観客を巻き込むのはありか、なしか?シナーがティアフォーの行動を批判「限度というものがある」<SMASH>

観客を巻き込むのはありか、なしか?シナーがティアフォーの行動を批判「限度というものがある」<SMASH>

最終戦の出場権獲得に向けて調子を上げているシナー(左)。今大会絶好調のティアフォー(右)。(C)Getty Images

現在開催中の男子テニスツアー「エルステバンク・オープン」(10月25日〜31日/オーストリア:ウィーン/インドアハードコート/ATP500)は現地10月30日にシングルス準決勝が行なわれた。第7シードのヤニック・シナー(イタリア/世界ランク11位)はフランシス・ティアフォー(アメリカ/49位)に6−3、5−7、2−6の逆転で敗れ、試合後の記者会見では「試合中に必要以上に観客を巻き込んだ」として、対戦相手のティアフォーに不快感を示した。

 この試合、シナーは持ち前の強打でティアフォーに思うようなプレーをさせず、幸先よく第1セットを先取する。第2セットに入っても特に表情を変えず淡々とプレーを続けるシナーは精度の高いサービスや角度のついたショットを軸に主導権を握り、第2ゲームで先にブレークに成功。5−3とリードしたシナーが圧勝ムードのままサービング・フォー・ザ・マッチを迎えた。

 ところが、勝利へのプレッシャーがかかったのか、シナーはストロークで立て続けにミスを犯し、ティアフォーにブレークバックを許してしまう。するとここから会場の空気は一変。

 明るい性格で親しまれているティアフォーはポイント間で度々最前列にいたファンに話しかけるだけではなく、ハイタッチやハグまで交わし、観客を味方に付けながら好プレーを連発。シナーは勢いが止まらないティアフォーに第8ゲームから5ゲームを連取されて第2セットを落とした。

 ティアフォーが作りあげた「ショー」の雰囲気に完全に飲み込まれ、集中力を欠いたシナーは迎えたファイナルセットで2度のブレークを喫して勝負あり。最終戦レースが熾烈を極める中、勝利目前から痛恨の大逆転負けを喫した20歳の新鋭はファンとの過度な接触を試みたティアフォーを開口一番に批判した。
 「僕の意見では、今日のティアフォーはやりすぎだと思う。プレーヤーがちょっとしたショーをしようとするのと、選手にリスペクトを欠いた行為をするのは全く別のことだ。何が起こっていたのかはよくわからないが、今回はやりすぎたと思う」

 また、ティアフォーがコートから離れた場所で観戦していたファンとやり取りをする場面も見られたが、これについては「僕が(次のポイントの)準備ができていたのに、フランシスがショーを終えるのを待たなければならなかった。今さら考えても仕方がないけど、限度というものがあると思う」とコメント。普段は感情をあらわにすることがめったにないシナーだが、この日は怒りが収まらなかったようだ。

 一方でシナーから批判を受けたティアフォーは「観客がスタンドにいるなら、僕は彼らと交流できると理解している。今日起こったことに罪悪感は抱いていない」と特に意に介していない様子。最後には「今日勝てたことはとても大きい。今週はずっと素晴らしいテニスができているし、ぜひ優勝したい」と決勝戦への意気込みを語った。

 途中からアウェーのようなムードの中で戦わなければならなかったことがシナーにとっては耐えがたいものだったのだろう。だが、勝敗だけではなくファンにテニスを楽しんでもらうことを大切にするティアフォーの姿勢も尊重したいところ。とにかくこの一件で2人の関係性が険悪にならないことを祈るばかりだ。

文●中村光佑

【連続写真】ティアフォー得意の回り込みフォアハンド。20歳の時から大きなテイクバックが特長

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