デビュー1年でJ2からJ1へ移籍。サクセスストーリーを駆け上がるC大阪・坂元達裕の向上心【独占インタビュー前編】

デビュー1年でJ2からJ1へ移籍。サクセスストーリーを駆け上がるC大阪・坂元達裕の向上心【独占インタビュー前編】

J2山形から個人昇格を果たした坂元。ドリブルを武器にレギュラー奪取に燃える。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

昨年は大卒1年目ながらJ2の山形で42試合・7得点と活躍し、今年はJ1のC大阪へとスピード出世を果たした坂元達裕も、エリート街道を歩んできたわけではない。スランプに陥っていた中学時代、チームを引っ張る責任感に押し潰されそうになった大学時代と、挫折を繰り返して逞しく成長し、いつしか逆境を楽しめる強さを手に入れた。そんな雑草魂のドリブラーがJ1の舞台でさらなる飛躍を遂げようとしている。

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 話しぶりはプロ2年目らしく、まだ初々しさを残し、受け答えは謙虚そのもの。一度言葉を交わしただけで、人柄の良さが伝わってくる。一方で、その柔和な表情の裏に、どこか並々ならぬ熱さを感じさせる。コメントの節々に、自らの道を切り開いてやろうという、そんな力強いエネルギーをうかがわせるのだ。

「2、3人に囲まれても崩していく自信はある。サポーターのみなさんをワクワクさせたいです」

 今年のセレッソ大阪の始動会見で、坂元達裕はそう豪語していたが、この新加入のドリブラーは、その言葉に違わぬパフォーマンスを見せている。

 先発出場したプレシーズンマッチの京都戦で切れ味鋭いカットインからゴールを奪うと、ルヴァンカップの松本戦、J1開幕節の大分戦でもスタメンで起用された。
  大分戦で最もインパクトを残したのは70分だった。ピッチ中央でボールを受けた坂元は、すかさずスピードを上げ、グングンと相手陣内を突き進んでいく。そして追走してくる相手を振り切ると、強烈なミドルシュートを見舞う。惜しくもボールは枠を外れたものの、最大の武器を存分に見せつけ、スタジアムを沸かせてみせた。

 非凡な打開力を誇る坂元は、すでにチームの大きな戦力となり、今にも右サイドハーフの定位置を掴む勢いだ。飛躍の気配が漂うドリブラーを突き動かすものはなんなのか。その成長の理由に迫った。

■実はずっとキックが苦手で。どうしても得意なドリブルを選んでしまっていた。

――公式戦が延期となってしまいました。どんな心境ですか。[編集部・注/新型コロナウイルスの影響でJリーグの公式戦が開催延期に]

「ルヴァンカップの松本戦、リーグ開幕の大分戦と連勝して良い流れが生まれていたし、僕自身のコンディションも上がっていました。正直、レギュラー定着のために次の試合が重要だと意気込んでいたこのタイミングで、間隔が空くのは少し嫌ですね。まあ、この空いた時間で準備できることはたくさんあるので、そういう意味ではプラスに捉えたいです」
 ――この中断期間はどんなことを意識して過ごしていますか?

「キャンプから積み上げてきたことを、もう一度整理しています。特にクロスには力を入れています。昨年までクロスでのチャンスメイクは、なかなかやってこなくて、今年からトライしている部分です」

――なぜ、今まではやってこなかったのですか?

「実はずっとキックが苦手で。ドリブルのほうが得意だから、どうしてもそっちを選んでしまっていました。パスも上手くならなきゃと頭では分かっていても、なかなかちゃんと実践するきっかけがなくて、そのままズルズルと(笑)」

――確かに昨季いた山形では、アシストよりも自力で打開してシュートを打つ場面が多かったですね。

「山形には三鬼海くんや柳(貴博)と、縦に抜けてクロスを上げられる選手がいて、僕はシャドーのポジションでボールを持って仕掛ける仕事を求められていました。相手の守備陣形を崩したり、ファウルを誘ったり、そういう役割でした」

――一方でセレッソでは?

