万全の練習を重ね「自信も付いてきた」と錦織圭。新コーチと磨いたネットプレーが聖地でどう機能するかに注目<SMASH>

万全の練習を重ね「自信も付いてきた」と錦織圭。新コーチと磨いたネットプレーが聖地でどう機能するかに注目<SMASH>

ウインブルドンで練習に励む錦織。ミルニーをコーチに迎えて強化してきたネットプレーが、聖地で初めてベールを脱ぐ。(C)Getty Images

「良い練習ができているし、調子も良い。すごく楽しみ」 

 ウインブルドンの開幕を控えた、記者会見。米国記者の問いに応じた錦織圭の言葉は、今の心境そのものだろう。

 前哨戦となったハーレ大会2回戦で敗れた時は、全仏オープン前から予兆のあった、手首の痛みへの不安も口にした。ただ、その不安の大部分が消えただろうことは、早々にロンドンを訪れ、ステファノス・チチパスらトッププレーヤーと練習を重ねる姿からも推察できる。

「だいぶ良くなりました。3日間くらいテニス休んで、痛みは、ほぼなくなっています。この何日間かは気にせず練習できているので、大丈夫だと思います」

 日本語での質疑応答に切り替わった後、錦織はさらりと言う。

「今週しっかり色んな選手と(練習)して、芝にもだいぶ慣れてきました。自信もついてきたし、久々のウインブルドンではありますが、もちろん世界で一番きれいな芝なので。プレーはしやすかったですね」

 2年ぶりに足を踏み入れる“聖地”の芝の感触に、錦織は心地よさを覚えているようだった。
  昨年はコロナ禍により中止されたため、錦織にとって今大会が、マックス・ミルニーをコーチに迎えて挑む初のウインブルドンとなる。それは、サーブ&ボレーの名手とともに築き上げてきたスタイルを、そのテニスが最も生きる場所でお披露目する絶好機でもある。

 昨年の8月のツアー復帰以降、錦織のテニスが変化したのは、誰の目にも明らかだった。ネットに出る機会が、以前よりも増えた。そして本人も、それこそが新コーチに多く教えてもらったことだと言う。

「ネットに出るタイミングとか、ボレーの技術でも、それまで聞いたことがなかったことを、たくさん教えてもらっている」

 そう明かしたのは、昨年9月の全仏オープン時。その後、ハードコートでも多く試合を重ね、インドアなどの速いサーフェスでの戦い方も体得してきた。

 これまで「強いていうなら、もっとネットに出られた」「唯一良くなかった点が、ボレー」など、ネットプレーに関する反省が口をつくことも多かったが、それも、重きを置いているからこそ。その新スタイルの成果を最大限に発揮できる場所こそが、「世界で一番きれいな芝」である、ウインブルドンだ。
  ドローのボトムハーフに入ったため、錦織のウインブルドンは開幕翌日の火曜日に幕を開ける。対戦相手は、オーストラリアのアレクセイ・ポピリン。その潜在能力を目利きコーチのパトリック・ムラトグルに見出され、チチパスらと共に、専属スタッフによる指導を施されてきたエリートだ。

 サービスとフォアハンドを武器とする超攻撃的スタイルは、盟友チチパスとも通ずる新世代のテニス。今年2月に初のATPツアータイトルも手にするなど、この半年ほどで急成長を見せている。

 そのポピリンについて錦織は、「彼とは、フレンチで1回練習したんですが、サーブとフォアは強烈ですね。その2つには気を付けて」と警戒する。同時に、「そのぶん、動きとバックは弱いかなと思うので」と、早くも戦い方を思い描けている様子だ。

 開幕前に練習したチチパス、そしてハーレ大会で対戦したセバスチャン・コルダも、長身でサービスとフォアが強烈な選手。その意味では、対戦をイメージもしやすいのかもしれない。
  今名を挙げた20歳前後の“次世代選手”に象徴されるように、昨今は、若手の台頭および選手の大型化に伴う、テニスの変質が顕著だ。

 それは錦織自身も、肌身で感じている潮流。

「パワープレーヤーは増えてますね、確かに。それと同時に、弱点が少ないというか、全体にしっかりしている選手が増えてきていると思います。昔はもっと、明らかにバックが弱いという選手がいたりしたので」

 そのような印象を口にした錦織は、「(キャスパー)ルードとか、フェリックス(オジェ-アリアシム)もそうですし」と具体的な選手名にも言及した。ここで錦織が名を挙げたのは、恐らくは最近の活躍などから、とっさに頭に浮かんだ選手に過ぎないだろう。

 ただ奇しくもルードは、錦織が初戦を突破した場合、2回戦で当たる可能性の高い選手だ。元世界39位のツアー選手を父に持つルードは、183センチとそこまで大柄ではないが、総合力の高い選手。昨年ツアータイトルをつかみ、今がキャリア最高位(14位)という、まさに脂の乗っている22歳だ。

 それら押し寄せる若手の波に、錦織もまた、新たな武器を携え立ち向かう。2年ぶりとなるウインブルドンの瑞々しい芝で展開されるのは、フレッシュな戦いだ。

現地取材・文●内田暁

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