女子テニスの青山/柴原組がマイアミOP初優勝!強さの秘密“モメンタム”とは…〈SMASH〉

女子テニスの青山/柴原組がマイアミOP初優勝!強さの秘密“モメンタム”とは…〈SMASH〉

グランドスラム大会に次ぐグレードのマイアミ・オープンで、見事頂点へと上りつめた青山修子(右)と柴原瑛菜のペア。(C)Getty Images

控え目なガッツポーズは、「ツアーにおける“ファミリー”のような存在」と評するライバルにして友人への、配慮だっただろうか。

 マッチポイントで柴原瑛菜が放ったスイングボレーは、ヘイリー・カーターのラケットをはじき、ウイニングショットとなる。それは、青山修子/柴原組にとって今季3つ目、そして、グランドスラムに次ぐ格付けの大会、マイアミ・オープンのタイトルをつかみとった瞬間だった。

「私たちのテニスにとって大切なのは、“momentum”(モメンタム)」だと、青山は言った。

 モメンタムとは、直訳すれば「勢い」の意。試合の潮流に飛び乗り、ひとたび勢いづいたら相手が誰でも止めることはできない……、言い方は穏やかながら、そんな強い矜持がにじむ言葉だ。

 マイアミ・オープンの決勝でも、2人はそのことを証明してみせた。

 立ち上がりから、柴原の強打と青山の大胆かつ手堅い前衛の動きが噛み合い、第1セットは6−2で圧倒。

 だが第2セットに入るとカーター/ステファニー組は、青山が「まるで壁のよう」と評する穴のないボレーで、いかなるショットも打ち返してくる。

「我慢強さが足りなかった」という日本ペアは、ゲームカウント2−5とリードを許し、相手にセットポイントも握られた。

 それでも今の2人には、数々の逆転勝利や復活劇を演じてきた実績と、実績に依拠した自信がある。
  今季開幕戦のアブダビ大会では、初戦を大接戦の末に逆転でもぎ取り最後は頂点に立った。

 続くヤラ・バレー・クラシックでも、準決勝で5度のマッチポイントを切り抜ける大逆転勝利の末に、優勝をついかんでいる。

 そのような2人の「モメンタム」の始まりには、必ず、密なコミュニケーションがあった。

「青さん、さっきの私の動き、どう思います?」「ちょっとこのプレーに不安があるんですけれど」

 23歳の柴原は、10歳年長の青山に、試合中にも助言を求めることをためらわない。経験豊富で常に冷静な青山に対し、柴原は考えすぎたり、時に感情的になることもあると言った。そのような時はすぐに話し合うことで、軌道修正し互いのビジョンをすり合わせる。

 柴原の積極性と、青山のロジカルな思考が会話を介して噛み合った時――それが、逆襲開始のサインだ。
  思えば、年齢も生まれ育った土地も離れた2人のペア結成は、柴原の猛アタックから始まっている。2019年春、当時は米国籍のもとツアーを回り始めたカリフォルニア生まれの柴原は、日本ダブルス第一人者の青山を敬愛し、ペアを組むことを切望した。

 その時は、青山も他の固定パートナーがいたためすぐに実現しなかったが、数カ月後に組んで出場した初の大会で、いきなり準優勝の好結果。同年10月からは不動のペアとなり、マイアミ・オープンを迎えた時点で、2人はすでに5つのツアータイトルを懐に収めていた。

 マイアミの決勝戦で相手のセットポイントに面した時も、2人は激しい身振り付きでゲーム間にも言葉を交わし、思いを重ね合わせていた。

 自分たちのやるべきことをやる、持ち味である積極性を失わない、なおかつ、相手の鉄壁の守備を崩すために集中力も保ち続ける。

 2人のテニスの精髄を再確認し、コートで確実に表現した。
  青山が迷いないフォアのウイナーでセットポイントをしのぐと、続くゲームでは狙いすましたロブを決めてブレーク奪取。すると好プレー連発の青山にけん引され、柴原にも活力と積極性がみなぎりだす。目まぐるしくポジションを変え、迷いなくボールを叩き込む2人は、加速する勢いで相手を飲み込み、5ゲーム連取で一気に頂点へと駆け込んだ。

「今季3度目の優勝」のうたい文句は、ここまで順風満帆のように響く。だが実は今大会を迎えるまでは、3大会連続初戦敗退の苦しい時期を過ごしていた。

 ただ、2大会連続で敗退した時、2人は長い話し合いを持ち、敗因を分析しつつ自分たちの武器を再認識したという。

「ランキングが上がり、勝たなくてはと思い消極的になっていた。良い時は、2人で積極的に自分たちからポイントを奪っているということを話し合い、そこから少しずつ変わって、今回の良いプレーにつながったかなと思います」

 一つの転機を、青山が振り返った。

 結果的には、その次の大会でも2人は初戦で敗れている。それでも柴原は、「内容は良かった。チャンスは作れていたので、それを決めていれば勝てた試合だった」と復調の予感を覚えていた。
  さらにマイアミ入りする前に、柴原の拠点であるカリフォルニアで1週間ともに過ごし、「チャンスを決めきる」ための練習を重ねる。

 その末に至ったのが、今回のキャリア最大のタイトル。

 青山の言う「モメンタム」とは、単なる偶発的な「勢い」を指すのではないのだろう。一つの試合だけでなく、大会全体や2人の足跡そのものの繋がりや流れを読み、意思と意図をもって生む潮流――。

 それこそが、今季のポイント獲得レーストップを走る、青山/柴原ペアの「モメンタム」だ。

 急成長の2人に、周囲はオリンピックのメダルという期待も寄せるが、青山は「私の目標はずっと、グランドスラムで優勝すること」と抱くビジョンにブレはない。
  オリンピックを一つの夢とする柴原も、「私は青さんとずっと試合に出たいので、この1年はオリンピックがあっても無くても、一緒に組んでもらいたいです」と、青山の夢に決意を寄せた。
 
 意思と歩調を重ねて同じゴールを見据える限り、彼女たちが生み出す「モメンタム」が、2人を夢みる場所へと導くはずだ。

■マイアミ・オープン ダブルス決勝結果
(4月4日/アメリカ/WTA1000)
青山修子(近藤乳業)/柴原瑛菜(橋本総業)[5] 
6−2、7−5 H・カーター(アメリカ)/L・ステファニー(ブラジル)[8]
※[]内の数字はシード

■青山/柴原の2021シーズン戦績
マイアミ・オープン(アメリカ/WTA1000)→★優勝
ドバイ選手権(UAE/WTA1000)→初戦戦敗退(2回戦)
カタール・オープン(カタール/WTA500)→1回戦敗退
アデレード国際(オーストラリア/WTA500)→1回戦敗退
全豪オープン(オーストラリア/GS)→ベスト8
ヤラ・バレー・クラシック(オーストラリア/WTA500)→★優勝
アブダビ・オープン(UAE/WTA500)→★優勝
※( )内の欧文と数字は大会のグレード

文●内田暁

【PHOTO】世界で戦う青山/柴原ら日本人女子テニスプレーヤーたち!
 

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