本来なら、35人目として鎌田大地(フランクフルト)を迎え入れるはずだったが……。ちなみにこの日本代表MFについては、マルディーニ退任によって「交渉が白紙に戻った」との報道も流れたが、今後は補強でもより強い影響力を持つといわれるピオーリ監督自身が高く評価していることもあり、移籍専門記者のジャンルカ・ディ・マルツィオ氏も「鎌田は、レアル・マドリーに戻るブラヒム・ディアスと入れ替わりにロッソネロに加入する」と伝えている。
レジェンドとの2度目の別れは、ミランに再び苦難の時をもたらすことになるのか、あるいはクラブとしてさらなる飛躍を遂げるために必要なことだったのかは、今後判明することになるだろうが、クラブ専門サイト『MILAN PRESS』は「5年間に永遠の背番号3が成し遂げてくれたことに感謝する。そしてミランが新しくなっても、あなたが成し遂げたことを忘れないことを願っている」、日刊紙『CORRIERE DELLA SERA』は「愛情と感謝の気持ちは永遠に残る」と、マルディーニの労をねぎらい、感謝の意を示した。
構成●THE DIGEST編集部
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クラブは公式サイトで「パオロ・マルディーニが2023年6月5日をもってクラブでの任期を満了することを発表する。ミランのチャンピオンズ・リーグ(CL)復帰やセリエA優勝など、長年にわたる彼の貢献に感謝する」との声明を発し、ジョルジョ・フルラーニCEOは、マルディーニ、そして同時に退任が濃厚(現時点でクラブからは未発表)なスポーツディレクターのフレデリク・マッサーラにも言及している。
「パオロとリッキー(マッサーラ)に感謝の意を表したい。そしてこの数年間、クラブに貢献してくれた協力者全員にも感謝したい。パオロは史上最高の選手のひとりであり、マネジャーとしてリッキーとともに、19回目のスクデット獲得を達成するために重要な役割を果たした。彼らが去ってしまうのは残念だ」
新たな体制下でミランの中心的な役割を担うことになるクラブCEOは、レジェンドとの別れを惜しんだが、この電撃的な人事の原因は、クラブとマルディーニの意見の相違によるものであると現地メディアは報道。昨年6月に2年契約を新たに結んだマルディーニだったが、ミランを買収した「レッドバード・キャピタル」の創設者でCEOのジェリー・カルディナーレとの会談において、今季の成績や来季の補強に向けて考えが合致しなかったという。
6月4日に行なわれたセリエA最終節(対ヴェローナ)の後のセレモニーでピッチに姿を現わしたマルディーニ。ここで現役引退を発表した大功労者のズラタン・イブラヒモビッチを称えるのが、レジェンドの最後の仕事になるとは、選手も予想していなかったようで、先日、ようやく契約延長を発表したばかりのラファエウ・レオンやマイク・メニャンが自身のSNSで意味深な投稿をして注目を集めている。
また、一部のファンもクラブのシンボル的存在への“仕打ち”に対して不満や怒りを表わし、SNSでの書き込みはもちろん、ミランのオフィス「カーサ・ミラン」の前で抗議活動を行なったり、「マルディーニとマッサーラへの連帯を示す」行為として全てのミラニスタに向けて来季のシーズンチケットやグッズの購入のボイコットを呼びかけたりと、様々な行動を起こしている。 現地メディアでは、『Gazzetta dello Sport』紙は「決して良いシーズンではなかったが、捨てたものでもない。セリエAでは4位を獲得。CLでは、昨季までに7年間も出場権を逃していたにもかかわらず、最も権威あるカップ戦に戻ってからわずか2年で準決勝まで駒を進めた」と、今季のミランの成績を評価したが、「最後に貸借対照表を作成し、結果に基づいて評価することに慣れている実業家のカルディナーレのビジョンでは、明らかにマルディーニがもたらしたものは彼を満足させなかった」と綴った。
一方、同じスポーツ紙の『Corriere dello Sport』は、「カルディナーレはミランの冷酷なオーナーとしての振る舞いを見せ、マルディーニの輝かしい過去にはほとんど興味を示さず、今季について記録した結果は、わずか3つだけだった。CL準決勝進出(これは高評価)。セリエA4位(ただし、ユベントスへのペナルティーによる)。戦力補強の投資額-5000 万ユーロ(約73億円/セリエA最高額ながら、投資に見合ったのはマリック・チャウだけだった)」と、現オーナー側の見解を示している。
