ドイツ代表の“名勝負“5選――栄光史の始まりになった「ベルンの奇跡」。皇帝の名言「強い方が勝つんじゃない…」が生まれた74年決勝も

ドイツ代表の“名勝負“5選――栄光史の始まりになった「ベルンの奇跡」。皇帝の名言「強い方が勝つんじゃない…」が生まれた74年決勝も

トータルフットボールのオランダを下した“皇帝”ベッケンバウアーは、「強い方が勝つんじゃない。勝った方が強いんだ」との名言を残した。(C)Getty Images

“ゲルマン魂“と呼ばれる驚異的な勝負強さを武器に、数々のタイトルを獲得してきたドイツ代表。西ドイツ時代も含めた長い歴史の中から「名勝負」をピックアップするとしたら、どの試合になるのか。欧州サッカーに精通する識者に、とりわけ強烈なインパクトを残した「5試合」を選んでもらった。

    ◆    ◆    ◆

1954年7月4日 スイスW杯決勝
vsハンガリー 〇3−2
得点者/ドイツ=ラーンA、モーロック
    ハンガリー=プスカシュ、チボル

 舞台はスイス・ワールドカップ決勝。当時33連勝中だった“最強”ハンガリーを相手に逆転勝利を収めた、いわゆる「ベルンの奇跡」だ。

 キックオフから8分で2点のリードを許した西ドイツはしかし、たった10分ほどで試合を振り出しに戻す。立役者は鋭いクロスで1点目を演出し、その2分後に同点弾を挙げたヘルムート・ラーンだ。偉大なる主将フリッツ・ヴァルターと好連係を築いたストライカーは、84分に決勝点を挙げる一世一代の活躍を披露した。

 ワールドカップ初優勝を飾ったこの試合の価値を増幅させたのは、第二次世界大戦の傷が癒えていなかった国民を勇気づけたから。また“嫌われ者”の国家を国際社会に戻す契機に、そして栄光に彩られたドイツ・サッカー史の始まりにもなった。
 1970年6月17日 メキシコW杯準決勝
vsイタリア ●3延長4
得点者/ドイツ=ミュラーA、シュネリンガー
    イタリア=ボニンセーニャ、ブルニッチ、リーバ、リベーラ

 多くの識者が「史上もっともエキサイティングなワールドカップ」に挙げるメキシコ大会における大一番。2大会連続の決勝進出を狙う西ドイツは、準決勝でEURO1968の覇者イタリアと激突した。

 開始早々に先手を取ったのは欧州王者で、1点差のまま時計の針が進んでいく。だが、終了間際に再び試合が動く。不屈の魂を宿す西ドイツが土壇場で執念の同点弾を決めたのだ。

 そして、迎えた延長戦は両軍合わせて5ゴールが生まれるスペクタクルな撃ち合いに。試合中に右肩を脱臼しながらも最後までプレーを続けたフランツ・ベッケンバウアーの獅子奮迅、ハラハラする試合展開ゆえにドイツとイタリアの病院で心臓発作の急患が増えた逸話など、サイドストーリーにも事欠かないこの死闘は、世界中のファンを魅了した「世紀の試合」(Jahrhundertspiel)として今日まで語り継がれている。
 1974年7月7日 西ドイツW杯決勝
vsオランダ 〇2−1
得点者/西ドイツ=ブライトナー、ミュラー
    オランダ=ニースケンス

 トータルフットボールで世界を魅了するオランダに対し、“皇帝”ベッケンバウアーに代表される個人技と戦術理解力が傑出したワールドクラスを随所に擁する質実剛健の西ドイツ。隣国同士が世界一を懸けて争ったこのワールドカップ決勝は、オランダのヨハン・クライフがPKを得た開始直後のドリブル突破から目が離せない展開が続いた。

 その14番が靴紐を結んでいる時も離れなかったベルティ・フォクツの密着マーク、“爆撃機”ゲルト・ミュラーの反転シュートによる逆転弾など、すべてを語ろうとすれば、編集部の「300字ほどで」というオーダーに応えるのは不可能(すでに300字が目前だ…)。また、試合後には皇帝の口から「強い方が勝つんじゃない。勝った方が強いんだ」というかの有名なフレーズも飛び出している。このカードを歴代1位に選ぶオールドファンも少なくないだろう。

1982年7月8日 スペインW杯準決勝
vsフランス 〇3延長3(5PK4)
得点者/西ドイツ=リトバルスキー、ルムメニゲ、フィッシャー
    フランス=プラティニ、トレゾール、ジレス

 同じくPK戦にもつれ込んだ90年ワールドカップの準決勝・イングランド戦(ゲーリー・リネカーの名言「22人の男が90分ボールを追いかけ、そして最後にいつもドイツが勝つ」が生まれた試合)も捨てがたいが、“将軍”ミシェル・プラティニを擁するフランスを破ったこの激闘も忘れてはならない。

 たしかに、交錯相手を病院送りにした守護神ハラルト・シューマッハーのラフプレーはいただけなかった。だがそれ以上に西ドイツの真骨頂、絶対に諦めない不屈のスピリットが人々の胸を打った試合だろう。延長前半8分までに2点のリードを許しながら、千両役者カール=ハインツ・ルムメニゲの泥臭い一撃とクラウス・フィッシャーのバイシクルで同点に。そしてPK戦の末に、決勝への切符を勝ち取った。
 2014年7月8日 ブラジルW杯準決勝
vsブラジル 〇7−1
得点者/ドイツ=クロースA、シュールレA、ミュラー、クローゼ、ケディラ
    ブラジル=オスカール

 セレソン支持者にとっては名勝負でもなんでもないだろう。記憶から消し去りたいはずだ。だが、ドイツでは未来永劫語り継がれるに違いない大勝だった。俗に言う「ミネイロンの惨劇」(ドイツではミネイロンの衝撃)である。

 怪我のネイマールと出場停止のチアゴ・シウバという飛車角落ちのワールドカップ開催国、ブラジルを完膚なきまでに叩きのめした。11分に生まれたトーマス・ミュラーの先制点を皮切りに、わずか18分間で5点を奪ったドイツは、その後も攻勢の手を緩めずに2点を追加。点差など記録ずくめの白星で王国に引導を渡し、通算8回目の決勝進出を果たした。

 この歴史的な勝利を収めたチームはアルゼンチンとのファイナルを制し、24年ぶりの世界制覇を成し遂げている。

文●遠藤孝輔

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