“包囲網”にも屈しない川崎の俊英。三笘薫はさらに上のステージへ

“包囲網”にも屈しない川崎の俊英。三笘薫はさらに上のステージへ

昨季、新人記録タイとなる通算13ゴールを決めた、プロ2年目の三笘薫。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

そのスコアを目にしたとき、軽い衝撃を受けた。

 14-3。

 Jリーグ連覇を狙う川崎が沖縄キャンプ最終日の2月13日、札幌を相手に行った練習試合でのことだ。45分×4本の設定とはいえ、これほどまでに点差が開くケースは珍しいのではないか。現地で取材していたわけではないので、結果から受ける印象にすぎないが、まずは驚嘆し、「容赦しないな」と感じ入り、川崎の攻撃の破壊力に改めて唸ってしまった。

 チームのバンディエラである中村憲剛が引退し、主軸ボランチの守田英正が海外クラブに移籍。代わって、展開力のあるジョアン・シミッチ(前・名古屋)、テクニカルな小塚和季(前・大分)、プレー強度の高さが持ち味の塚川孝輝(前・松本)ら、中盤の即戦力を次々に獲得。限りある時間のなかで、個々の見極めとともに組み合わせを試すなど、シーズン開幕に向けて準備を進めている様子が伝わってきた。

 そこからちょうど1週間後の20日、『FUJI XEROX SUPER CUP 2021』では昨季リーグ2位であり、天皇杯準優勝でもあるG大阪と激突。最終的に3-2で川崎が勝利したこのゲームは、チームの仕上がりを最終チェックするうえで、貴重な機会だった。

 新戦力のジョアン・シミッチをアンカーに置く4-3-3システムの川崎が立ち上がりからボールを支配し、相手ゴールに迫った。3トップの左に入るプロ2年目の三笘薫が29分、32分と立て続けに得点し、あっという間にリードを広げる。前半のシュート数は川崎が9本で、G大阪が2本。この事実ひとつで、ゲームの趨勢がすぐに浮かんでくるだろう。
  昨季のJリーグで新人記録タイとなる通算13ゴールを決め、なおかつベストイレブンに選ばれた三笘がやはりキーパーソンのひとりだ。ボールを持つたびにスタンドから歓声が上がり、その一挙手一投足に視線が集まった。

 理詰めの宮本恒靖監督が率いるG大阪である。スピードに乗らせたら危険極まりないアタッカーを野放しにするわけがない。「前を向かせない守備」を徹底し、良さを消しにかかった。

 ところが、三笘自身は「そんなに対策されているような感じはしなかった」と意に介さず。あのくらい後ろからバチバチこられても当然――と思っているふしがあり、頼もしい。とはいえ、「得点以外のところでは何もできなかった。味方とうまく連携して、もっとゴールに迫っていきたい」と、反省と改善を口にしている。

 今季、“三笘包囲網”はさらに厳しさを増すだろう。そこで、どれだけの結果を起こすことができるか。見るものを魅了してやまない俊英にとって一大テーマとなる。
  川崎のすさまじい攻撃力を支えているのは、もちろん三笘だけではない。昨季序盤で3トップの左に入り、開幕ダッシュに貢献した長谷川竜也も注目すべき存在だろう。第6節の仙台戦での負傷によって約4か月間の戦線離脱を余儀なくされたが、ポジションを争う三笘に負けず劣らず切れ味の鋭いドリブラーだ。前述した札幌との練習試合ではハットトリックを達成し、猛アピール。バックアップに甘んじるつもりなど微塵もないだろう。

 3トップの右を務めるベテランの家長昭博は相変わらず鷹揚だ。ボールを奪われることが少なく、しっかりタメができる。“緩”を巧みに作り、それによって“急”への効果がますます高まるという攻撃の仕組みを生み出している。

 右インサイドハーフの田中碧は、ピッチを縦横無尽に駆け回るダイナモだ。ポゼッションスタイルのサッカーは、時にボール回しに終始してしまう嫌いがなきにしもあらず。それだけに、こういうタイプの野性味は得難い。

 汗かきにとどまらず、ゴールに絡んでいく技術と戦術眼を兼ね備えているので、相手チームにとっては非常に厄介だ。事実、ゼロックススーパーカップでの先制点と決勝点の3点目は田中を起点になっていた。
  5年連続でチーム1のスコアラーである小林悠、川崎で3年目を迎える元ブラジル代表のレアンドロ・ダミアン、“10番”を背負う大島僚太、大卒ルーキーの橘田健人、レンタルバックの遠野大弥など、Jリーグ屈指の攻撃陣をけん引する役者には事欠かない。

 就任5シーズン目の鬼木達監督は「3点を取りにいく姿勢」を強調し、「そこにこだわって、意欲をもって戦いたい」と公言している。

 昨季Jリーグでは4試合を残し、史上最速Vを決めただけでなく、最多88得点をマーク。掲げた目標はさらに上をいく。新たなチャレンジに向き合う川崎。今季もまたJの主役を演じることだろう。

取材・文●小室功(オフィスプリマベーラ)

【動画】三笘薫が2ゴール!G大坂を下したゼロックス・スーパーカップのハイライト

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