女子ツアー“初参戦で8強入り”の本玉真唯!躍進のカギは苦境で手にした「自分のテニス」だった<SMASH>

女子ツアー“初参戦で8強入り”の本玉真唯!躍進のカギは苦境で手にした「自分のテニス」だった<SMASH>

本玉にとってWTAツアー本戦はこれが初めてだったが、新たに手にした“自分のテニス”を貫くことでベスト8へと駆け上がった(写真は2020年全日本選手権)。写真:THE DIGEST写真部

「負けて悔しい気持ちの方が試合直後なので大きいですが、一大会通して自分がここまで勝ち上がれたのは信じられないですし、トップともやりあえるとわかった、良い大会だったなと思っています」

 シカゴ・フォール・テニス・クラシック準々決勝の試合から、約1時間後。

 世界9位(当時)のガルビネ・ムグルサに敗れた本玉真唯は、種々の感情入り混じる胸の内を、率直な言葉に託した。シカゴの大会のカテゴリーは“WTA500”で、これはグランドスラム、そしてWTA1000に次ぐ上から3番目の格付け。トップ10プレーヤーも3人顔をそろえた、ハイレベルなトーナメントだ。

 先週の時点でランキング200位だった本玉は、この大会に予選から参戦。予選2試合を勝ち上がってWTAツアー本戦デビューを果たすと、初戦で59位のキャロライン・ガルシアに快勝する。さらに2回戦を不戦勝で突破すると、3回戦では、今季絶好調のシェルビー・ロジャースに逆転勝利。予選からの快進撃はムグルサに止められるも、3−6、2−6のスコアより遥かに競った内容であることは、勝者の「タフな試合だった。第1セットを取れたのが鍵だった」の安堵の言葉に映されている。
  16歳時に世界スーパージュニアを制し、元世界24位の神尾米の薫陶を受ける本玉は、その経歴だけを見れば、エリートと呼べるかもしれない。だが、プロ転向の年にITFが試験的に導入したランキングシステムのため思い描いたプランが崩れ、調子を上げたタイミングで、今度はツアーがコロナ禍による中断期に突入した。

 実戦がこなせず、モチベーションを保つのも難しかった1年間。だがその間に抱えた課題に向き合い、それを克服するべく練習コートに立った。その具体的な内容とは、「無理に決めにいかず、何球でもミスせずボールを打ち返す」や、「オープンコートに打つときに緊張する癖を克服するため、オープンコートを作って決める」など。練習環境も、指導者たちは同じながら、欧米の主流である高く跳ねるハードコートに拠点を移した。
  それら練習の成果を明確に実感できたのが、今年3月のトルコ遠征。球足の遅いクレーコートでの実戦で、磨いてきた種々のパーツがカチリと噛み合う音を聞いた。

「あのトルコ遠征で、自分のテニスとは何かがつかめた。“自分のテニス”とは、まずはフットワーク。いつもは無理に決めにいってた局面でも、打ち分けることができた。メンタル的にもタフになって、長いラリーでもミスなくモノにできはじめたのが、トルコの大会でした。戦術を考えたり、相手の嫌なところはどこだろうと頭をフル回転できるようになったのも、大きく変わったところだと思います」

 その見いだした“自分のテニス”を、本玉はムグルサとの試合でも発揮した。ムグルサの強打に食らいつき、左右に打ち分け長いラリーに持ち込んでは、ミスを誘ったりパッシングショットなどを決める。時には絶妙なドロップショットを沈め、元女王に天を仰がせた。

 第1セットは0−4から3−4まで追い上げ、逆転への流れをつかみかける。第2セットではブレークで先行し、主導権を握る機もあった。おしむらくは、連戦の疲労もあり、持ち味のフットワークを最後まで発揮しきれなかったこと。もちろんそれを封じたのは、グランドスラム2度の優勝を誇るムグルサの実力と経験でもある。
  試合後のムグルサは、「このような試合をすべての大会でできれば、彼女のランキングは今より遥かに高くなるでしょう」と、本玉のポテンシャルを高く評価。同時にこの言葉には、年間を通じて結果を残さねば上のレベルには定着できないという、ツアーの厳しい現実も込められている。

 そのことは本玉も、今大会の経験で痛感したようだ。今後の課題として彼女は、「まずは、身体をもっと強くしなくてはいけないなと思った。フィジカル面で強くならないと、このレベルで勝ち続けられない」と体力に言及する。

 同時に技術や戦術面でも、「本当に攻められる時にどんどん仕掛けていかないと、ひとつのチャンスを見逃したらすぐやられてしまう」と、世界トップのテニスを肌身で実感した。

 このレベルで戦えるという手応えと、戦い続けていくための課題。その両方をツアーデビュー戦から持ち帰った彼女は、「これからどんどん、上のレベルにチャレンジしていきたい」と笑顔で明言した。

取材・文●内田暁

【PHOTO】世界で戦う本玉真唯ら日本人女子テニスプレーヤーたち!
 

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