「セレッソはまた山形とサッカーが違って、僕が担うサイドハーフのチャンスメイクが重要になってきます。だから最近はプレーの選択肢を増やすことを意識するようになって、キャンプから重点的にクロスのトレーニングをしています」
 ――プレーの選択肢が増えれば、相手からしても、より脅威の存在になれると。

「そのとおりです。ドリブルにはもちろん自信はあります。でも昨季の終盤はフェイントがかかりにくくなっていたのも事実です。やっぱりいつも同じパターンでは読まれてしまう。例えばキックフェイントひとつ取っても、『どうせ蹴らないだろう』ってディフェンダーに思われたら効果がない。そこで鋭いクロスを上げられるようになれば、相手に迷いを生じさせられる。自分のドリブルを活かすためにも、味方を使う術も覚えたほうがいいなと」

――試合や練習を見ている限り、キックが苦手だったとは信じられません。バシバシ鋭いクロスを入れている印象です。

「少しは上手くなってきているかもしれません。プレシーズンの京都戦では僕のクロスが直接ゴールに入って得点が生まれましたし、ちょっとずつモノにはなってきているのかな」
 ■常に一番下だと思っている。良いプレーは全部自分のものにしようって。

――監督からはクロス以外にどんな要求をされますか?

「事細かに何かは言われません。サイドで1対1になったら、どんどんチャレンジしろと信頼を寄せてくれています」

――ボールを持ったら割と自由にやれていると。

「はい。後ろの陸くんも『やりたいようにやれ』と言ってくれています」

――攻守に走れる松田選手が後ろにいるのは頼もしいですね。

「それはもうかなり。守備に関してもアドバイスをくれるし、僕が仕掛けやすいように相手をひきつけてもくれる。本当に助かっています」

――松田選手も含めて味方との連係はどうですか?

「どんどん良くなっています。陸くんとは、もっと連係が密になれば、どんな相手でも崩せるんじゃないかってくらい。あとは逆サイドの(柿谷)曜一朗くんやキヨ(清武弘嗣)くんも、いつも僕の動き出しを見てくれていて、足もとにピッタリとパスを出してくれる。僕はまだそれだけの技術がないけど、ふたりのような絶妙なパスを出せるように練習しないといけません」

――やはり柿谷選手、清武選手と一緒にプレーすると勉強になる?

「すべてが参考になっています。まだ僕はプロ2年目で知らないことだらけです。昨年の山形でも本当にみんなレベルが高くて、いろんなものを吸収できました。今年環境が変わったのも、またレベルアップできる機会だと感じています。それにJ1でトップクラスの選手が揃うセレッソですからね。もっともっと成長できると確信しています」
 ――そんなセレッソでレギュラーの座を掴もうとしてます。プロに入った頃、想像できましたか?

「いえ、まったく。だって大学時代はどこからも声がかからなくて、練習参加した山形にギリギリ拾ってもらった身ですからね。それからたった1年でこうしてJ1の舞台に立てるなんて」

――想像以上の成長が出来ている要因をなんだと分析していますか?

「周りの人のプレーをうまく吸収できているのかな。常に一番下だと思っていますし、良いプレーは全部自分のものにしようって。そういう姿勢でいるから、着実に技術や考えが成長している実感はあります」

PROFILE
さかもと・たつひろ/ 1996年10月22日生まれ、東京都出身。170cm・63s。青葉FC―FC東京U−15むさし―前橋育英高―東洋大―山形―C大阪。J1通算1試合・0得点。J2通算42試合・7得点。自他ともに認める最大の武器が、独特なリズムを刻むドリブル。素早い動きで相手を翻弄し、一瞬にして抜き去る。C大阪に加入した今季は、キャンプからの精力的なアピールが実り、公式戦2試合連続でスタメンに。今後のレギュラー定着が期待される人材だ。

取材・文●多田哲平(サッカーダイジェスト編集部)

※『サッカーダイジェスト』2020年3月26日号より転載
 

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