チームMVP、10年ぶりのCL出場権獲得…R・ソシエダ1年目の久保建英を地元記者が総括!鮮烈なパフォーマンスを発揮した“日本の至宝”のリアル評価
2023年06月20日 05時00分THE DIGEST

R・ソシエダ1年目の久保はラ・リーガ移籍後、過去最高のキャリアを刻んだ。(C) Getty Images
「ワクワクさせる新戦力って何だ?タケ(久保建英)は、そうじゃなかったのか?」
2022-2023シーズンを総括する記者会見で、レアル・ソシエダが今夏、「ワクワクさせる新戦力を迎える予定があるか」と問われたロベルト・オラベSD(スポーツディレクター)は、皮肉を込めてこう返した。
「答えは『ノー』だ」。
久保はレアル・マドリーの選手として3年間レンタル移籍を繰り返してきた。新たなクラブでの挑戦に臨むにあたり、彼は昨年7月、完全移籍でレアル・ソシエダに加入した。すると、この日本人はラ・リーガ第1節カディス戦での初ゴールを皮切りに、序盤からレギュラーの座を奪い、終わってみればファン投票によるシーズンMVPに選出されるほどの働きを見せた。
今季の久保の大活躍は、要求水準が極めて高いマインドでやってきたこととも無関係ではない。当時21歳の若者が、「僕にとって、最終電車だ」と口にするほど、もう後がない覚悟で新天地に挑むのは、普通では考えられないことだ。
今シーズンは彼のキャリアにおいて、重要なターニングポイントとなったのは間違いないだろう。もともと才能は折り紙付きである。それは、2019年夏にレアル・マドリーに加入して以来、レンタルでの獲得を巡り多くのクラブによって激しい争奪戦が繰り広げられていたことが示している。
ただ、その割にはマジョルカ、ビジャレアル、ヘタフェ、そしてふたたびマジョルカと続いた3シーズンのレンタル生活での成果は1シーズン目を除けば芳しくはなく、それが伸び悩みという評価につながっていた。
今季のラ・リーガで眩い活躍を見せた久保のブレイクスルーの要因はいくつもある。まずは、自分の可能性を信じて妥協せずに努力し続けることができる貪欲さ。次に、違いを生み出すことができる研ぎ澄まされたテクニック。負けず嫌いぶりも際立ち、ベンチスタートや交代を命じられると怒りを露わにし、常にピッチでプレーしたがる姿勢を見せている。
ドリブルの威力も試合を重ねるごとに磨きをかける。それはまるで、ガラス瓶に閉じ込められたスズメバチのように、出口を見つけるまで止まることなく飛び回り、一瞬の隙を見逃さず相手を刺すかのように、久保は貪欲にゴールを狙った。 今季は9ゴール9アシストと、シーズン当初に掲げた20得点に絡むという目標の達成まで、もう少しのところまで迫った。もっともそれは、あくまで数字上の話であり、決定的な仕事を連発するアタッカーの重要性をすべて明らかにしているわけではない。
オラベSDが久保の獲得に執心したのは、中盤ダイヤモンド型の4-4-2と4-3-3の2つのシステムに完璧にフィットするユーティリティ性を評価したからでもある。実際、ダビド・シルバが不在の試合は中央でプレーし、ウイングとしては並み居るDFを切り裂いてきた。
もちろん、こうした活躍の背景にプレースタイルの親和性の高さを挙げないわけにはいかない。ラ・レアルは60%のカンテラ出身と40%の外部から獲得した選手で構成されたチーム陣容に基づく確たるフィロソフィーを持っているのだ。
クラブが補強ターゲットを選定する際に重視しているのは、若さと向上心である。久保は、そのプロフィールにまさに合致しており、そこに「もっとできる」と要求し続けるイマノル・アルグアシル監督、風光明媚で静かなグルメの街として有名なサン・セバスティアンというソフト面とハード面の充実が加わった。
昨シーズン、マジョルカで2得点3アシストにとどまったとはいえ、ボールを持てば相手DFに恐怖と混乱をもたらす久保の能力は、誰の目にも明らかだった。若い選手の才能を開花させるバックボーンがラ・レアルにはあり、久保の場合もその成長を支えた。
チームワークも抜群で、ラ・レアルの選手たちは「ここは特別な雰囲気がある」と声を揃える。久保のチーム加入と同時に送付したプレゼンテーション動画は、表情と話しぶりのギャップがチームメイトの笑いを誘い、いじられキャラが定着した。彼はわずか1年でピッチ内外で欠かせない選手になった。前線でコンビを組んだアレクサンダー・セルロトの言葉がチームにおける歓迎ぶりを象徴している。
「タケがすごいのは知っていたけど、ここまでとは思わなかった」
チームメイトや監督、コーチのハートをガッチリ掴んだ久保はラ・レアルで確固たる地位を確立した。ラ・リーガで過去最高キャリアを打ち立て、チームは4位でフィニッシュ。10年ぶりに欧州チャンピオンズ・リーグ出場を決めた。
来季はライバルチームからのマークが、より一層厳しくなることが予想されるが、ピッチを縦横無尽に駆け抜けるタケの活躍を大いに期待したい。
取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア記者)