なお同メディアは、ミランがシーズン終盤で苦戦していた際、マルディーニはCL出場権を獲得できなかった場合にはステーファノ・ピオーリの代わりに、現役時代に数々の栄光をともに手にした盟友であるアンドレア・ピルロ(今季はファティ・カラギュムリュクを指揮)を迎えようと考え、実際にトルコまで足を運んだというが、ピオーリ監督を高く評価して“アンタッチャブル”な存在としているオーナーとは、ここでも意見が対立してしまったようだ。
また、2017年にミランが中国資本に買収された際、クラブのSDに就任し、現在はパドバで同職を務めるマッシミリアーノ・ミラベッリは、出演したラジオ番組『1FOOTBALL CLUB』で、「青天の霹靂とは言えず、彼らの間で摩擦があるのは知っていた。ただ、ミランはリーグとCLの両方で重要な目標を達成しており、今回の決定には、完全には同意できない。成果は重視されるべきであり、近年達成した業績は圧倒的に良好だ。マルディーニとマッサーラは、自身のスキルを発揮し続けることを承認されるべきだった」と主張した。
一方で、イタリア人ジャーナリストのジャンカルロ・パドバン氏は、サッカー専門サイト『Calciomercato.com』で、「1年前、マルディーニは新オーナーの信頼を得、まともな予算(5000万ユーロ)と決定権という、彼が望んでいたものを手に入れたが、残念ながら結果は、彼にとっても、ピオーリ監督にとっても、そしてミランにとっても、失敗に終わった」と厳しく評価し、以下のように続けている。
「シャルル・デ・ケテラーレ、ディボック・オリギと、補強の失敗が有害な雰囲気をクラブに生み出すなど、ミスの連続だった。そして、マルディーニとピオーリ監督の間にも亀裂が生じ、指揮官は(マルディーニが獲得した)新加入選手を理由なくメンバーから外すことさえあった。カルディナーレ・オーナーはもうそれに耐えられず、マルディーニとは違う誰かと一緒に歩むことを決断した」
なお、同氏はマルディーニの後釜について、「私なら18年間素晴らしい仕事を果たしてラツィオを去ったイグリ・ターレを真っ先に選ぶ」と、ナポリからの引き合いもあるという元アルバニア人選手を推薦。また、スカウティング責任者のジョフリー・モンカダに対しても、「彼の仕事は非常に優れている」と高評価している。ちなみにジャーナリストのアントニオ・ヴィティエッロ氏によれば、モンカダは「マルディーニには、私の提案はあまり聞いてもらえなかった」と明かしたという。 いずれにせよ、ミランは新たな体制をスタートすることになり、そこではカルディナーレ・オーナーが、これまでの一番の主題だった新スタジアム建設だけでなく、クラブの様々な点に積極的に関わることとなり、「真のミラニスタで、絶対に間違いを犯さない」(パドバン氏)フルラーニCEOらもこれまで以上に存在感を増すことになると見られる。
2009年5月31日に現役引退によってミランから去り、9年後に戦略開発ディレクターとして古巣に戻り、翌年にレオナルドの後を受けてTDを務めてきたマルディーニ。1年目でテオ・エルナンデズ、レオンといった現在の主力選手との契約をまとめ上げ、チームに勝者のメンタリティーを植え付けられるイブラヒモビッチを招聘した。獲得だけでなく、クラブの宝でもあったジャンルイジ・ドンナルンマとの契約延長交渉を打ち切るなど、時に毅然とした態度でクラブの強化に努めてきた。
ここまで34選手の獲得に関与してきたレジェンド。本来なら、35人目として鎌田大地(フランクフルト)を迎え入れるはずだったが……。ちなみにこの日本代表MFについては、マルディーニ退任によって「交渉が白紙に戻った」との報道も流れたが、今後は補強でもより強い影響力を持つといわれるピオーリ監督自身が高く評価していることもあり、移籍専門記者のジャンルカ・ディ・マルツィオ氏も「鎌田は、レアル・マドリーに戻るブラヒム・ディアスと入れ替わりにロッソネロに加入する」と伝えている。
レジェンドとの2度目の別れは、ミランに再び苦難の時をもたらすことになるのか、あるいはクラブとしてさらなる飛躍を遂げるために必要なことだったのかは、今後判明することになるだろうが、クラブ専門サイト『MILAN PRESS』は「5年間に永遠の背番号3が成し遂げてくれたことに感謝する。そしてミランが新しくなっても、あなたが成し遂げたことを忘れないことを願っている」、日刊紙『CORRIERE DELLA SERA』は「愛情と感謝の気持ちは永遠に残る」と、マルディーニの労をねぎらい、感謝の意を示した。
構成●THE DIGEST編集部
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