ドウグラスが神戸移籍を即断した理由、そして“イニエスタ”という存在について【独占インタビュー前編】

ドウグラスが神戸移籍を即断した理由、そして“イニエスタ”という存在について【独占インタビュー前編】

今年でJリーグでのキャリアは10年目を迎えるドウグラス。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

代名詞とも言える弾丸ヘッド、しなやかな身のこなしから放つバイシクルシュート、左足から繰り出される正確なFKと、そのゴールパターンは実に多彩だ。

 2010年〜20年における助っ人のJ1通算得点ランキングでは現在6位(46点)。1試合平均0.5得点は、上位10選手のうち2位タイの数字である。

 15年にはサンフレッチェ広島でJ1優勝に大きく貢献し、ベストイレブンに選出。昨季まで1年半在籍した清水エスパルスでは2シーズン連続二桁得点を挙げ、攻撃陣を力強く牽引した。そして今年は、ヴィッセル神戸へと移籍。元スペイン代表のスター、アンドレス・イニエスタを擁し、昨季の天皇杯優勝を契機に一時代を築こうと意気込むタレント集団の一員となった。

 今や日本国内で誰もが認めるリーグ屈指の実力者となったドウグラス。しかしそんな助っ人も、来日してから数年は「本当に辛い時期を過ごした」という。実際、10年の来日から3年間はいずれも4ゴールにとどまっている。

 それでもドウグラスには、助っ人としての確固たる心得があった。

“日本で大成するためには――”。

 その答を訊くために、公式戦が中断となっている今、リーグ再開後のゴールラッシュに向けて調整を続けるブラジル人ストライカーのもとを訪ねた。
 ■神戸のスタイルから色々なものを学びともに成長したい

――公式戦の延期が続いていますが、調整はよくできていますか?[編集部・注/インタビューは3月26日に実施]

「いつ再開するのか分からず難しい状況ですけど、調子はいいですよ。中断期間が明けてからまた結果を出せるようにしないといけません」

――チームの雰囲気はどうですか?

「とても和やかです。ゼロックスもACLも良い内容で戦えていたので、本音を言えば、そのままの勢いでいきたかった。今はチームの全員で良いリスタートが切れるように準備をしています」

――ご自身はこの期間に何を意識していますか?

「コンディションを落とさないよう、すごく気を遣っています。キャンプから段々と仕上げていって、ようやくベストに近くなったところで、中断してしまいました。少しでも緩んでしまうと取り戻すのに時間がかかるので、体調のキープを第一に考えています」
 ――チームへのフィット具合は?

「ピッチ内でも、ドレッシングルームでもうまく溶け込めているんじゃないかな。練習となれば真剣だし、ピッチを離れれば仲良く。そういう雰囲気がこのクラブにはもともとあるので、馴染むのは難しくなかったです。それに戦術にも順調にアダプトできています。公式戦で調整できれば、もっと噛み合うはずですけど、今は仕方ないですね。練習で少しずつ合わせていっています」

――フィンク監督のサッカーは理解できている?

「他の選手はもうほぼパーフェクトでしょう。昨季に天皇杯のタイトルを獲れた事実が、それを証明していますよね。僕も監督が求めていることや、チームメイトからの要求をある程度は分かってきました。これから伸ばすべき部分もね」

――どこを伸ばそうと?

「具体的に説明するのは難しいですが、さっきも言った連係面とかです。神戸のサッカーのスタイルから色々なものを学んで、チームとともに成長していきたい。毎日が勉強です」

――素晴らしい心構えですね。

「チームのスタイルによって、意識することや学ぶことは違います。例えば神戸だったら、ポゼッションする時の位置取りや、相手にスペースを与えない動き方です。そういうリスクマネジメントの仕方、攻めるタイミングといった局面局面での戦い方はチームによって変わり、選手の役割も変わってくる。日々の練習と試合の積み重ねで選手が気付いて実践することが、チームのレベルアップにつながるんです」

――そうした“気付き”は、この中断期間で得られていますか?

