プロ15年目の内田篤人が見せるベテランの矜持とルーキー荒木遼太郎に寄せる期待

プロ15年目の内田篤人が見せるベテランの矜持とルーキー荒木遼太郎に寄せる期待

ルーキーイヤーに開幕戦出場という共通点を持つ荒木(左)と内田(右)。写真:サッカーダイジェスト写真部

プロ15年目の内田篤人とプロ1年目の荒木遼太郎には、ひとつの共通点がある。

 それは高卒ルーキーとしてJリーグの開幕戦に出場したことだ。内田はスタメン、荒木は途中出場という違いはあるものの、対戦相手が同じ広島で、同じアウェーのスタジアムという奇遇も重なる。

 2006年3月5日、その4日前に清水東高の卒業式を終えたばかりの内田は、広島ビッグアーチ(現・エディオンスタジアム広島)のピッチに立っていた。17歳11か月6日――。背番号20のユニホームを身にまとう初々しい姿がそこにあった。

 鹿島のクラブ史上、高卒ルーキーがJリーグの開幕スタメンの座を勝ち取ったのは現時点に至るまで内田ただひとりである。

「緊張しまくった。チームの迷惑にならないようにプレーしたかったけれど、ミスが多すぎた」と、試合後、反省の弁を述べていたが、積極的にサイドを駆け上がり、22分にPKを誘発。先制ゴールのきっかけを作った。
  試合は激しい点の取り合いの末、4−3で鹿島が勝利を収める。ルーキーにはあまりにも濃密すぎる90分。その戦いを終え、精根尽き果てたかのような内田の表情が印象的だった。
 
 あれから14年の歳月が流れた今年の2月23日、ザーゴ新監督に率いられた鹿島はアウェーの地、広島に乗り込み、Jリーグ開幕戦を迎えた。

 前半のうちに2点のリードを許す苦しい展開のなか、60分に投入されたのが荒木だった。東福岡高の卒業式を1週間後に控えていたので、正しくは高卒ルーキーではなく、高校在学中ルーキーになるわけだが、そんな話はともかく、スキルフルで、小気味のいいプレーで存在感を示した。

 試合終了間際に3点目を奪われ、鹿島は一矢報いるどころか、完敗を喫してしまったが、ザーゴ監督は「右サイドの攻撃を活性化してくれた」と、荒木の溌溂としたパフォーマンスに及第点を与えている。

 可能性を秘めた新星の出現はチームに希望をもたらす。それはいつの時代も変わらない。

 日増しに評価を高める荒木の姿を、すっかりベテランの域に入ってきた内田が温かく見守っている。
  2月1日、水戸とのプレーシーズンマッチでは両選手が右サイドで縦関係になってプレーした。結果は1−0。スコアラーは荒木だった。

「身体は小さいけれど、技術がしっかりしているし、プレッシャーをかけられてもそんなに慌てない。高卒で、ポンと入って、(Jリーグの)スピードとか、身体の強さとか、今までとは違うものを感じているだろうけどね。練習を見ていてもうまいなと思う。松村(優太)もそうだけど、自分の持ち味を遠慮せずに出そうとしているし、これからの成長が楽しみだね。年をとったせいかもしれないけれど、若い選手がのびのびとプレーしているのを見るのは何だかうれしいよ(笑)」

 2人がピッチ上で会話をかわすシーンが何度か見られた。どのような内容だったのか、内田に尋ねると「“相手を背負っているとき、どうしたらいいですか?”みたいなことを聞かれたから、“(ボランチの永木)亮太、空いてない?”って。そんな感じかな」と話し、こう続けた。

「俺が(荒木に)ボールを当てて、ガシャンとなって、ボールを取られたときがあったけれど、全部が全部うまくいくわけじゃないからね」

 ボランチが空いていたら、そこにボールをつければいいし、自分のところで無理しなくてもいい。
  何だったら周りの先輩に頼ればいい。そんなふうにも言いたげだった。なぜなら、ルーキー時代の自分がそうだったから――。

「俺は周りの人たちに本当に恵まれた。(小笠原)満男さん、岩政(大樹)さん、野沢(拓也)さん……。近いポジションの先輩たちにいろいろ助けてもらった。その役割をね、今度は自分がしなくちゃと思っている」

 Jリーグの開幕戦から12試合連続フルタイム出場を果たしたプロ1年目の内田は、通算28試合に出場し、合わせて2378分間ピッチに立った(Jリーグのみの実績)。

 新型コロナウイルスの影響で、現在、公式戦がすべて延期されているが、ルーキーシーズンを戦う荒木が、最終的にどのような数字を残すのか、ひとつの関心事でもある。

取材・文●小室功(オフィスプリマベーラ)
 

関連記事(外部サイト)