「クールな何かをやることよ」テニス界を超えたオピニオンリーダー、大坂なおみが目指すもの〈SMASH〉

「クールな何かをやることよ」テニス界を超えたオピニオンリーダー、大坂なおみが目指すもの〈SMASH〉

全豪オープンの優勝フォトセッションには、ルイ・ヴィトンを身にまとって登場した大坂なおみ。同社のアンバサダーを務めており、新たなフィールドへの進出が増えている。(C)Getty Images

“女子テニス界の顔”――
 それは時代が大坂なおみに求め、彼女自身も世の流れに掉さし至った、一つのマイルストーンでもあるだろう。

 昨年夏、コロナ過による約5か月間の中断期間が明けツアーが再開した時、自身の変化を問われた大坂は、「以前よりも、自分を周囲にさらけ出すようにした。すると周囲の人たちも、本音で向き合い話してくれることがわかった」と即答した。

 ファッションや音楽など様々な舞台のトップランナーたちと親交を持ち、黒人への差別廃絶を訴える運動に参加したことも、その一環だろう。ソーシャルメディアを介して問題意識の喚起を訴え、「アスリートは政治的発言や行動をすべきでない」という声や風潮に対しても、「私はそうは思わない」と旗幟を鮮明にした。

 昨夏のUSオープンでも、警官の射撃等による犠牲者の名が入ったマスクを7枚用意し、それら全てを世に示したのは記憶に新しいだろう。最終的にUSオープンを制したことで、彼女はテニス選手の枠をも軽々と超え、若者の、あるいは女性のオピニオンリーダー的な名声をも獲得した。
  それら高まる注視や発言力に伴い、幼少期から憧れた先達がそうであるように、大坂もまたファッションや他競技、そしてチャリティなどにも力を注ぐようになる。

 ユニセフへの寄付を前提としたオリジナルマスク販売や、ルイ・ヴィトンのブランドアンバサダー就任。さらにはアメリカ女子サッカーリーグ(NWSL)の強豪チーム、ノース・カロライナ・カレッジの共同オーナーにも就任した。

「今の私が在るのは、私の成長に寄与してくれた女性たちのおかげです。多くの女性アスリートから受け取ってきた愛情を、今、オーナーとしてノース・カロライナ・カレッジに還元できることを誇りに思います」

 新たなフィールドに踏み出した理由を、大坂はそう綴っている。またいちアスリートとしても、サッカー選手たちと一緒に練習できる日を「すごく楽しみ。他競技をプレーし、自分よりも優れた部分を多く持っている人たちと練習するのは好きだから」と心待ちにしている様子だ。
  そのように新鮮でしなやかな“女子テニス界の顔”には、先の全豪オープンでも様々な質問が向けられ、彼女が発する言葉は時代を象徴するアイコンとして、大きく取り上げられもした。

 特に、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会会長に橋本聖子氏が就任したことについては、多くの意見を求められる。その際に彼女が言った「かつて、人々によって受け入れられたり聞き流されてきた発言も、今の若い人たちはしっかり糾弾していく。時代を先に進め、既成概念を打ち破っていくことは、特に女性にとって素晴らしいこと」という意見は、国内外でも広く報じられた。

 オフコートでも多くの責任ある立場に身を置くことを、彼女は「テニス以外のことを見聞することで、バランスが良くなったと思う。たとえ試合に負けても、やるべきこと、考えることがたくさんあるのは大きい」と言った。

 全豪優勝の翌日には、自らがアンバサダーを務めるルイ・ヴィトンのドレスに身を包んでフォトセッションに挑み、「オレンジと黄色、そして黒の組み合わせが私のお気に入りだから、このドレスを選んだの」と、はにかんだ笑みをこぼした。
  そのフォトセッション後に行なわれた囲み会見でも、「多くの人たちが、あなたのことをテニス選手以上の存在と見るようになったが、どう感じるか」との質問が飛んだ。疲れの色も見せず笑顔で取材に応じる彼女は、穏やかに応じる。

「自分のプラットフォームを使い、私が信じることを発信することで、少なくとも一人には私の思いが届くのは大きなこと。時々、私の個人的な物語が多くの人たちの共感を得られることに、驚かされる。コート上よりも、コートの外でやったことで人々に知られる方がうれしいと最近は感じるの」

 今や、「テニスプレーヤー」の枠組みを超え、大坂なおみという存在そのもので、彼女は世界に影響を及ぼす存在となっている。

 その彼女が、テニス以外で目指すこととは?
 その問いに23歳の若者の旗手は、チャーミングな笑みで答えた。

「クールであること。今まで誰もやったことがない、そんなクールな何かをやることよ」……と。

取材・文●内田暁

【PHOTO】黒人差別撤廃を訴えつつ優勝した2020全米オープン、大坂なおみスナップ集
 

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