「もちろん。どんどんチームが進化しているのは間違いありません
 ■成長期にある神戸で当然ながら自分も名を残したい。

――昨年の神戸にはどんな印象を抱いていましたか?

「ハイクオリティな選手が揃っていて、自信を持って戦うチーム。神戸と対戦する時は、僕がいた清水だけではなく、どのチームも警戒を強めていたはずです」

――正直対戦するのは嫌だった?

「危機感は常にありました。自由にやらせたら簡単に点を取られてしまいますから。逆に、そういう強敵からゴールを奪って勝てば、自分とチームの価値は上がるし、チャンスとも捉えていました」

――昨年の清水のホームゲームでは、ドウグラス選手の1得点・1アシストで清水が逆転勝利しましたね。

「チームのために全力で戦った結果です。献身的なプレーや姿勢を評価してもらったからこそ、こうして神戸に来るチャンスをもらえた。この機会をくれた人たちにすごく感謝していますし、彼らの期待や信頼に応えるのが、選手としての義務。それは常に忘れていません」
 ――徳島時代も広島時代も神戸からゴールを奪っています。そんなドウグラス選手は、神戸からしたら頼もしい戦力でしょう。

「僕が対戦していた時以上に、相手にとってやりにくいチームにしたい。神戸は成長期にあるし、今まさに良い時代がスタートしたところ。当然そこに自分も名を残したいです」

――その想いが加入の決め手に?

「数年前からビッグプロジェクトを進めているのを知っていました。対戦してチームのクオリティがどんどん高まっているのも感じていたし、みんなと一緒に成長し、タイトル争いをしたいなと。あと環境面も理由のひとつです。僕は日本に長く住んでいろんな土地を見てきたけど、神戸の街は本当に綺麗だし、過ごしやすい」

――では移籍はすぐに決めた?

「ほとんど悩まなかったです。答はシンプルに『イエス』でした。神戸のサッカーに自分がハマるという確信があったし、素晴らしいタレントとプレーできるところにも惹かれた。もちろんアンドレス・イニエスタという存在も欠かせない要素でした」

――やはりイニエスタ選手は特別?

「サッカー選手なら誰に訊いても、彼とプレーしたいと言うだろうし、誰もが刺激を受けるでしょう。そんな待望のチャンスが自分に来たわけです。断る理由なんてありませんでしたよ」
 ――昨季の対戦時はユニホームを交換していましたね。

「清水で戦った時ですね。ハーフタイムに少し話をしたんです。『ユニホームを交換しないか』って。そしたら試合が終わったあとに彼が僕のところに来て、快くユニホームを手渡してくれました。大切なものですからね。今は大事にブラジルの家に置いていますよ」

――神戸でのデビュー戦となったゼロックス・スーパーカップでは、早速イニエスタ選手のアシストからゴールを決めていました。

「僕の最初のゴールが彼のパスからというのは嬉しかった。彼と同じチームでプレーできるのは大きな誇りです」

――来日した頃は、日本でイニエスタ選手とチームメイトになるなんて予想もできなかったでしょう。

「もちろん。想像したことなんてなかったです」

PROFILE
ドウグラス/1987年12月30日生まれ、ブラジル出身。184センチ・80キロ。マラグリーダ―アメリカ・セントラル―モト・クルブーマドゥレイラートンベンセ―フィゲイレンセ―徳島―京都―広島―アル・アイン(UAE)―アランヤスポル(TUR)―清水―神戸。J1通算92試合・46得点。J2通算109試合・29得点。フィジカルとスピードを兼ね備えたJリーグ屈指のストライカー。打点の高いヘディング、強烈なバイシクルシュートなどインパクトのあるゴールにスケールの大きさを感じさせる。Jリーグでのキャリアは今年で10年目を迎え、簡単な日本語であれば巧みに使いこなす。

取材・文●多田哲平(サッカーダイジェスト編集部)

※『サッカーダイジェスト』2020年4月23日号より転載
 

関連記事(外部サイト)