翻訳●下村正幸
【動画】R・ソシエダ加入1年目で大活躍!!久保建英の全ゴールをプレイバック
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2022-2023シーズンを総括する記者会見で、レアル・ソシエダが今夏、「ワクワクさせる新戦力を迎える予定があるか」と問われたロベルト・オラベSD(スポーツディレクター)は、皮肉を込めてこう返した。
「答えは『ノー』だ」。
久保はレアル・マドリーの選手として3年間レンタル移籍を繰り返してきた。新たなクラブでの挑戦に臨むにあたり、彼は昨年7月、完全移籍でレアル・ソシエダに加入した。すると、この日本人はラ・リーガ第1節カディス戦での初ゴールを皮切りに、序盤からレギュラーの座を奪い、終わってみればファン投票によるシーズンMVPに選出されるほどの働きを見せた。
今季の久保の大活躍は、要求水準が極めて高いマインドでやってきたこととも無関係ではない。当時21歳の若者が、「僕にとって、最終電車だ」と口にするほど、もう後がない覚悟で新天地に挑むのは、普通では考えられないことだ。
今シーズンは彼のキャリアにおいて、重要なターニングポイントとなったのは間違いないだろう。もともと才能は折り紙付きである。それは、2019年夏にレアル・マドリーに加入して以来、レンタルでの獲得を巡り多くのクラブによって激しい争奪戦が繰り広げられていたことが示している。
ただ、その割にはマジョルカ、ビジャレアル、ヘタフェ、そしてふたたびマジョルカと続いた3シーズンのレンタル生活での成果は1シーズン目を除けば芳しくはなく、それが伸び悩みという評価につながっていた。
今季のラ・リーガで眩い活躍を見せた久保のブレイクスルーの要因はいくつもある。まずは、自分の可能性を信じて妥協せずに努力し続けることができる貪欲さ。次に、違いを生み出すことができる研ぎ澄まされたテクニック。負けず嫌いぶりも際立ち、ベンチスタートや交代を命じられると怒りを露わにし、常にピッチでプレーしたがる姿勢を見せている。
ドリブルの威力も試合を重ねるごとに磨きをかける。それはまるで、ガラス瓶に閉じ込められたスズメバチのように、出口を見つけるまで止まることなく飛び回り、一瞬の隙を見逃さず相手を刺すかのように、久保は貪欲にゴールを狙った。 今季は9ゴール9アシストと、シーズン当初に掲げた20得点に絡むという目標の達成まで、もう少しのところまで迫った。もっともそれは、あくまで数字上の話であり、決定的な仕事を連発するアタッカーの重要性をすべて明らかにしているわけではない。
オラベSDが久保の獲得に執心したのは、中盤ダイヤモンド型の4-4-2と4-3-3の2つのシステムに完璧にフィットするユーティリティ性を評価したからでもある。実際、ダビド・シルバが不在の試合は中央でプレーし、ウイングとしては並み居るDFを切り裂いてきた。
もちろん、こうした活躍の背景にプレースタイルの親和性の高さを挙げないわけにはいかない。ラ・レアルは60%のカンテラ出身と40%の外部から獲得した選手で構成されたチーム陣容に基づく確たるフィロソフィーを持っているのだ。
クラブが補強ターゲットを選定する際に重視しているのは、若さと向上心である。久保は、そのプロフィールにまさに合致しており、そこに「もっとできる」と要求し続けるイマノル・アルグアシル監督、風光明媚で静かなグルメの街として有名なサン・セバスティアンというソフト面とハード面の充実が加わった。
昨シーズン、マジョルカで2得点3アシストにとどまったとはいえ、ボールを持てば相手DFに恐怖と混乱をもたらす久保の能力は、誰の目にも明らかだった。若い選手の才能を開花させるバックボーンがラ・レアルにはあり、久保の場合もその成長を支えた。
チームワークも抜群で、ラ・レアルの選手たちは「ここは特別な雰囲気がある」と声を揃える。久保のチーム加入と同時に送付したプレゼンテーション動画は、表情と話しぶりのギャップがチームメイトの笑いを誘い、いじられキャラが定着した。彼はわずか1年でピッチ内外で欠かせない選手になった。前線でコンビを組んだアレクサンダー・セルロトの言葉がチームにおける歓迎ぶりを象徴している。
「タケがすごいのは知っていたけど、ここまでとは思わなかった」
チームメイトや監督、コーチのハートをガッチリ掴んだ久保はラ・レアルで確固たる地位を確立した。ラ・リーガで過去最高キャリアを打ち立て、チームは4位でフィニッシュ。10年ぶりに欧州チャンピオンズ・リーグ出場を決めた。
来季はライバルチームからのマークが、より一層厳しくなることが予想されるが、ピッチを縦横無尽に駆け抜けるタケの活躍を大いに期待したい。
取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア記者)
翻訳●下村正幸
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